第六十一章 〜 波動 〜
「え? どうして? 私が私じゃ無くなるからって、私が消えてしまうわけじゃない。 君の中に私は、残るんだ。 “ソーハム”としての意識が無くなるだけだよ。 もしかしたら、しばらくは私としての存在の、残像の様なものが残るのかも知れないけれど・・・。 でも、それは、私には分からない。 」
「僕だって、ソーハムさんに会いたいです。 もっと、色んなことを聞きたいんです。 」
ソーハムは、そこし困った様な表情をして笑った。
「ありがと。 私が、君に吸収される時は、君も私の様に色んなことが分かる様になる時なんだよ。 そして、その時は、もう、君は私を必要としない。 」
「・・・・。 」
「それに、君が君の世界に戻ったら、そうそう狭間に来ることは出来なくなるよ。 ジャイナに居る時は、君自身が別の次元の存在だから、狭間に来ることは容易い。 しかし、自分の波動の世界に戻ったら、その波動自体が邪魔をして、狭間に入れなくなるんだよ。 」
「そうなんですか? 方法は、無いんですか? 」
「あるけど・・、非常に難しい。 狭間に入る為には、自分自身の波動を自ら変えなければならないんだ。 そして、波動を変えることは危険を伴う。 波動が荒くなれば、荒い波動の世界、マーラの世界に近くなるんだ。 逆に波動を細かくすると、神に近くなる。 それに、波動を変えることによって、その波動に近い存在を引き寄せるから、特に波動が荒くなった時は気を付けなければ・・・分かるでしょ? 」
「波動ですか・・・。 具体的には、どうすれば良いのですか? 」
「瞑想が、一般的だね。 今日、君は、君の意識が体を離れてしまった訳では無いのに、狭間の世界に来ることが出来ているよね。 それは、瞑想をしているからなんだよ。 君が座っているラグには、サティアの波動が染みついている。 君とサティアの魂は限りなく“同じ”に近い。 だから、君は、サティアが瞑想をしている時の波動の波長に同調して、ここに来れたんだ。 」
「その時の、サティアさんの波長に同調して、僕がここに来たと言うことは・・・。 じゃ、ソーハムさんは、サティアさんと、ここで会っていたの? 」
「たまにね。 でも、何時も喧嘩してた。 」
ソーハムは笑った。
「でも、最近は会ってないな。 君が、ジャイナに現れてから。 」
「・・寂しくないんですか? 」
「寂しくは無いよ。 君が生きている限り、私は、再びサティアと一緒になれる。 君が生きてさえいれば、私たちの魂は、再び一つに慣れるんだ。 」
「“生きてさえいれば・・、生きてさえいれば・・”って、皆、僕に何かを言ってないですよね。 怖くて、深く聞けなかったんですけど・・何があるんですか? 」




