第四十四章 〜 独りでの決意 〜
「どのくらい効果があるのかも確かめなければならない・・。 効果が永久的なものなのか、短期間のものなのかも分からないしね・・」
おじさんが、言った。
雄紀は、サティアに言った。
「これは、どの様に体に入れるものなのですか? 飲むとか、舌下吸収とか、注射するとか・・」
「媚薬としては、アルコールの入った飲み物に混ぜて飲むと言うのが一番多いと思うわ? アルコールは、下にピリピリして味が分かり難いから。 でも、これは普通に飲んでも、あまり味は感じないと思う」
雄紀は、おじさんの方を向いて言った。
「どのようにテストしますか? まず、培養した細胞で・・」
「私が飲むよ!」
おばさんが、差し入れを手にしながら部屋に入って来て言った。
「私だって、役に立ちたいんだ。 私が飲むよ」
「でも、効果も未だ未知だし、どんな副作用が出るのかまで未知数なんだ」
おじさんが、おばさんに歩み寄りながら言った。
おじさんは、おばさんを部屋の隅に連れて行って話し始めた。
確かに、夜、光る体を持つ人でないと効果を確かめられない。
ヘーゼルマンである、サティアやおじさん、ヴィッディーでは、副作用は確認できるが肝心の効果が分からない。
おじさんと、おばさんが戻って来た。
「私がやる! 死んだりはしないんだろ?」
「死にはしませんけど・・。 まだ、何も分からないんです」
サティアも、声をかけた。
「だから、私がやるんだよ。 ねぇ、何か手伝わせておくれよ」
おじさんは、困った顔をしている。
「・・言い出したら聞かない人だから・・。 私が、ずっと傍について見てるから。 万が一のことを考えて医務室で一週間くらい、一緒に過ごすよ」
「まず効果を確かめてからにしませんか?」
雄紀はおばさんに声をかけた。
「・・ソーハムが、そう言うなら・・。 でも、人間でテストする時は、私が最初だからね!」
皆と別れて、雄紀は実験室にいた。
試験管の中の、ヘスーサンの人から寄付された腸内細菌に媚薬を入れていた。
それを、人の深部体温と同じ環境下で一日保管しなければならない。
そして、それを人の腸壁と尾内位細かいフィルターを通して出来る液体を、今度はシャーレに培養された、ヘスーサンの人の皮膚細胞に塗らなければならない。
そうやって、実験して効果が出ても、決して効果が約束されるものでは無い。
人の体を通って行く何処かで、想定外の何かが起こるかも知れないからだ。
しかし、雄紀は期待を持ちたかった。
「きっと上手く行く!」
雄紀は、おまじないの様に、そう呟いた。
雄紀には、1つ考えがあった。
まだ、誰にも言っていない、隠していることがあった。
雄紀は、独り決意を固めるのだった。




