第二十八章 〜 白い夢 〜
雄紀は夢と現実の狭間にいた。
そこは、真っ白く光っている場所だった。
その場所を何かが照らしている訳ではなく、その場所も、空も全てが微かに光ってお互いを照らし合っていた。
「温かい・・・。 」
雄紀は呟いた。
皮膚だけではなく 雄紀の心も、体も、全てが温かくなった。
その場所は、全てが温かい愛情そのもので出来ていた。
雄紀は、ゆっくり そこに寝そべっていることが あまりにも心地よく、何もしたくなかった。
自分が誰だったか、何をしていたのか、何をしたかったのか、どうでも良いと感じていた。
雄紀は、ゆっくり起き上がった。
ここは、本当に気持ちが良い。
床に積もった白い小さなフワフワも、優しい光を放っていた。
雄紀は、両手で そっと、そのフワフワをすくった。
空に放り上げると、そのフワフワは 宙を舞って雄紀に降り積もった。
そして、雄紀に沁み込んでいった。
雄紀は、心が光に満たされていった。
雄紀は、立ち上がって歩き出した。
まわりの全てが光っているので、まわりがどんな景色なのか分かり難い。
雄紀は、気の向くままに歩き始めた。
しばらく行くと、遠くに穏やかに、そして激しく輝くなにかを見つけた。
雄紀は、その光っているものに向かって歩き出した。
その、光っているものは、しばらくすると ゆっくり雄紀に近づき始めた。
雄紀は、立ち止まった。
すると、その何かも止まった。
しばらく、そのまま様子を伺っていた。
光も、同じ様に。様子を伺っている様だった。
雄紀は、反対方向へ歩き出そうと、振り返った。
「どこへ行くんだい? 」
雄紀の振り返ると、その光が居て声をかけて来た。
「え? 」
雄紀は、今、光が居たと思った方向へ振り返った。
「ここでは、時間と空間は存在するけど、存在しないんだよ。 」
光は、話し始めた。
「今、君がいる場所は、君の心の中だ。 そして、全ての存在なんだ。 」
雄紀には、意味が分からない。
まるで、なぞなぞクイズだ。
「思い込みを捨て去れば、全てが見えて来る。 思い込みが、みんなを盲目にする。 思い込みさえ捨て去れば、全てが見えて来る。 何故ならば、みんな本当はこの世界の存在だから。 」
雄紀は、ますます意味が分からなくなった。
「今は忘れているけど。 いつか、また思い出すよ。 」
「何をですか? 」
「君には、自分自身が見えないでしょ。 それは、そう言う風に、君自身が自分に課した課題なんだ。 見えるのは、自分以外だけ。 」
「そこから、僕は何を学んでいるんですか? 」
「“見えるのは、自分以外だけ”と、言うのは大きなヒントだよ。 」




