第六十五章 〜 ソーハムたちの願い 〜
雄紀には、ヴィッディーの死に対して、まだ実感がわかなかった。
その分、ソーハムの言葉に対して、苛立ちを覚えた。
「雄紀、自分の感情に飲み込まれるのは、少しの間だけならば、それも良い。 それを味わって経験に出来る。 しかし、その感情に操られてしまっては、向こうの思うつぼだ。 君は、生きては帰れない。 出来るだけ、自分の感情を楽しむんだ。 」
雄紀には、ソーハムの言っていることが訳が分からなかった。
とても非常識にさえ思えて来た。
「常識は、人が作り上げたもので会って、神が作ったものでは無い・・。 」
ソーハムは、雄紀の瞳の奥を見つめながら言った。
雄紀は、不思議と心が落ち着いていくのを感じた。
「それで、これからどうするんですか? 」
ソーハムは、にっこりとほほ笑んだ。
遠くから、少し心配そうに見守る、ヴィッディーの元に二人は戻った。
「ヴィッディー、僕が戻ったら、何をしたらいいですか? 」
「ありがとう、雄紀。 」
ヴィッディーの目に熱いものが込み上げて来た。
雄紀も、それを感じることが出来た。
「雄紀、私は、まだ母が住んで居た家に着いたばかりだった。 私の着衣の右のポケットに車の鍵が入っている。 車には、皆で詰んだ薬や備品が、そのまま入っている。 友人に連絡をして、薬を渡して欲しい。 友人の連絡先は、私の電話に入っている。 友人の名前は、サニルだ。 雄紀、君が行かなくても良い。 君は、(マーラに)狙われている。 」
「大丈夫です。 僕が行きます・・・・。 」
「雄紀、君が戻る時は、ヴィッディーが旅立った直後の時間だ。 ヴィッディーは、3日後の朝にここに来ることになる。 もしかしたら、ヴィッディーの死は、阻止できるかも知れない。 しかし、相手が相手だから・・阻止しようなんて考えないで。 君の身が危なくなる。 私たちが、何のために動いているか、それを考えて欲しい。 」
ソーハムの願いだ。
いつも、まるで、はぐらかす様な話し方をしていた、ソーハムが、まるで指図するかのような口調で言った。
雄紀に、ヴィッディーも、雄紀に託している。
それは、ヴィッディーの願いだ。
「・・僕、戻ります。 おじさんにも相談してみます。 細心の注意を払うので、心配しないで下さい。 ソーハムも、ヴィッディーも、僕には大好きな、とても大切な人なので、絶対に期待を裏切りません! 」
「ありがとう、雄紀。 気を付けて・・。 」
ソーハムとヴィッディーが心配そうに雄紀を見守る中、雄紀は自分の体に帰って行った。
雄紀は、目を開くと、そのまま、部屋を走って出て行った。




