第二十二章 〜 スプリラパーツ 〜
おじさんが、雄紀を見つけたのは、実験室の中だった。
おじさんは、雄紀に手で合図をして、2人で休憩室に行った。
「悪かったね。 」
「何がですか? 」
「サティアを連れて来たことだよ。 」
「いえ、別に。 」
雄紀の頭の中は、カオスそのものであった。
「君は、どうして、サティアがあんなことを聞いたのか分かるかい? 」
『この話の流れは知っている・・。 』
雄紀は思った。
『この話の流れは、説教が始まるパターンだ。
やっぱり、ここでも僕は上手くやっていけないのか・・。 』
雄紀は、心を閉じようとした。
おじさんは、話を続けた。
「サティアはね、君をソーハムの生まれ変わりだと信じているんだよ。 」
「はぁ!? 違いますよ! 僕は・・。 」
おじさんの、あまりに意外な言葉に雄紀は、素になってしまった。
「僕たちも、君がソーハムの生まれ変わりだと思っているよ。 」
「何故ですか? ソーハムさんと僕には、何の共通点もない・・。 」
「そう思っているのは君だけじゃないのかな? 」
「!? 」
「そして、私たちは、何故君が自分を責めるのかも知っている・・。 」
「!? 」
「どうして・・ 」
「それは、君が自分で見つけなければならない。 」
「自分で? 」
「君が何故ここに現れたのかもね。 」
「・・・。 」
「ただ、サティアに取っては、ソーハムは特別な人だったんだ。 スプリラパーツって聞いたことあるかい? 同じ波動で集まったエネルギーが、運命共同体として、1つの魂を形成することがあるんだ。 その魂は、より学びを得る為に、わざと2つに分かれるんだ。 自分自身に負荷を課して、その2つになった魂は、分かれる前に自分に課した課題を、それぞれがやり遂げた時にのみ、また1つに戻れるんだ。 それまでは、自分自身が、完全ではない感覚と、何処にいるかもわからない存在を探し続けるんだ。 」
「未熟な時に出会ったら、その2人は、どうなるんですか? 」
「拒否するね。 ただ、あまりの衝撃に、自分を保持できなくなって自滅してしまう人もいる。 だから、あんまり早い段階で巡り合うのは、良くないことかも知れないね。 」
雄紀には、大きな心当たりがあった。
雄紀が自己崩壊してしまう程に悩んでいた、ほぼ全てが、おじさんの説明で解明される。
しかし、にわかには信じがたい。
「じゃぁ、僕は、サティアさんと巡り合う運命だったの? 」
「ん~・・。 そうだけど・・、違うね。 そんな気がする。 」
「・・・。 」
「私にも、詳しくは分からないんだよ。 でも、答えは全て、自分の心の奥深くにあるんだよ。 」
「僕の心の中に・・・。 」
「まず、自分が本当に喜ぶこと、好きな事を見つけることだね。 “人より優れていると思えること”とか、”出来ると人からかっこ良いと思われるから頑張ること”、とかじゃなくて、自分自身が本当に幸せだと感じるものの中にこそ、自分自身の秘密が隠れている。 」
おじさんは、にっこりと雄紀の瞳をしばらく見つめて、肩を叩いて休憩室を後にした。




