しりとりから始まるラブコメ
俺は関口直哉。
今年で中学生だ。
まだ卒業してないので一応小学生だ。
小学生ながらに俺は頭が良い。
そんな俺は今クラスでそれなりに可愛いと言われてる奴と勝負をしている。
拳を振るう喧嘩かと思ったか?
それとも腕相撲とかやってると思ったか?
…甘い、甘い。そんなものやるわけ無いだろ。
い、いや出来ない訳では無い。
ただ女子相手だと勝つに決まってるからやらないだけだ!それでなにで勝負してるって?
それはもちろん…
しりとりだっ!
いや、どうしてこうなった?
――――――――――――――
それはある日の昼休み。
一人でしりとりをしている時だった。
誤解するな。
友達がいない訳ではない。
ただ、作ろうとしないだけだ。
ま、まぁそんな事はどうでもいいが。
だがその日事件は起きた。
いつも通り辞書片手に一人でしりとりをしていた所、天佐井瑠璃がやってきた。
「辞書なんて持ってどうしたの?終わったら貸してくれる?」
と言われたのがきっかけだった。
教室の辞書を借りてるので別にいいが…
「他にもまだあるだろ」
「その辞書がいいから」
なんだコイツ?この辞書に思入れでもあんのか?
「いつ終わる?」
「今日は無理だな」
「じゃあ終わるまで待ってるね!」
…人の話聞いてなかったのか?
まぁ別に俺もこの辞書に思入れがある訳ではないから貸してやってもいいが、取りに行くのが面倒くさい。
…横でじーっと見られるのも気持ち悪いな。
「ほらよ」
時間が勿体ないが、仕方あるまい。
「わぁ〜っ、ありがとう」
そんなにこの辞書好きなのか?
大して変わんないだろうが…
これでもう関わんないと思っていた。
なのに天佐井は毎回昼休みに俺の所に来る。
ちゃんと辞書は変えてるのに…
いつも通り頭の中でしりとりをしていると、
「しりとりしない?」
「は?」
「だって私暇だし。」
勝手にここにいておいて、コイツは何を言ってるんだ?
「じゃあ友達と遊べよ」
「だって今私達しか教室にいないし…」
「外に出れば?」
「外出たくないもん」
「じゃあ本でも読んでろよ」
「本好きじゃない」
「…」
他に何か無いだろうか…まぁほっとけばいいか。
「ねぇーしりとりしようよー」
「…」
「私と話すの嫌?」
「…」
「ねぇお願いー」
「…」
「ちょっとくらい良いでしょ〜?」
「…」
「先生に変なこと言っちゃうよ?」
「…」
うるせぇ…気が散って何(頭の中で)言ったのか忘れるんだが。仕方ない。
「一回だけだぞ」
「やったー!」
そんなに構って欲しかったのか?
「制限時間三十秒な」
「望む所だ!」
「じゃあいくよ?しりとりの『り』から!
り、り…リンパ」
「…」
「あれ〜どうしたの?あと10秒だよ〜?」
ふん、しりとりするとでも思ったか?
