第二十三章 〜 暗転 〜
雄紀に取って、おじさんの言葉は、あまりにも想定外だった。
雄紀の世界では、そうであった様に、“お客様”に対しての態度にについて注意を受けるものだと思い込んでいた。
何故ならば、サティアは、ジャイナの王族の関係者。
身分が高いはずである。
雄紀の態度は明らかに失礼であった。
おじさんは、ジャイナのサティアと、雄紀が面識のあることを知らないはずである。
しかし、“スプリラパーツ“って何だ!?
まるで、スピ系の壺売り文句の様だ。
「頭が爆発しそうだ・・。 」
雄紀は呟いた。
少し離れたところで、ヴィッディーが見ている。
心配は、かけたくなかった。
しかし、どうしようもない不安感の方が勝ってしまった。
雄紀は、両手で顔を覆って項垂れた。
色んな感情が一気に押し寄せて来た。
雄紀には、おじさんの言わんとすることが全く理解出来なかった。
あの超常現象等に特化した雑誌を大喜びで読んでいた、幼少時代だったら理解出来たのかも知れない。
雄紀は、スピリチュアルなことに対して、決して否定的ではない。
今でも、パワースポット巡りくらいはする。
しかし、さっきのおじさんの話は、雄紀の常識で理解出来る範囲をあまりに超越し過ぎていた。
でも、一番問題なのは、雄紀の心は、おじさんが言っていたことが真実だと言っていることである。
完全たる、アンビバレンスである。
雄紀は、もう、どうして良いのか分からなくなった。
この、極限までソワソワする、とてつもない不安感は雄紀の処理出来る重量を大幅に超えてしまった。
しかし、こんな時にどうしたら良いのか、雄紀には解っていた。
完全に、自分の感情を抑え込んで、しなければならないことに集中する。
雄紀は、研究室に泊まり込むようになった。
そして、食事も取らなくなった。
皆の心配を余所に、雄紀は研究に集中した。
そんなある日、雄紀は、シャーレの上に培養された細胞の中の遺伝子の中の酵素を電子顕微鏡越しに凝視していた時だった。
急に、施設内の電気が一斉に消えた。
そして、数秒後に全て復活した。
「ん??? 」
雄紀は、細胞膜内のジアノバクテリアに注目した。
「何かを出している・・酸素? 」
電気が消えた瞬間、全てのジアノバクテリアが一斉に、気泡を吐き出したようだった。
酸素によって、ルミフェリンとルミフェラーゼが同時に発光し始めた。
「もしかしたら、このジアノバクテリアは暗転したせいで、大量の酸素を放出した? 」
雄紀は、はっとした。




