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第2回「SAKURA/いきものがかり」
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赤髪のLaëtitia
今年もこの季節がやってきた。
窓から見えるその風景は、とても幻想的で妖しくて、儚げで少し寂しくて……。
一面の桜吹雪に包まれるその時は、単純に“綺麗”の一言じゃ済ませられなくて――。
それをみんなが知っている。
『あやかし桜』
そう呼ばれていた。
この沿線に桜の木は一本も生えていない。
「現世常世のその想い 紡ぎ繋がれ天狐の君 散れや踊れやあやかし桜」
古くからそう刻まれた石碑があった。
隣の車両から、誰かが泣く声がした。
分かるよ、泣いちゃうよね。
なにせ私もかつて、ああ泣いたひとりだったから。
二度とは会えぬその人と、想いが叶える束の間の再会。
どうか、どうか、その流した涙は、温かいものであって欲しい。
そう思いながら、あの夕焼け空に吸い込まれていく花びらを、私はじっと見上げていた。
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