第四十九章 〜 光りが消えた日 〜
一週間経過した。
雄紀は、倦怠感と少し体に力が入り難い感覚がある以外は、いつもと変わらなかった。
雄紀の体の発光も、かなり弱くなって来た。
「そろそろ、私の番かい? 」
おばさんが、ニコニコしながら聞いて来る。
もう、何度目だろう?
「おじさん、どうしましょう? 」
雄紀は、サティアと共に、おじさんに相談した。
おじさんは、大きくため息をついて、にっこりしながら話し始めた。
「彼女が望むことだ。 私は、もう何も言わない。 雄紀、君が身を持って、この媚薬の安全性を証明してくれた。 ありがとう・・・・。 」
「おじさん、僕、思うんですが・・検体を提供してくれた、ヘスーサンの人達に、ボランティアを募ったらどうでしょうか? 安全性は、まだ完全に証明された訳では無いことを理解して貰える人達がどのくらい居るのかは分かりませんが。 それに、他言無用にしてくれる人。 」
「そうだね。 」
「でも、僕たちが、何も言わなくても、おばさんは、きっと自分で応募しちゃいますね? 」
「そうだね・・・・。 」
「・・おじさんは、おばさんが、とっても大切なんですね。 」
おじさんは、少し照れて笑った。
「そうだね。 彼女のお陰で、全てがカラフルに見えるんだ。 それに、彼女が居たから、頑張れたことも沢山あった・・。 君や、サティアの様に、“別れ別れになっても、互いへの思いがあれば・・・”って思えるほど、私は強くないからね。 せめて、彼女と同じ空の下に居たいんだ・・。 」
丁度、その時、おばさんが、そこに差し入れを持って入って来た。
サティアと、雄紀は、媚薬の話しをした。
おばさんは、本当に飛び上がって喜んだ。
おばさんは、雄紀の腕を掴んで何度か揺すった。
雄紀とサティアは苦笑いをして、そのまま研究室へと入って行った。
おじさんは、複雑な気持ちで、その姿を見送った。
おばさんが、研究室から出てくるまで、おじさんは、ずっと床を見つめて考え事をしていた。
おばさんと、サティア、そして雄紀が休憩室に戻って来た。
「おばさんには、医務室に泊まって頂くことに指定医ですか? サティアと僕も一緒に居ます。 」
「分かった。 でも、君たちは、いいよ。 私が一緒に居るから。 それよりも、彼女の家と、私の家を見ておいてくれるかい? 」
「分かりました。 何かあったら、直ぐに連絡を下さい。 」
おじさんは、ヴィッディーを中心に、雄紀、サティアにヘスーサンの人達の媚薬のボランティアを募る計画を任せて、おばさんの付き添いに入った。
◇◆◇◆◇
検体の提供者を募ったのは、主におばさんだった。
ヴィッディーが丁寧に、記録を残していたので、誰に声をかけるか直ぐに決まった。
そして、あっという間に、媚薬の投与を受けた人は、1000人を超えた。
副反応は様々だったが、軽いドライマウスや、頭痛、倦怠感等、大きなものは無く、数日で収まった。
そして、気が付いたら、灯りの無いヘスーサンの居住区の夜は、真っ暗になっていた。
そして、暗がりでは、誰かが持っている小さな光源が、その人が足を前に運ぶ度、上下に揺れる光景が当たり前になって来た。
ここまで、明らかな変化を宮中で把握していないはずが無かった。
しかし、そのことを、雄紀たちは知る由も無かった・・・・。




