第三十七章 ~ 欠片 ~
「マーラはここにはいないよ。 正確には、ここへは入れないんだ。 でも、確かに近くにいるね。 警戒している。 」
「やっぱり、そうなんですね。 意識していなくても、2度も会ったことがあるので、何となく気配を覚えました。 」
「感覚が覚えているんだね。 良いことだ。 これからは気を付けることが出来る。 」
「でも、どうして、マーラはここに入って来ることが出来ないんですか? 」
「ここには細かい波動の結界が張られているんだ。 この結界の中の波動は、マーラに取っては最高に気持ちが悪いんだ。 波動は、共鳴し合うか、波動がぶつかるり合うと、弱い方は吸収されてしまうんだ。 」
「マーラが入ってきたら、どうなるの? 」
「多分、個々の波動に吸収されてしまう。 」
「・・僕は、今、どうゆう状態なんですか? 個々の波動に吸収されている状態なんですか? 」
「君の場合は、少し吸収されることで、共鳴しているよ。 」
「あなたの波動にですか? 」
「そう。 」
「あなたは、いったい誰なんですか? 神様ですか? 」
「いいや。 私は神ではない。 」
「僕の知っている人ですか? 」
「会ったことはあるよ。 」
雄紀には、心当たりがあった。
この、雰囲気。
この、話し方。
この、この光・・。
「もしかして、夢の中で、ですか? 」
「そうだよ。 」
「ソーハム? 」
光は、だんだんと形を変えた。
そして、雄紀より少し背の高い、胸板の熱い、笑顔の良く似合う堀の深い顔立ちの人になった。
「初めまして。 」
ソーハムはにっこり微笑んで、雄紀の瞳の奥を覗いた。
雄紀も、ソーハムの瞳を見つめ返した。
「僕があなたと会えると言うことは、僕はあなたではないんですか? 」
「私は、私が君になる時に残された、ソーハムのかけらなんだ。 」
「かけら? 」
「私が、絶命の瞬間、深く後悔をしたのは話したよね。 その、私の心は深い傷を負って、その部分が欠けてしまったんだ。 そして、欠けたまま転生して、君になった。 」
「・・・。 」
「君が、本当の自分自身に気が付けば、私は、君に吸収される。 」
「そしたら、もう会えなくなるの? 」
「いや、君の一部になるんだ。 私は君に、君は私に吸収されるんだ。 」
「良く分からない・・。 」
「本来の姿に戻るだけだよ。 」
「・・・。 サティアさんに会わないんですか? 」
「会えないよ。 私は、今はお化けだ。 実体が無い。 祓われちゃうよ、サティアに・・。 」
「確かに。 」
「君に吸収されることが出来たら、会えるんだ。 サティアだけではなく、父と、母にも。 」
「そうなんですか!? ソーハムのご両親は、どんな人達なんですか? 」




