第四十八章 〜 雄紀にあって、ソーハムに無いもの 〜
いよいよ、その時が来た。
雄紀は、媚薬の入ったカップを持った。
「大丈夫よ。 きっと大丈夫・・・・。 もし何かあっても、私がここに居るから。 」
サティアは、息を飲んだ。
「分かってます。 頼りにしてます。」
雄紀は、サティアにほほ笑んだ。
「今日だっけ・・・・。 」
おじさんが、ヴィッディーと一緒に研究室に入って来た。
「・・・・何だか、みんなが集まったら・・みんなに見られてたら、飲みにくいんですけど・・。 」
雄紀は、眉を八の字にしながら笑った。
「ソーハムは? どうなんたんだい? 」
おばさんも、入って来た。
雄紀は、幸せを噛みしめていた。
人の中に居ることが、こんなに幸せだと感じられる様になるとは思っていなかった。
そして、同時に、皆を守らなければと強く感じていた。
「皆さん、本当にありがとうございます。 僕は、本当に幸せ者です・・・・ 」
「何を、改まって言っているんだい? 」
おばさんが言った。
「何があっても、助けるから! 」
おじさんが言った。
「君を尊敬するよ・・・・。 」
ヴィッディーが言った。
「ちょっと、雄紀に何かある訳じゃないんだから・・! 雄紀が、急に改まって変なこと言うから、皆が変になっちゃうんでしょ。 私に任せて! 」
「頼みます・・。 」
雄紀は、サティアに言った。
雄紀は、一度、息を完全に吐き切って、カップの飲み口を口に当て、中身を一気に飲み干した。
・・・・何も起こらない。
10分程して、おじさんが雄紀に聞いた。
「気分はどうだい? 」
「何も変わりません。 多分、このまま大丈夫な気がします。 皆さん、僕は大丈夫です。 サティアさんも居ますし・・・・。 」
「私が、付いてますから・・。 」
そういうサティアを見ながら、おばさんが答えた。
「そうだね。 ご飯の用意でも、してこようかね。 」
「じゃ、私たちも、仕事に戻ろうか。 何かあったら、直ぐに読んで。 」
おじさんと、ヴィッディーが部屋を後にした。
「本当に大丈夫? 」
サティアが雄紀に聞いた。
サティアには隠せない。
サティアには、雄紀が感じている事が分かる。
雄紀は、体中がむずむず違和感を感じていた。
しかし、我慢できないほどでは無い。
軽い頭痛と倦怠感もあった。
「ちょっと、休みます。 」
「それが良いわ。 」
雄紀は、奥の医務室で休んだ。
サティアは、雄紀のベッドの脇の椅子に座って、雄紀を見つめた。
急に、サティアが笑い出した。
「何? どうしたんですか? 」
不思議そうな顔で雄紀が聞いた。
「不思議よね、あなたって・・。 あなたのまわりに、皆が集まるの。 確かに、ソーハムも皆に囲まれていた。 それは、彼の、カリスマ的存在やリーダーとして彼を慕って集まってたの。 」
「・・嫌味ですか・・? 」
「違うわよ。 確かに、ソーハムはあなたの持っていないキラキラするものを沢山持っていた。 でも、あなたは、あなたで違う魅力があるのよ。 可愛いって言うか・・。 助けてあげたいって言うか・・。 守ってあげたいって言うか・・。 危なっかしいって言うか・・。 何となく、皆、あなたのまわりに集まって来るの。 」
「・・何だか、嬉しくないです・・。 」
「あなたは、あなたでみんなに愛されているわ。 あなたは、ソーハムとは違う、あなたのままで、私はあなたが大好きよ。 」
「!!! 」
サティアは、雄紀の頬にキスをした。