時間の無駄だ。
こんなのに勝ち負けにこだわりがないので、何も言わずに負けになればいい。
「三…ニ…一…はいゲームオーバー」
「残念だったな。じゃあな」
「えっ、しりとりしてないじゃん!」
「しただろ」
「何も言ってないじゃん!」
「思いつかなかった」
嘘だけど。
「あと一回!」
「嫌だ。早くどっか行け」
「負けたらなんでもいう事聞くから!」
「興味ない」
「ねぇ最後にあと一回!」
上目遣いで言われても、生憎そこらの男子と違ってそんなものは効かない。鬱陶しいとしか思わない。
「一回だけって言っただろ」
「うっ!でもでも、何も言ってないからあんなのしりとりじゃないよ!」
「しりとりの定義にそんなものない」
「私は納得してない!」
「そんな事知らん。もうすぐ昼休み終わるし早くどっか行け」
「む〜…明日はちゃんとやってね!」
「一回だけって言った」
「じゃあまた明日ね〜」
なんだその友達みたいなノリ。
「二度と来るな」
…と言ったのに毎日毎日構って欲しいと言わんばかりにここに来る。
もちろん逃げた。でも追いかけてくる。
男子トイレにも逃げた。流石に入ってこなかったが男子にお願いをしたのか、すぐに連れ出された。
ストーカーかよ。
まぁでもそんな毎日毎日逃げるのも疲れてきたので諦めた。逃げるのは。
だから無視する事にした。
そしたら今にも泣き出さんとばかりに涙を溜めてたので仕方なくしりとりをする事にした。
ちなみに「しりとりしよう」と言われて一カ月経ってから挑戦を受けた。
結構頑張った方だと思う、俺。
「やったー!言質とったよ!?」
と言って、涙が嘘のように消えた。普通に怖っ。
「負けた方は出来る範囲のお願いにしよう!」
と、自分の身を守る為にそんな事言っていた。
〝出来る範囲〟なら大丈夫だ。
なぜなら出来ないと言って断ればいい。頭良くね?俺。
――――――――――――――
そして今に至る。
天佐井は頭が良いのか知らんが、全国模試で上位争いをしている俺には敵わないだろう。
すぐに終わらせてみせる。
と、意気込んだものの、何故か勝てない。
ずっと俺が負けてる。
コイツもしかして…頭良いのか?
だったら勝ち目なくね?
しかも「勝者のお願いは絶対だよ♪」と言って拒否権がない。
「一緒に遊ぼう」と言われた時はもちろん拒否した。
でも拒否し返されたので家に引きこもったら、なんと、
家にピンポンしてきた。
なんで知ってるのか聞いた所、
「直哉くんと同じ帰り道の人に聞いたよ」
って言われた。プライバシーの侵害では?
しかも母さんも天佐井の味方になってるし。
逃げ場なくね?ピンポンされる前に出かけてもどうせ母さん経由でバレるし。
まぁでも母さんからお小遣い多めに貰えるので良しとしよう。我ながらチョロい。
天佐井は余程しりとりが好きなのか、出かけている時もしりとりをしてくる。
前に「ぷ攻め」をしたら逆に追い詰められたので徐々に徐々にに追い詰めていく事にしている。
結局負けているが。
制限時間があるので考えてるうちに終わってしまう事が多々あった。今更だが後悔している。
でも今日は珍しくまだしりとりは続いている。
「緑黄色野菜」
「インカ帝国」
「…クリアファイル」
「ルネサンス」
「……スイカ」
「狩野永徳」
お気づきだろうか?
そう、今天佐井は歴史や地理に関するものしか言えない。
なのに普通にしりとりしてるくらいのスピードで答えてくる。
俺なんて縛りなんてないのに少し考えているのに。
マジで化け物。
この俺がこんなので負けるか!と意気込んだがまたしても負けた。
「…負けた」
「やったー!また私の勝ちだね!ほら、早くアイス食べよ♪」
「はぁ…いいけど。ところで、聞きたいことがあるんだけど」
「いいよ?なんでも聞いて!」
「じゃあ…天佐井ってなんでそんなに色々知ってるんだよ」
「妬み?」
「ちげーよ。純粋になんでそんなに知ってるのか気になるんだよ。塾に行ってもそんなにはなんないだろ?」
「…引かないでくれる?」
「絶対にとは言えないが、まぁ」
「そっか、、、私怒られるんだよね」
「えっ、誰に?」
「家の先生から」
家庭教師ということか。
「それ大丈夫か?」
「うん、まぁ。」
そして天佐井は続けて言った。
なんでも天佐井は家が少し良い所のお嬢様らしく、小さい頃から英才教育を受けていたらしい。
なので小学生ながらに既に高校卒業くらいまで勉強を進めているらしい。ちなみに運動は壊滅的だ。
また、毎日テストがあり、そこで二問間違えると怒られるらしい。
親はそこまで気にしていないらしく、楽しく出来ていれば良いという感じらしい。
それなら親に相談しても良いとは思うが、ここまでやってきて期待をかけられているので言いづらいとのこと。
ただ、日曜日だけ休息日らしい。
まぁ先生からは休息日では無く今までの所を復習しろという意味だろうと言っていた。
「そっか、苦労してんだな」
「うーん、それが当たり前の生活だからそこまで憎く思ったりはしないかな?」
「そうか…俺は好きで勉強してるけど、天佐井は好きでやってるのか?」
「正直言うと辛いよ?こんな事言うと友達いなくなるし。私も皆と遊んだりしたいよ…ってごめんね、なんか空気悪くしちゃったよね!しりとりしよっか」
なんか事あるごとにしりとりさせようとするな…
「なぁ天佐井」
「?」
「いや、その、しりとりに思い出とかあんのか?
