第四十七章 〜 雄紀とサティア 〜
サティアと雄紀は、いつの間にか、お互いが傍に居ることが当たり前になっていた。
ぶつかり合うことも多かったが、お互いが、あまりによく理解出来るからこそであった。
雄紀は、サティアに対しての感情をとても不思議なものだと感じていた。
サティアに対しての気持ちは、“恋している”と言う言葉だけでは表現しきれなかった。
それは、親に対しての感情に近かった。
雄紀は、子供を持ったことが無いので、予想することしかできないが、親の子どもに対する感情に近いと感じていた。
そして、それは親友に対しての感情の様でもあった。
いずれにしても、サティアの瞳を見つめると、まるで自分の外に居る、自分自身を見つめている様な不思議な気持ちになった。
そして、サティアも同じ感情を持っていることも分かった。
お互いの瞳を見つめていると、全ての存在の根源がそこにあると様な静かな安心した気持ちになれた。
そして、サティアが、その時々、何を感じているかを雄紀は感じることが出来た。
自分の感情もサティアに流れ込んでいる言う確信があった。
お互いの感情が、手に取るように感じられるからこそ衝突するけれど、それがお互いの信頼関係を強くした。
しかし、雄紀は、どこか自分自身も、サティアとの関係も完全なものではないと感じ始めていた。
そして、その感覚は、“狭間”に居る、“ソーハムの欠片”と融合しなければ消えないものだと分かっていた。
問題は、雄紀には、どうすればソーハムと融合できるのか分からなかった。
しかし、きっと、その方法は理屈でも分からないものであろうことも、雄紀には分かっていた。
もし、説明して理解出来る様な簡単なものであれば、ソーハムは、雄紀が理解出来るまで辛抱強く説明してくれていただろう。
きっと、サティアも、雄紀が、ソーハムと融合することを望んでいるであろう。
雄紀は、時々怖くなった。
「もしかしたら、僕とソーハムとが融合することが出来たら、僕は、“雄紀”でいられるのだろうか? もしかしたら、ソーハムになってしまうのではないだろうか? それに、もしかしたら、サティアは、僕がソーハムになることを望んでいるのではないのだろうか・・・・ 」




