第四十一章 〜 安らぎの時 〜
「ソーハム、良いかい? 夜は、上に上がっておいで。 しっかり休むんだ。 じゃないと、また『悪』にやられちまうよ・・」
おばさんは、ハンカチで目を押さえながら言った。
「ご心配をおかけしてすみません。 でも、も大丈夫です」
「そう言えば、ソーハムって・・雄紀、ソーハムに会ったの?」
サティアが、大きな黒目を更に大きく、ウルウルさせながら言った。
「つい、さっきまで一緒に居ました。 皆さんに、“愛してる”って伝えてって」
サティアの大きな目に急激に涙が溜まって零れ(こぼれ)落ちた。
おばさんも、ハンカチを目に当てたまま外さない。
ヴィッディーは声を上げて泣き始めた。
「そう言えば、ソーハムさんは、サティアさんの前には現れないって言ってました。 」
「どうして?」
少し眉を寄せながら、サティアが聞き返した。
「ソーハムさんは、“実態が無いから、“お化けだ”って、サティアから祓われちゃう・・”からだそうです。」
おじさんが大笑いして、みんなの泣き声も笑い声に変わった。
「もう・・当たってるけどね・・」
サティアもほほ笑んでいた。
雄紀は、少し考え事をしてから口を開いた。
「・・あの、僕が倒れる前に来ていた服は何処にありますか?」
「服は、上下とも着ていたものは、血がついたり、除細動器使ったから、破いたりしたから処分してしまったの。 でも、上着の内ポケットの所に入っていた、袋はここにあるわよ」
そう言って、サティアは雄紀に少し重さのある、きんちゃく袋を手渡した。
「ソーハムさんと話していて・・決めたんです。 これがどういう意味なのかは、何となくしか分かりませんが・・。 大切な人に渡したいから・・」
そう言いながら、雄紀はきんちゃく袋の中身を自分の手の平に出した。
それは、雄紀が星見岩のおじさんから手渡された石が、ジャイナに来てから5つに分かれた星屑石だった。
雄紀は、おじさん、おばさん、ヴィッディー、そしてサティアの手に、ひとつひとつ石を置いた。
「この石は、僕をジャイナに導いてくれた細切な石です。 だから、みんなに持っていて欲しいんです・・」
「大切にするよ・・」
おじさんは、石を握りしめた。
雄紀は、落ち着いた表情で、ヴィッディーを見つめた。
ヴィッディーは、しばらく手の平の中で石を遊ばせてから、雄紀の方を見た。
「ありがとう・・」
ヴィッディーは呟くように言った。
「ありがとう・・」
雄紀も呟くように、ヴィッディーに言った。
その後も、
何気ない、穏やかな空気の中、時間は流れていった。
そして、この時は、これから この5人の運命が大きく変動していくことは、誰も知る由も無かった・・・。




