第二十九章 〜 狭間 〜
雄紀は、まるで狐につままれているような気持ちになって来た。
「僕は、それを理解しなければならないのですか? 」
「いや、解らなければ、解らなくてもいいことだ。 」
「・・・。 」
「全ての答えは、君の中にあるんだ。 ここは、君が作り出した世界だからね。 」
「・・・。 」
「確かに、他の人も存在する。 しかし、それは君が全てアレンジしているんだ。 VRの様にね。 」
「・・・。 」
「いつか、君にも分るよ。 」
雄紀には、解る気がしなかった。
と、言うか分かる気も無かった。
あまり、興味が無かった。
光は、言った。
「でも、サティアは違う。 」
「え!? 」
「君と、サティアは同じ世界に別々に存在している。 お互いが別々に存在しているから、見えないけど、お互いに戻って行く前提で、生を得たんだ。 」
「はぁ・・。 」
「そして、君の世界では、時は進んでいるように見えるけれども、実は逆行しているんだよ。 進んで来た道を、正確な場所を狙って戻るのは 大変な事なんだ。 何か一つでも、誰か一人でも欠けたら、元に戻れない。 だから君は、頑張って生きて行かなければならない。」
「もし、僕が死んだらどうなるの? 」
「サティアは、この世界に持って来た願いを叶えられなくなってしまう。 」
「・・・。 」
「でも、それだけじゃない。 ジャイナは無くなってしまう。 」
「え!? 」
「正確には、ジャイナは今と全く違う国になってしまうんだ。 ジャイナは悪によってコントロールされてしまう。 そして、その悪の勢力は、強くなって、ジャイナどころか、この惑星全体を支配してしまう。 そして、君の世界にも、その悪の手は及ぶかも知れない。」
「この世界は、VRの様なものと言ったよね。 じゃ、悪を意思で無くしてしまえばいいんじゃない?」
「それがね、ちょっと事情が変わってしまったんだ。 君だけじゃなくて、この世界の人々は全て、お互いがアレンジした VRの重なりの中で生きているんだけど。 その狭間に入り込んで、重なりに、まるで コンピューターウイルスの様に感染する悪が侵入したんだ。 まだ、感染は ほとんど広がっていない。 」
「正直、何を言っているのか、全く理解出来ないよ・・。」
「とにかく、ジャイナの人たちや、この次元に住み人達には悪は倒せない。 君は、違う次元から来ているだろ。 だから、悪を倒すことが出来るんだ。 」
「ジャイナの人達には出来ないの? ジャイナや、この次元の人達は、この次元の波動を持っているが、君は違う。 君自身が、この世界では歪、すなわち狭間なんだ。 君にしか、狭間に存在出来ないんだよ。」




