第五十五章 〜ヴィーリヤ 〜
「僕は、実験室に居る時は、ヴィーリヤを摂っているんですか? 」
「そうだと思うよ。 」
「研究所には、ヴィーリヤが充満する様に、サティアが設定しているから。 」
「そうだったんだ・・。 」
「ヴィーリヤが多く存在するところは、気持ちが良いからね、“パワースポット”って呼ばれるところが多いんだよ。 」
「そうなんだ! だから、どんなに落ち込んでいても、ここでは集中することが出来るんですね。 以前よりも、睡眠時間が短くなったのですが、至って元気だと感じるのも、ヴィーリヤのお陰なんですか? 」
「そうだね。 それから、君があまり食べていないからというのもある。 食べたものを消化するのに体力を使わなくて済むからね。 睡眠も、あまり必要なくなるんだ。 」
「何だか、不思議です。 」
「不思議かい? 人間の体は、不思議なものなのかも知れないね。 外からの刺激よりも、内側から湧いて来るものによって生かされているんだ。 」
「内側から湧いて来るもの? 」
「そうだね。 この話は、長くなってしまうから・・。 」
「そうですね・・。 」
サティアが話に割って入った。
「時が来たら、私が教えて上げる。 」
サティアは、いたずらっぽく笑った。
サティアは、おじさんの方に向き直った。
「これから、結界の張り直しをします。 いよいよ備えなければなりません。 」
「そうだね。 お願いするよ。 危険だといけないから、誰かを一緒に連れて行って。 」
「僕が行きます。 」
「雄紀は、実験室のデータをお願いするよ。 ヴィッディーの分もお願いするよ。 」
「・・分かりました。 」
雄紀は少し違和感を覚えた。
おじさんは、サティアの手伝いには、いつも雄紀を指名した。
『何故、今日は違うのか・・・。 』
今まで、こんな風に、疑問に思ったことは、いつもヴィッディーが答えてくれた。
しかし、ヴィッディーも、もう居ない・・。
寂しさが込み上げて来た。
しばらくして、サティアが帰って来た。
すごく疲れた様子だ。
雄紀は、手を休めて、サティアの傍に来て声をかけた。
「大丈夫? 」
「ええ・・。 大丈夫。 ありがとう。 」
「結界の張り直しって、そんなに大仕事なの? 」
「まあね。 今回に限ってのことだけど・・・外に出た時、感じなかった? 」
「何を? 」
「空気が重くなって来ているのよ。 自然界のヴィーリヤも、かなり減ってしまった。 城の周りの森の草木も枯れ始めている。 マーラが強くなってる・・。 」
「え!? そうなの? って、どういうこと!? 」
「以前は、マーラは霧を作って、それに身を隠れてしか移動できなかったの。 でも、だから・・、多分、体を物質化させるのも時間の問題だと思う・・。 」
「物質化!? 」




