第三十五章 〜 大切な人 〜
「もしかして、アッデス王は、今でもサティアさんを・・。 」
「そうかも知れないね。 でも、それは どうにもならないことなんだ。 」
「叶わないってこと? 」
「そうだね。 会ったでしょ、サティアに。 」
「そうですね。 すごく怖かったです。 」
雄紀と、光は大声を上げて笑った。
「サティアは、自分の信じることを一途に突き進める人だから。 例え、まわりの全ての人達が反対しても、それは彼女に取っては、反骨精神を刺激する材料にしかならない。 」
「君の世界の、サティアはどんな人なの? 」
「あんまり、変わらないです。 いつも、まわりに人が集まっていて、コロコロ笑っていて、華やかで・・。 彼女が来てから、職場がすっかり明るくなりました。 僕は、面食らってしまいましたが。 」
「そうなんだ。 君のご両親は? 」
「父は・・、元気です。 母は、ノー天気のお嬢様です。 良いところのお嬢様の割には、いつもあっけらかんとしていて、サバサバしていて・・。 でも、僕のことをいつも心配している良い母です。 」
「研究室って、サティア以外は誰がいるの? 」
「僕、ほら、あまりしゃべらないんで、あまり良く分かりません。 でも教授には、すごくお世話になっています。 」
「教授って、どんな人なの? 」
「僕が、あまり人と話すのが得意ではないので、すごく気を使ってくれるような人です。 何事も、丸投げせずに、必ずフォローアップしてくれて、ご自分のプライベートの時間を割いてでも相談に乗ってくれて・・。 本当は、あまり外で言うのは止められているから言い難いんだけど、光さんは関係ないから・・。 教授は、父なんです。 僕が、大学に進学したちょっと後に、父と母が離婚したんです。 面倒くさいから、仕事場でも秘密なんです。 」
「そうなんだ。 お父さんとお母さんは、どうして分かれたの? 聞いても良いかな? 」
「母の家族は、母の旦那さんに会社を継いで欲しいと思っていたんです。 でも、父は、研究を続けたかった。 母の家族が、ありとあらゆる手を使って、父が研究を続けられない様に、手を回そうとしたんです。 だから、父を守るために、母は父と分かれた。 」
「なるほどね。 」
「君が影響を受けた人は他にもいるの? 」
「そうですね。 星見岩のおじさん。 」
「星見岩のおじさん? 」
「僕、高校生の時に、母と大喧嘩して、もう人生に疲れちゃって・・死にたいと思って山に行ったんです。 そしたら、先客がいて。 その山で、地滑りがあって、おじさんは、僕を助けて、その地滑りに巻き込まれてしまったんです。 多分、亡くなったんだと思います。 おじさんから助けてもらった命だから、大切にしようと思って生きて来たんだ。 おじさんが、地滑りに巻き込まれる直前に、その時見つけた星屑石を僕の手に握らせて、安全なところに突き飛ばしてくれたんです。 だから、僕はここにこうしている。 ただ、その時は1つだったのに、今は、ほら、5つになっているんです。 」




