第二十一章 〜 研究施設の来客 〜
雄紀とヴィッディーは、メッセージを伝えに来た助手を見た。
雄紀は、一口ずつ時間を掛けながら飲んでいた紅茶を一気に飲み干した。
「その人は、いつ来るの? 」
「あ〜・・、今、上で所長と話しているので、すぐ降りて来るんじゃないですか? あ、ミーティングスペースの応接エリアで待つ様に伝えてと、所長が言ってました。 」
「誰だろう? 」
ヴィッディーが、つぶやいた。
ここの研究施設のことは、秘密だった。
もし、アッデス達に知られれば、取りつぶされてしまうばかりか、関わっている人々もただでは済まない。
だから、来客があるのは初めてだ。
いつもの顔ぶれでは無い誰かが、雄紀の仕事場に来る。
しかも、その人に挨拶をし、迎える。
同じ様なことが、過去に何度かあった。
しかし、特に一番近い思い出は、あまり良いものでは無かった。
雄紀は、急に不安になった。
しかし、『所長である、おじさんの許可する人であれば。 』と、雄紀は義務感を抱いた。
しばらくして、入り口のドアが開いた。
おじさんが、先に入って来て入り口を押さえて入り口の方に振り返った。
そこから入って来たのは・・・、サティアだった。
「えっ!? 」
心臓が、一瞬、痛い程に、ドキッとした。
その後も、雄紀には自分の心臓の高速の鼓動が聞こえてきた。
・・いや、違う。
雄紀の世界の、サティアではなく、ジャイナのサティアだ。
雄紀は一瞬見間違えてしまった。
少し、ホッとした。
「何を、そんなに恐れているの・・? 」
「え!? え!? 」
雄紀は、ジャイナに来た時に見た夢を思い出した。
そして、その夢と一緒に、ジャイナに来る前の自分の苦悩を思い出した。
そして、年齢こそ違うけれど、サティアにそっくりな、“サティア”と言う名前の女性は、雄紀が夢の中で、完全に追い詰められた時と全く同じセリフを言っている。
雄紀は、夢の中と同じ様に狼狽えた。
「おいおい、いじめないでくれよ。 」
おじさんが、笑いながら言った。
「別に何てことない質問だと思ったけど? 」
サティアは、つんとした感じに答えた。
「雄紀。 」
実験室に戻ろうとした雄紀を、サティアが呼び止めた。
「あなたは、ここでの研究が楽しい? 」
「はい。 」
「ふうん。 地上の方が太陽が照ってるし、良いと思わない? 」
「いえ。 僕には、こういうところで地道に努力することが性に合っているんです。 」
「ふうん。 」
雄紀は、実験室の方へ駆けて行った。




