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同級生が恋愛鉄壁な理由

「すっかり時間が掛かったな」

「ごめん。私がアルバム見てたせいで」

「いいよ。手伝ってもらっただけありがたいし」


 午前中は先にボードゲームで遊んだりするつもりだったのだから、しなくても良い片づけを手伝ってくれたことに感謝さえすれど、何か不満などあるわけがない。


「ご飯どうする?」

「今から作るわけにはいかないもんな」


 問題は、昼食をどうするかと言うことだ。

 今から作るよりもおやつを待っていた方がいいくらいだろう。


 十二時過ぎまでには終わる予定だったが、時刻はもう一時を過ぎたところ。

 おかげで、部屋は綺麗に片付き、午前中のあの惨状はどこかへ消え去っていた。


 ただ、今日はもう料理を教えて貰うのは無理そうだ。


「よし、こういう時のためにカップ麺とか冷凍食品を置いてあるからな。それで良ければどうだ?」

「うん。たまにはいいかも」


 料理が面倒くさ過ぎて、ただ単に買い置きしてあった物が残っているだけだが役に立った。

 彼は早速、冷蔵庫からいくつかの冷凍食品を取り出し、その横にある棚からカップ麺を持ち出してくる。

 

「どれがいい?」

「うーん。全部健康に悪そう」


 から揚げ、チャーハン、エビチリ、カップラーメンなどと、見事にカロリーが高そうな中華料理ばかりだ。

 ダイニングテーブルに並べられた面々に対する、率直な感想を真白は述べる。


「俺は、カップ麺にするわ。先にお湯を入れてるから、選んでて良いぞ」

「ううん。私もカップ麺にする」


 言って真白が手にしたのは、大盛肉マシ醤油ラーメンと書かれた大ボリュームのカップ麺だった。


         # # #

 

 二人揃ってカップ麺にお湯を注ぎ、三分待ってようやくの思いで食事にありつく。


「美味しい」

「そりゃ、良かった」


 一口、口を付けた真白が驚いたように言った。

 およそ、ボリュームだけで味はぱっとしないとでも思っていたのだろう。


 だが、総司の部屋にある物は基本的に彼が厳選したもので、不味いものは一つもないと自負しているくらいだ。

 どれもおすすめの逸品である。


「極夜はあんまり、こういうの食べ無さそうだもんな」

「うん。たまにワクドとかKECも食べるけど、カップ麺はそれほど」

「けど、かなり美味いだろ?」

「これじゃ、確かに料理をしなくても良いって思いそう」

「ようやく分かってくれたか」


 お湯を注いで、三分待つだけなのだ。しかも、かなりの美味。

 真白も料理をしなかった総司の気持ちを分かってくれたらしい。


「そうだ、聞きたいことが一つだけあったんだ」

「何?」


 食べながら、あることを思い出して総司は話しかけた。

 真白はそのまま麺をすすりながら、耳を傾ける。


「クラスでも、というか学校で、色んな男子から告白されたりしてるだろ?」

「うん」

「試しに話だけ聞いてみたり、付き合ってみたりはしないのか?」


 彼女は異性から人気のある少女だ。

 クラスでも男子生徒は彼女の気を引こうとしている様子を何度も見かけるし、告白のために教室まで呼び出しに来る男子生徒も見たことがある。

 

 でも、彼女は誰とも付き合う素振りを見せない。

 どうして、真白は近づいて来る男子を寄せ付けないのか。総司は以前から気になっていたのだ。


「なんで?」


 真白は不思議そうに首を傾げる。

 総司がなぜそんなことを言うのだろうかと、本気で思っている様子だった。 


「どうしてって、そりゃ、もしかしたら、趣味を理解してくれる奴がいるかもしれないだろ?」

「そもそも、好きでもない人と付き合ってみるのは嫌」


 嫌そうな表情をして彼女は答える。

 なんなら、怖いくらいだ。本当に嫌悪感があるのだろう。


 告白されて、相手を好きでなくとも、嫌でなければとりあえず付き合ってみる者もいるが、中にはお互いに好きでもないと付き合いたくないと思う者もいるも当然である。

 真白は後者らしかった。


「話だけでも嫌なのか?」

「大体の人は多分、馬鹿にするだけか、興味無さそうに苦笑いするだけだから、私はもう殆ど諦めてる。この前の食べに行った時も誰とも話をしなかったのはそう言う理由」

「そうだったのか」


 真白と仲良くなろうとして、近づいて来る者は多くても、食べに行ったり遊びに行ったりする場所では、楽しさ優先だ。


 彼女といても楽しくなければ、それは離れて行っても仕方がない。

 先日の謎が完全に解けた。


「私は誰か一人だけでも、こうやって趣味の話をしたり、遊んだりするだけでいい。クラスとか学校では司さんだけ。だからあなたは貴重な唯一無二の人材。所謂、友達」

「俺って、そんな風に見られてたのか? てっきり、怪我をしたことに負い目を感じてるのかと」

「初めはそうだった。でも、一緒に遊んで嫌な人とはこうやってご飯は食べない」

「それは言えてる」


 料理を教えてくれるのも、義務感や優しさから来る、真白なりの接し方だと思っていたが、どうやらその期間はすでに過ぎていたようだ。

 今は、すっかり友達として認められているらしかった。


「質問はそれだけ?」

「ああ。変なこと聞いて悪かったな」

「ん。麺が伸びるから早く食べよう」


 気になっていたことも解消したし、真白が自分の事をどう思っているのかも知ることが出来た。

 

 それに、


(彼女と趣味を共有できるのは俺だけか)


 と、彼女のように可愛くて人気もある少女から、友達だろうが何であろうが唯一と思われるのはとても優越感があった。


 同時に自分だけは彼女を裏切らないように、ずっと友人でいなければならないとも思った。

面白い、続きを読みたいと思って頂けたら、ブックマーク、☆☆☆☆☆に色を塗って評価などをして頂ければ、大変嬉しく思うと同時に励みになります。


今回は予定通り六時頃に投稿できてほっとしています。

次話は夜の九時過ぎに投稿する予定ですので、よろしくお願いいたします。

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