最初に会った時もすごいさせようとしてきたし」
「えっ?あー、思い出っていうか…私、先生によくしりとりに付き合わされるんだけど、そこでよく負けてるから誰かに勝ちたくて」
「はぁ?そんな理由で俺付き合わされたのか?」
「うん、でも直哉くん良い感じに強いから楽しいんだ」
「そうかよ…」
とかなんとか言ってたらすっかり暗くなってきた。
「クロス…これで最後な」
「ス……ス…」
ん?どうしたんだ?なんか顔が赤いんだが。
こんな事初めてじゃないか?
「どうした?体調でも悪いのか?」
「すき」
「…」
は?ちょっと待て。
今告白されたのか?それとも言葉として言っただけか?
顔も赤いしマジの告白?
「…焼き」
「はっ?」
「すき焼きだよ?あっ、もしかして告白すると思った?
残念だったね?(ニヤニヤ」
くそ、罠だったか。
「ふんっ。お前みたいな奴好きじゃねーよ」
「ふーん、そっかそっか〜(ニヤニヤ」
今すぐその自慢の顔を殴りたい。
「…置いていくぞ」
「あれ?続けないの?」
「…俺はお前が嫌いだ」
「照れなくても良いんだよ?」
「…」スタスタ
「わっ、ちょっと待ってよー」
天佐井がそんな事言うからだ。俺のせいではない。
――――――――――――――
数年後…
「ねぇ直哉くん」
「ん?なんだ?」
「しりとりしない?」
「おう、いいぞ。今回こそ絶対勝ってやる」
「じゃあ始めるよ?…好き」
「…」
「あれ?もしかして彼女から愛の囁きされたと思った?残念だけどしりとりとして言ったよ?」
「…」
そう、お気づきだろうが、俺は瑠璃と付き合っている。
しりとりから始まった関係で、最初は冷たく当たっていたが、彼女と過ごすうちに真面目な部分に惹かれて俺から告白した。
瑠璃から告白されたじゃないかって?
あれは断じて告白ではない。あれは絶対揶揄いの言葉だ。
まぁその告白紛いのものをされてから数カ月後、瑠璃は親に今までの事を話し、今までの辛い生活とはおさらばした。
クビになった家庭教師は最後にネチネチと色々言ってきたそうだが両親がお金で黙らせたそうな。
金持ちはやる事が違うな…
そんな自由の生活を手に入れた瑠璃だが、元から頭の出来が違うのか、今高三だが瑠璃は他の人と比べて全く勉強していない。
勿論大学には行く。
ただ学校は推薦で海外の大学だ。
俺は同じ大学に行く為に瑠璃から色々と勉強を教えてもらっている。
「…君が一番好きだ」
「えっ、ちょっ、急にそんな事言わないでよ〜…」
「さっきのお返しだ」
俺も無事に瑠璃と同じ大学に入学し、その大学ではラブラブの日本人カップルとして有名になってしまった。
――――――――――――――
「ところで、なんで最初に会った時あんなに辞書に拘ってたの?」
「秘密ー」
(言える訳ないじゃん、あの頃からずっと好きだったなんて)ボソッ
「なんて?」
「なんでもなーい」
高校生では無く、小学生のお話でしたがどうでしたか?
ここまでお読みいただきありがとうございます!