第二十章 ~ 光る細胞の秘密 ~
「新着を教えてくれるかね・・? 」
雄紀は、おじさんに、実験と観察の経過の報告をした。
「・・そうか。」
「その、ルミフェリンと、ルミフェラーゼが発光のもとになっているんだね。 」
「はい。 ルミフェリンが遺伝子だけではなく、細胞膜内で、クローニングされて、ルミフェラーゼと言う酵素の、酸化物質の酸素を受けて、あのように発光するようです。 ただ、僕が生活していた世界では、発光生物の発光する細胞の中に、ジアノバクテリアをこれほどの数値で存在するのを見たことがありません。 ヘスーサンの人たちの皮膚の発光に、ジアノバクテリアが関与していると、僕は思っています。 まだ、どの様に関与しているかは分かりませんが・・。 」
「うむ。 分かった。 細胞内での、ジアノバクテリアの動きも培養、観察してくれるか? 」
「もちろんです。 」
「ありがとう。 頼んだよ。 」
早速、雄紀は、ヴィッディー達と ジアノバクテリアを培養するための用意を始めた。
雄紀は、ヴィッディーに話しかけた。
「最近、とっても楽しそうだね。 元々、ヴィッディーは、バイオ系のことが好きなの? 」
「いや。 違うよ。 楽しそうに見えるかい? 」
「はい。 本当は、楽しくないの? 」
「いや。 楽しいよ。 仕事が楽しいって言うよりも・・君と一緒にいると楽しいんだ。 ・・思い出すんだよ。 」
「何を? 」
「ソーハムがいた時のことをさ。 最近、雄紀、似て来たよ。 」
「そんなことないよ。 ソーハムって、カリスマ的なリーダー的存在だったんでしょ。
僕は、内気だし。 こんな風に、地下にこもっているのが一番楽しい・・(笑)。 」
「いや。 違うよ。 ソーハムは、いつも、所謂、“カリスマ的リーダー”をしていたと思うかい? あの、“カリスマ的リーダー”な行動を取る動機になるのは、彼を突き動かしていたものは、今、君がしている様な、地道な努力の結果である根拠があったからなんだよ。 彼は、誰よりも努力家だったんだ。 色んなことを奥の奥まで突き詰めて研究していた。 」
「そうなんだ。 」
雄紀は、すこし、ニンマリ顔になった。
「・・僕が褒めると、ソーハムもよくそんな顔してた!! 」
ヴィッディーは噴出して大笑いした。
雄紀は、ちょっと、きまりが悪くなった。
しかし、ヴィッディーとの、そんなたわいもない会話を心から楽しんでいた。
丁度、お昼の時間が終わるころ、助手の1人が地上から戻って来て、来客があることを2人に伝えた。
その、来客は、雄紀が、その存在を忘れることで、心の安定を取り戻した人への思いを、思い出させることになった。




