第三十四章 〜 アッデス 〜
「だから、僕は・・・ 」
雄紀は、自分の状況を思い出し、恐怖が心に広がった。
「君は、死なせないよ。 私たちが守るから。 」
「私たち? 」
「君が、他者と向き合えなくなったのは、ソーハムが絶命する時に、強く後悔したからなんだ。 」
「え!? 」
「他者と真正面から向き合ったり、自分の気持ちを真っ直ぐぶつけたり出来なくなったこと。 他者と心の距離を広く取ること。 独りを愛することも。 全部、ソーハムの後悔が原因なんだ。 その、ショックが余りにも大きくて、君は、人を傷つけることに対しての恐怖を抱えて生まれて来たんだ。 そして、その恐怖に振り回されている。 」
「・・。 」
「アッデスに負い目を感じたんだ。 ソーハムは、当時、アッデスが切望していたものも、人も、立場も、全て手にしたから。 」
「でも、光さんの話を聞いていて思ったけど、アッデス王には違う使命って言うか、目的があって生まれて来たんじゃないの? アッデス王は、元々、そこを間違っていたんじゃないですか? 」
「そうなんだけどね。 アッデスには、ジャイナの王となって国を治めると言う大切な役目がある。 そして、そうなりたいと望んで生まれて来たのだと思う。 アッデスは、そこをはき違えているのは確かだと思う。 しかし、ソーハムに取って、アッデスは可愛い弟分。 大切な人を傷つけることは、自分が傷つくよりも辛いことなんだ。 」
「もしかして、サティアさんのことも・・ 」
「そうだね。 ソーハムは、アッデスがサティアに対して好意を抱いていたことを何となく知っていた。 でも、喜んでくれると思い込んでいたんだ。 しかし、サティアとソーハムが婚約することによって、アッデスが深く傷ついたことを知った。 だから、サティアと共にある時に感じる“幸せだ”と言う感情に嫌悪感を抱く様になってしまったんだ。 」
「・・僕は、彼女の存在で、自分がおかしくなっていくのが・・本当に、怖かったです。 」
雄紀は、自分の心の中の感情的な弱みを生まれて初めて誰かに話した。
思っていたよりも、すっきりした。
何だか、嬉しかった。
「そうだね。 でも、君ならば越えられる。 神は、越えられない課題は与えないから。 」
「それは、どうかと思いますけど・・・。 」




