第六十四章 〜 ヴィッディーの死 〜
ヴィッディーは、ソーハムと雄紀に気が付いた様だった。
そして、ゆっくりとこちらへ歩いて来た。
「ヴィッディー、こんにちは! もう会えないと思ったから、会えて嬉しいです! 」
雄紀は、嬉しくて心が躍った。
しかし、ヴィッディーの表情は、そうでも無かった。
ヴィッディーは、雄紀にほほ笑んでから、ソーハムを見た。
その表情は、沈んでいた。
「すまない。 油断した。 」
「いや、ヴィッディー。 君は、頑張った。 良くやった。 」
「まさか、あんな所まで・・。 私は、本当に注意が足りなかった・・。 」
「何があったんだ? 」
「私は、母の住んで居た家に行ってに行ったんだ。 そしたら、ドアが開いていて・・。 私の両親か、友人が先に入っているんだと思って・・中に入ったんだ。 そしたら・・。 」
「・・・・。 そうか・・。 」
「・・・・・・ ど、どういうこと!? いったい、何を話しているの!? 」
「雄紀・・。 」
ヴィッディーは、悲しそうな瞳で雄紀を見ながら話し始めた。
「私は、命を落としたんだ・・・・。 」
「!?!?!?!?!?!? 」
雄紀は、直ぐには理解できなかった。
理解できなかった、と言うよりも、受け入れたくなかった。
雄紀の感情が理解することを拒んだのだ。
「やだよ・・、ヴィッディー? そんな冗談、あんまりだよ! 」
「ごめんね。 私は・・ごめんね。 本当は、もっと君を手伝いたかったんだけど、守りたかったんだけど、どうやら出来なくなってしまった。 本当に・・ごめんね。 」
「そう言うことじゃなくって・・。 」
雄紀は、もう何を言って良いのか分からなくなった。
選ぶ言葉の選択肢も、自分の心の表現も、何もかもが一度に押し寄せて来た。
頭の中が完全に混乱していた。
「・・雄紀、少し歩こうか・・。 」
ソーハムは、そう言うと、立ちすくんでいる雄紀を引っ張って、共に歩き始めた。
「もしかして、これだったんですか? 」
雄紀は、心の何処からか湧いて来て、何処にぶつけて良いのか分からない怒りも、その言葉と共に吐き出した。
「・・・・。 」
「試練は・・・ 」
ソーハムは、雄紀の言葉に、自分の言葉をかぶせた。
「ねぇ、“死”って、どういうことだと思う? 」
「え!? 」
「私は、死んで君に成った。 まだ、成る途中だけどね。 」
ソーハムは、雄紀の瞳を見つめて、話を続けた。
「死んでしまったからって、その人が消えてしまう訳じゃあ無い。 ヴィッディーも、私も、ジャイナの土や世界、次元から解き放されたって言うだけなんだ。 ただ、私たち、魂の家族の皆で作り上げた計画の途中で、ヴィッディーは、想定外に解き放されてしまったんだ。 でも、自ら、それを放棄したのではない。 だから、番狂わせは不可抗力なものだったんだ。 」
神妙な表情が解けない雄紀を見て、ソーハムは続けた。
「君への負担は大きくなってしまったけどね・・。 」
ソーハムは、冗談ぽく笑いながら言った。
「笑えません・・・・。 」
「そうだね。 想定外のことが起きたから、私たちも、対応策を考えなければならない。 」




