第四十二章 〜 新しい生活 〜
一週間程して、雄紀は、研究に戻っていた。
雄紀の、驚異的な回復力と、研究に戻りたいと言う雄紀の強い願いで叶えられたことだった。
医療チームは、そのまま研究施設内に残されて、雄紀は毎日、朝と夕方に問診を受けた。
そして、夜は納屋に戻って寝た。
サティアも、納屋で寝泊まりして、雄紀がまた狙われない様に見張っていた。
雄紀は、再び研究に没頭し始めていた。
しかし、以前の様に何から逃げる為にではなく、真に光を止める方法を見つけたいと言う好奇心と使命感とであった。
ヴィッディーと、サティアが助手として 雄紀の研究を見守った。
先ずは、襲撃前の自分の閃きを整理した。
余剰な酸素、ルミフェリン、ルミフェラーゼを体外に排出する方法を見つけなければならない。
「何か、良い方法は無いだろうか・・」
「サティアさん、サティアさんは魔女なんでしょ?」
「魔女ではない! 占い師! 先の王の命を受けた王家専属の占い師! 全然違うのじゃ! 分かる? まぁ、“魔女”の前に、“美”を付けて、“美魔女”って表現すれば、当たってなくもないけど? ・・で、何なの?」
「ヘスーサンの人達が光る原理は、突き止めたんだ。 体内の過剰な酸素を除去する何かがジャイナに無いですか? それから、ジアノバクテリアと言う藻を退治しなければならないんです。 体内に、過剰な酸素が無くなると、大量の酸素を放出するんです。 この2点を解決できれば、ヘスーサンの人達の体内から、光の元を排出させることが出来るんです」
「そうね・・。 魔法や媚薬で良く使われる、薬草が使えるかも知れぬ・・。 王族が所有している植物園に、生えている特別な真菰と、菩提樹と蓮の実とを特殊な方法で煎じたものを・・」
一瞬、サティアは、雄紀の方を睨むように横目で見て咳払いをした。
そして、再び話しだした。
「このレシピは、門外不出なの。 でも、私なら調合できるわ。 このレシピに、ある媚薬を混ぜると、惚れ薬が出来るんだけど・・」
「やっぱり・・魔女だよね・・」
「違うわよ。 占い師! 王族の!」
ヴィッディーの大笑いの声が響いた。
「一番戻りたかった場所に戻れたような感じがして・・何だか、嬉しいよ」
「・・とにかく、手配するわね。 あの植物園の管理も私がしているの。 唯一の鍵も、ほら、これよ」
蓮の花の様な形の固い石の様な、金属の様なもので出来た小さな置物の様なものを手の平に出した。
「まず、薬草を揃えなきゃ」
サティアは、部屋の隅に座って目を閉じた。
「ヴィッディー、サティアさんは何をしているの?」
「ああ、弟子か助手に薬草を揃える様に伝えているんじゃないかな?」
「でも、王族の植物園にしか生えていないって。 唯一の鍵も、サティアさんが持っているって・・」
「それも、多分、念で渡すんだ」
「・・そうなんだ、凄~い」
サティアが、立ち上がって言った。
「やっぱり、ちょっと行って来る」
そう言うと、サティアは幕を降ろしたかの様に消えた。
「え!?」
雄紀が、小さな感嘆詞の声を上げたとたん、再び、サティアが現れた。
「薬草、木も揃ったわよ」
サティアは鉢に植え替えられた薬草と木を持って現れた。




