同級生と出店めぐり
出かける準備を整えた二人は並んで住宅地を歩いていた。
夕暮れの前だと言うのに、猛暑の影響かまとわりつく湿気が気になるくらいまだ暑い。
一方の真白は涼やかな様子で隣を歩いていた。浴衣は涼しそうだ。
帯に差している団扇を羨ましく思いながらいると、こちらを向いた真白がニヤッとした。
「総司くん、浴衣が気になる? 下は別に裸じゃないよ」
「知ってるっての。そんなの昔の話だろ」
「でも前に五十嵐さんに聞いたら何も着てないって」
「あいつは別だ。五十嵐はズレてるとこがあるからな。にしても、都市伝説じゃなかったとは」
「五十嵐さんのこと想像した? 綺麗な人だけど人のもの取ったら泥棒。駄目だよ」
「してないし。友達の彼女に懸想なんて以ての外だろ」
五十嵐が着物の下に何も来ていないことに驚いていると、むっとしたような表情で真白が睨んできた。
総司にもちろんそんなつもりは無い。まぁ、健全な青少年なので想像しなかったわけではないが。
「二人とバイトを代わってあげたら良かったかな」
「飛角なんかは露骨に羨ましそうにしてたもんな」
「うん。今からでも遅くない?」
「あいつらの事だから断られるって」
「それもそっか」
飛角と雪菜は交際を始めてから長くない。お互いに浴衣で縁日デートをしたかっただろう。
そう思うと付き合っている訳でもない総司と真白は、二人で遊びに出かけているのが申し訳なくなってきた。
なんなら一度シフトの調整を申し出てみたが、二人揃って「馬には蹴られたくない」とのことだった。
どういう意味か分からなかったが、総司と真白も楽しみにしていたことなのでありがたくこうして出かけられていた。
「おっし、出店がそろそろ見えてきた。あいつらには悪いけど満喫してやろうか」
「だね。焼きそば、たこ焼き、とうもろこし、イカ焼き、フランクフルト、りんご飴、チョコバナナ、型抜きどれ食べようかな」
「型抜き食べ物判定かよ」
「あれ、めちゃくちゃ美味しいよ」
縁日はついつい食べ物に目が行きがちで、真白も指折りしながらわくわくとしている。
型抜きを食べ物判定しているのがいかにも彼女らしい。
型抜きをバリバリ食べている真白を想像して、総司は軽く吹き出した。
そんな風に和気藹々と出店を冷やかすように見て回る。
# # #
「金魚って美味しいらしいよ」
手始めに目に付いた金魚すくいから遊んでみることになった。
ポイを持ち意中の金魚に狙いを定めていると、隣で真白がぽつりとギョッとするようなことを言い出す。
「金魚すくいやる前にそんなこと言うなよ。食べる目的でやってるみたいじゃねぇか」
「冗談冗談。流石に食べないから」
型抜きが食べ物に判定される彼女のことだ。冗談に思えない。
真白は総司のリアクションが楽しいのか、くすくすと笑いながら金魚を掬っている。
なんだか今日の真白は機嫌がいいと言うか、テンションが高めだった。
「だーめだ! 全然掬えん」
「もう破っちゃったんだ」
「あのでかいヤツヤバいぞ。一瞬で三百円が溶けちまった」
「あんなのとるやつじゃない」
水槽の中でも1番目立つ大きな金魚を狙ってみたが、ものの見事にポイが破れてしまった。
無惨な姿になったポイをみて総司はなんだかとても切ない気持ちになる。
横で快調に金魚を掬っていた真白には呆れられた。
「だって、でかい金魚って惹かれるだろ?」
「総司くんてたまに子供みたいになるよね」
「子供っていうか、でかいとかカッコイイのに惹かれるのは男の性みたいなもんなんだよ」
「ふぅん」
総司がそうやって説明しても、大きな金魚の魅力は全く理解されなかった。
飛角も同じこと言うぞと思いながらも、黙って真白が金魚を掬う様子を見守った。
「たくさん取ったな」
「こういうの得意だから。まぁ飼うつもりは無いから戻すけど、総司くんは欲しい?」
「欲しいのは欲しいけど、まめに世話してやれる自信ないしいいかな」
大体、八匹程度掬ったところだろうか。そこでようやく真白のポイが破れた。
ボウルには所狭しと金魚たちが元気いっぱいに泳いでいる。
「じゃあ、食べる? 世話しなくていいし」
「だから、食べねぇよ!?」
冗談を言ったりそれにツッコミつつ、金魚は水槽に戻して二人はその場から離れた。
「次、何しよっか」
「その前になんか食べないか? 腹が減ってきたし」
夜店が並ぶ通りを物色していると、漂ってくる匂いの所為で自然とお腹が空いてくる。
遊ぶのもいいが縁日と言ったら食べ歩きだろう。総司は色んな店に目移りさせながら歩いていた。
「いいよ。何がいい?」
「折角、二人いるんだし好きなやつを買って半分ずつにするか」
「賛成。どうせなら色々なの食べたいみたいしね」
同じのを買うより色々買ってきて分ける方がお祭りを楽しめるだろう。総司の意見に真白が文句なしと頷く。
因みに買うのはメインでたこ焼きと唐揚げ、甘味枠でカステラとなった。
「じゃ、たこ焼き買ってくる」
「あ、待ってくれ」
「ん。なに?」
効率を考えてのことだろう、真白が二手に別れようとするが、総司は彼女の手を掴んで引き留める。
こてんと不思議そうに真白は首を傾げる。
「その、なんていうか……真白が一人になったらまたプールの時みたいになるかもしれないだろ」
同じ轍を踏むつもりはない。プールでの経験を思い出して総司は真白を引き留めた。
楽しい時間に水を差されたくないし、男子としてそういうところにも気を配るべきだろう。
「あ、そっか」
「それに人が多いから合流するのも大変だしな」
総司の気遣いが伝わったようで、不思議そうな表情から一転して彼女は柔らかい笑みを浮かべていた。
「そういうところは大人っぽいね。これがギャップ萌えと言うやつだね」
「そんなこと初めて言われたな」
「そう? 必要な時に思い切って手を掴んでくるのとかなんか大人って感じがするけど」
「ああ、悪い。ずっと掴みっぱなしだったな」
そう言われて、総司は自分が彼女の手を握り続けていたことに気付き慌てて手を離す。
「ふふっ。別にいい。人が多くてはぐれそうだからこのまま繋ごっか」
手を離したと思ったら束の間の空白の後、真白からそう言われて手を握られた。
「そういうことなら。ナンパ防止にもなるしな」
「じゃあ行こっか」
若干、ぎゅうっと握られながら真白に手を引かれる形でついて行く。
そこからはとくに何を言うでもなく、互いに何度か視線を合わせたり逸らしたりと落ち着かない中、目当ての店まで人の流れに乗った。
これほどの美少女を連れて歩いているのだ。その間、周囲から視線を集めたのは言うまでもない。
右手の柔らかな感触とちょっとした優越感を覚えつつも、煩悩をかき消す様に総司は頭を振って自制心を働かせるのだった。
前回投稿から2ヶ月ぶりという、あまりにもの適当さ加減に自分に呆れておりますw
最新話の投稿をお待ちいただいていた読者の皆様には、大変申し訳なく思っています。
必ず完結させるというお約束は以前のあとがきにて記した通り、果たさせていただきますのでご安心ください。
また、投稿が止まっていたのは単純に作品のプロットの練り直しとモチベーションの低下によるものです。
私の物書きとしての未熟さを痛感しておりますが、最後まで書き切る予定ですので、今後ともよろしくお願い致しますm(_ _)m




