お料理の師匠はお片付けの師匠でもありました
「これ、どうしたの?」
日曜日、また、料理を教えに来た真白は総司の部屋に入るなり、その惨状を目にして感想を口にする。
リアクションこそ取らないものの、その瞳はええぇと言いたげな様子だった。
それもそのはずだ。
今、彼の部屋は馬鹿みたいに散らかっていた。
「ちょっと、片付けをと思って色々やってたんだが、案外に物が多くて全部引っ張り出してたらこうなった」
家事において、総司は料理以外ならまともに出来るタイプの人間だ。
掃除なども始めたら止まらないし、衣類も節約の為、二、三日は溜め込むがその度しっかり洗濯をする。
だが、どれも一人暮らしを始めてからやり出したことなので、効率良く出来ていないのだ。
その為、今やっている片付けも、ただ物を散らかしているだけになっていた。
「これじゃ、料理出来ないし、ボードゲームも出来ない」
「悪い。本当は来るまでに終わらせるはずだったんだけど」
「おっけー。じゃあ、掃除もやり方教えるから」
「お願いします」
掃除を教えることは、彼女の役割でもないだろうに。
それでも、真白は仕方ないといった風に申し出てくれる。
彼は申し訳なくなって、丁寧な口調になった。
# # #
「物を片付ける基本は、いらないものとそうでないものを分けること。掃除するからといって、違う部屋の物を別の場所に持ってこないこと。これが基本」
「俺、全部一か所に纏めてから仕分けしようとしてたからなぁ」
片付けるのだからとりあえず一旦、全部移動させようとしていた彼の行動は、間違いだとはっきり指摘される。
それに、リビング、寝室、キッチン、洗面所にあった物を全てごちゃ混ぜにしているのだから、片付けの効率も悪くなるのは当たり前だった。
「これで、捨てるものは全部?」
「ああ、基本的に目に付くゴミは粗方、片付いたと思う」
「ん。じゃ、次は軽く掃除してから元の場所に戻そう」
「了解だ」
片付けを始めてから三十分、現在も物がその辺りに置かれている状況は変わらないが、真白が片付けを手伝い始めてからは統一感がある。
リビング、寝室、キッチン、洗面所とグループごとに分けられて纏まっており、散らかっているという感じは無くなっていた。
「それにしても全然無い」
「何が?」
家具を拭いたり、埃を払っていると真白が唐突に呟いた。
「えろいやつ」
「……何を言うかと思えば。そんなものはこの部屋にない」
彼女がそういうことを口にするとは全く微塵も思わなかったので、総司はびっくりしてしまったが彼はきっぱりと言い切った。
「お前は見たいのか?」
「大丈夫。スマホがあるから」
「そんな意味で言ったわけじゃないんだが。まぁいいや。さっさと片付けを終わらせてしまおう」
真白もそういうようなコンテンツを見るのか、と思いつつも総司は思考から排除する。
同じ部屋で作業するのだから精神衛生上良くないし、何がセクハラに当たるのか分からない。
それに、変なボロが出そうなので話を逸らした。
# # #
「あ、これって」
「なんだ? お宝でも見つけたか?」
「かもしれない」
引き続き掃除をしていると、真白が部屋の隅で何かを見つけたらしい。
この部屋で金になる物などほとんどないはずだが、宝とは一体何だろうか。
「小学校のアルバムか。引っ越した際に持って来たんだな」
「見ていい?」
「別に面白くないと思うぞ。俺、それほど目立つ人間じゃなかったから、あんまり映ってないし」
「大丈夫、こういうのは他人が見るから面白い」
「極夜がそれでいいなら好きに見てくれ」
「うん」
真白は楽しそうに、ペラペラとアルバムのページをめくっていく。
「もしかして、これが司さん?」
何ページかめくって、ようやく彼の写真を見つけたようだ。
「おう。てか、この時の俺、目つき悪いな」
彼女が見つけたのは、教師と並んで不貞腐れてるような顔をした総司だった。
「なんでこんな顔してるの?」
「しらん。なんでだろうな」
「でも、ちょっと、可愛い」
「そうかぁ? 俺にはクソガキにしか見えん」
総司からすれば、可愛げのない子供にしか見えないが、彼女は違うらしい。
真白の口元と目元が緩んでいる。
女子と男子では感覚が違うのかもしれない。
「徒競走で1位取ってる。足が早かったの?」
「そうでもないと思うけど。その時は既に水泳とかしてたからな、身体能力は高かったのかもな」
「へぇ」
真白が総司の写真を見つける度に尋ねて来るので、彼はその時の事を思い出しながら説明をする。
「こっちは、文化祭?」
「それは、文化祭が終わった後の片付けの時の写真だな。っておい! こんなことしてる場合じゃないぞ!」
「あ、そうだった。つい面白くて」
二人は掃除や片付けをしている最中だ。
時計を確認すると、アルバムを見つけてからすでに三十分ほど経過していた。
漫画を見つけて読み耽ったりアルバムを開いたりする、片付けや掃除のあるあるを実行してしまっていた。
「こうならないようにするのも掃除の基本。今のは悪いお手本。おっけー?」
「フーン、ベンキョウニナルナァ」
片付けや掃除の極意を教えてくれていた、師匠役の真白が失態を誤魔化そうとしているが、総司は棒読みで返答した。
「わ、悪いお手本も見せたところで、片付けを再開しよう」
真白は総司から目を背けるようにして作業を再開するが、その頬は赤かった。
可愛らしい反応である。
そんな彼女に総司は苦笑しながら、一緒に片付けをするのだった。
正午までに投稿する予定でしたが、出かけていて投稿を忘れていましたw
また、午後は六時頃までに投稿できればと思っていますので、そちらもよろしくお願いいたします。
面白い、続きを読みたいと思って頂けたら、ブックマーク、☆☆☆☆☆に色を塗って評価などをして頂ければ、大変嬉しく思うと同時に励みになります。




