第五十九章 〜 宇宙の逆行 〜
「この宇宙は、今、収縮期にある。 空間が収縮し始めると、時空は逆行するんだ。 戻って行くんだよ。 だから、今、私たちは、一度歩んだ 歴史を遡っているんだよ。 でも それは、私たちに取っての表面的なところでは無くて、もっと この宇宙の根本的な存在、“ある”とか、“いる”もの、即ち、エネルギーとして歴史を遡っているんだ。 だから、大人が子供になったり、こぼれた水がコップに入ったり、壊れたものが元に戻ったりはしないんだ。 」
「・・・・・・。」
雄紀は、目を白黒させた。
「分かり難かったかなぁ。 」
ソーハムは、少し困った顔をした。
「目覚めたものである、私の両親、サティア、そして私は、“未来”である世界に、私が君として生まれることを知っているんだ。何故ならば、エネルギーとしての魂のレベルでは一度、経験したことだから。 ヴィッディーも、完全にではないけど、大体分かっているかな。 」
「そうなんですね! ・・じゃ、僕の世界で何が起こるか知っているんですか? 大地震は、おきますか!?? 」
ソーハムは、再び大笑いをした。
「すべてが分かる訳じゃないよ。 」
「全く来た道と同じに戻る訳じゃないからね。 私は、君に成って進化した。 そして、これからも進化し続けるんだ。 」
「良く分からないけど、ソーハムは、一度、僕を経験しているの? 」
「それが、完全にはそうじゃないんだな。 」
「え???? 」
「私は、君に成るまでは、自分自身の分離を経験していないんだ。 世の中には、沢山の選択肢があるでしょ? この世界は、私たちに見える世界だけではなくて、沢山の次元が重なって存在しているって聞いたことない? 」
「昔、読んでた雑誌に書いてあった気がします。 」
「私たちは、沢山の選択をして生活をしている。 選択によっては、違う次元に移ることができるんだ。 全ての次元は、同じ方向に動いていて、登場人物、その他の存在も、だいたい同じだけれども、少しずつ違うんだ。 」
「へぇ・・・・・・。 」
「ソーハムは、僕を通り過ぎなかったの? 」
「僕が通り過ぎた君は、僕と殆ど変わらなかったよ。 だけど、僕が選んだ沢山の選択肢によって、引き返す時には、君と私は別れ別れになった。 」
「違う次元では、僕とソーハムは、別れ別れになってないヴァージョンもあるんだ・・。 」
「そうだよ。 私が通り過ぎた次元だと、そうだね。 」
「そっちの方が良かったんじゃないですか? 」
「いや。 それでは、学びが無いよ。 そもそも、私たちは、この世界に成長する為に来てるからね。 私は、君に成ることを選んだんだ。 だから、生きていて欲しい。 何があっても、生きていて欲しい。 君が死んでしまったら、私は消えてしまう・・・・。 」




