第二十六章 〜 長い一日 〜
雄紀は動かない。
「除細動器はないんですか!?」
医療チームが入って来た。
除細動器を使う度、傷口から大量に出血した。
止血を試みるも、止められない。
CPRを続けるも蘇生出来ない。
「・・BP、プルス、呼吸、確認できません! 」
サティアが到着した。
サティアは、手の中に何かを持っている。
サティアは、医療チームを雄紀から遠ざけて、手の中の物を傷口に当てた。
その何かが傷口に接触したとたん、そこに大きな稲光の様な閃光が走った。
光はしばらく、辺りを真っ白にかえた。
その光は、しばらくして、ゆっくりと落ち着いた。
光が消えると、サティアの手の中の物も消えていた。
・・・雄紀の眉毛が、ピクッと動いた。
眉間に皺が寄った。
両目が、ガッと開いた!
ゲホッ、ゲホッ、ゲホ・・
「ぐふっ・・・。 」
雄紀は、急激に息を吸い込んで咽込んだ。
その後に、傷の痛みで悶絶した。
出血も止まっている様だ。
しかし、雄紀の顔色は、“青白さ”を通り越して、淡い黄灰色になっていた。
意識も、朦朧としている・・・。
おじさんと、ヴィッディー、そしてサティアは、地下水脈の流れる場所にある部屋に、治療に必要な設備を整えて、ベッドに雄紀を寝かせた。
雄紀は、眠っている様だ。
その部屋は、入り口が一つだけ。
その他の壁は、岩に埋まっている。
サティアは、その部屋の十の方角に結界を張り、医療チームと共に、雄紀が完治するまで常に付き添うことにした。
皆、雄紀に起きたことは、口にせず動いた。
おじさんと、ヴィッディーは、まるで何事も無かったかの様に研究を続けた。
何かが動いているのは確かだった。
ただ、何が動いているのかは確かでは無かった。
確かに、アッデス王は怪しい。
しかし、アッデス王は、呪術を使ったり、ましてや姿形を変化させること等出来ない。
王族に関係する占い師の中で 魔術の使える者は、サティア以外にもいる。
しかし、もし、今回の様な魔術を使える者がいたとすれば、王族の占い師を統べっているサティアが知らないはずが無いのである。
しかも、今回のものは、呪術かどうかも怪しい。
もっと、違う、何か大きな存在が動いているのでは無いかと、3人は考えたのだ。
だから、雄紀が、生存していることも、危篤状態であることも、決して その存在に知られてはならないのである。
雄紀が完治するまでは、その存在が何であるかを調べることもしないことにした。
とにかく、3人の思いを遂げる為には 何としてでも雄紀に生きていてもらわなければならないのであった。




