第五十一章 〜 港町の思い出 〜
雄紀が荷造りをしていると、ヴィッディーが来た。
「雄紀、ありがとう。 」
「媚薬を配る時に使う、メモリ付きのカップは、これでいいですか? この澱粉カップだったら、500個あります。 使いまわしはしない方が良いでしょう。 これだったら、誰かが海に捨てても、普通に溶けちゃうし。 この間、これにジャムつけて食べたら、結構美味しかったですよ・・・・。 」
ヴィッディーは笑った。
「そうなんだ~。 私も、やってみようかな? 」
やっぱり、とても嬉しそうだ。
「ヴィッディー、港町の所に住んで居るお友達は、良いお友達なんですね。 」
「あぁ、幼馴染なんだ。 小さい時から、いつも一緒だったんだ。 働き始めるまで、私もあの近くに住んでたし。 あそこは、私の両親から、“危ないから近付くな!”って言われてたけど、私には小さい時から遊び場だった。 あの辺の、ヘスーサンの人達は、血気早いけと、気さくなんだ。 人情に厚いし。 」
「そうだったんだ〜。 港町って、ここから近いんですか? 僕は、ここから散歩できる距離の所しか行ったことが無くて・・。 」
「そうだね。 君は、狙われてるから・・・・。 港町は、ここから車で、休み休み行くと、3日間くらいで着くかな。 」
「結構遠いですね。 じゃ、忘れ物が無いように念入りにチェックしないと・・。 」
「ありがとう! そうだね。 」
「着替えとかは、もう用意できたんですか? 」
「あぁ。 私も、時々、ここに泊まり込んでいた時の着替えがあるから、それを持って行くよ。 」
「お土産は? どんなものを持って行くんですか? 」
「そうだね・・。 やっぱりジャムかな? 雄紀も食べたことのある、あの黄色いジャムだよ。 実は、あのジャムは、この辺の名物なんだ。 でも、特に、雄紀のおばさんが作ったジャムは格別なんだ。 」
「へ~! そうなんですね。 実は、僕の世界にも同じような味のジャムがあるんですけど、色が違うんです。 紺色なんですよ! その実の名前も、“青い実”って言うんです。 」
「え! そうなの!? 私には、想像できない··青い実··。 」
「ところで、ヴィッディー、ずっと聞きたいことがあったんだ。 聞いていい? 」
「どうぞ。 何?」
「ジャイナの、僕の周りの人達は、それぞれみんな自分のこの世界での役割をはっきり知っている人ばかりですけど。 ジャイナの人って、みんなそうなんですか?」
「彼らは、特別なんだ。 この世界を守るために、神が送り込んだ人たちだから。 」
「ヴィッディーにも役目はあるんでしょ。 」
「あぁ。 」
「どんな役目なの?」
「私は、君がジャイナに来て触った、あの石を守るのが役目だったんだ。 でも、あの石は、君が触れることで解放された・・。 」
「え!? 開放されたって、どういうことですか? 」
「私の、この世界での役目は終わったってことだよ。 」
ヴィッディーは、とても穏やかに答えた。




