第二十四章 〜 発光 〜
今まで、ヘスーサンの人たちの体は、日や問わず、常に発光しているものだと思い込んでいた。
昼間は、太陽の光で発光の光が見えなくなっているものだと思い込んでいたからだ。
しかし、さっきの現象では、暗転がトリガーとなり、ジアノバクテリアが大量に酸素を放出する様に見えた。
そこに酸素が大量にあれば、それだけそのトリガーの影響も大きくなり、強く発光する。
『それで、ヘスーサンの人々の発光は、室内に他の光源がなくても、部屋全体を照らせる程に明るくなるのか···。 』
雄紀は、初めておばさんに会った頃のことを思い出していた。
外が暗くなって、灯りも付けてなくて部屋は真っ暗なはずなのに、明るかった。
雄紀が来る前には、おばさんの家に、明かりはなかった。
おばさん自身が明るく光るので、わざわざ灯りをともさなくても不便はないそうである。
おじさんが来た時も、蝋燭でこと足りる。
雄紀も、おばさんの家では、暗くなってからは火をともした蝋燭をランタンに入れて持ち歩いて、眠る時に消している。
ただ、夜中に目が覚めて、お手洗いに行きたい時は困ってしまう。
漆黒の闇の中を手探りで、ライターを探さなければならない。
この辺りは、ヘスーサンの人々の住む地域。
日が落ちたら、ヘーゼルマンの人々が、ここを訪れることは、まず無い。
だから、街灯が全くない。
確かに、夜空は、物凄く美しく見える。
星の集まっている場所は、星々がはっきり瞬いていて、その星々の間にも、もっと遠くの、もっと沢山の星々が瞬いているのが見える。
空の、そこら中がキラキラ、キラキラ輝いている。
圧巻である・・・。
雄紀は、思い出に心を誘われた。
しかし、“そんなことに時間を無駄に使いたくない!”と、気持ちを立て直した・・。
光さえ存在すれば、ジアノバクテリアは、生存していく上で必要な栄養素である、糖分やたんぱく質を自ら生成することが出来る。
ヘスーサンの人たちの、体内のジアノバクテリアは紫外線だけではなく、ルミフェリンやルミフェラーゼの光からでも、それらを合成できるらしい。
要するに、外が明るい時は、その光から栄養分を合成し、まわりに光が無くなる夜は、ルミフェリンやルミフェラーゼに酸素を供給し、光を合成してもらうのだ。
雄紀は興奮した。
雄紀に取っては、大きな発見だった。
この仮説が正しければ、体内の酸素の濃度を低くすれば発光が弱く出来るかも知れない。
雄紀は、我に返った。
何故ならば、この仮説が実証されても、根本的な解決にはならないからである。
目標は、あくまでもヘスーサンの人たちを、完全にヘーゼルマンの人たちと同じ体質に戻すことである。
少なくとも完全に発光を止めなければ研究の意味がない。
その時、雄紀は閃いた。




