第五十八章 〜 進化形態 〜
「君と私が一体になったら、君は君が居るべき場所に戻るだろうね。 」
「僕が、元居た世界に戻るんですか? 」
「そう言うことだ。 」
「そうしたら・・、僕は、どうなるんですか? 僕ではなくなるんですか? あなたになるんですか? 」
ソーハムは大笑いした。
「君は、僕にはならないよ。 私は君に成りそこなった、君の落とし物だよ。 君に僕が吸収されたら、君に成るんだよ。 君は、私の進化系だから。 」
「そうは思わないけど。 」
「君が思わなくても、そうなんだ。 」
「君は、私を経験したから、君に成ったんだ。 私は、君を経験していない。 」
「良く分からないけど・・。 」
「今は、体を休める時だよ。 これから、君は大きな試練を乗り越えていかなければならない。 」
「え!? 」
「でも、君が、しっかり腹を据えて、自分自身を、“雄紀”でいる限り大丈夫だよ。 そして、これだけは、忘れないで! 何があっても、生きて! 生きるんだ! 生きて、元の世界に帰るんだ! 」
「ヴィッディーも、港町の隣町に旅立つ前にそんなことを言ってたけど・・、何が起きるのか不安になっちゃうよ~。 僕には、何が何だか、さっぱり分からないんです! 」
「君を不安にさせようとして言っている訳じゃないけど。 」
ソーハムは大笑いした。
「サティアは、君のこと大好きでしょ? 分かるよ。 その、自分の気持ちに素直に表現できるところ。 」
「そうなんですか・・? 」
「私には、そういうところが無かったからね。 いつも衝突してた。 」
「それは、どうも・・・・。 」
「やっぱり、君は私の進化形態だよ。 」
「はあ・・。 」
雄紀は、だんだん、どう反応して良いのか分からなくなってしまった。
自分自身では、短所だと思っている自分の性質を褒められている。
雄紀が変えたくてしょうがない短所なのに・・。
「でも、僕は変わりたいんです。 もっと・・、こう・・、大人になりたいんです。 ソーハムみたいに。 」
「はあ!? それじゃ、進化どころか、後退だよ。 君は、君のままで居て。 お願いだ。 」
「・・・・。 」
雄紀は、複雑な気分のままだった。
ソーハムの言っていることが全く理解できない。
「もっと、自分のことを好きになっても良いんじゃないかな? 君は、君のままで素晴らしいんだよ。 私とは比べ物にならないくらいに。 さっきも言ったけど、君は私の進化形だから。 」
「・・・・。 」
「私たちが、落ち着いているのは、君が何を経験することをわかっているからなんだ。 」
「・・え? 」




