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もう一回

 余計な一幕があったものの、総司と真白はもう一度ウォータースライダーの列に再度並んでいた。

 ただ、一回目は和気藹々と二人で並んでいたのだが、今回はちょっとだけぎこちない雰囲気が漂っていた。


「真白? ずっと黙ってるけど大丈夫か?」

「大丈夫。ちょっと考え事してただけ」

「考え事?」

「さ、さっきの、ことで……一緒にウォータ……ダーに……」


 昨日の事もあって真白の体調を気遣ってみれば、彼女は歯切れ悪く答えるばかりで、最後の方は全く聞こえなかった。


「さっきの? ああ、ナンパの事か? あんなの気にしなくていいぞ」

「あ、いやそうじゃなくて……!」

「違うのか」

「ん。でも大したことじゃないから気にしなくていい」


 総司はてっきりナンパに対して、真白が強い言葉を使ったことを気にしているように思ったのだがどうも違うようだ。

 いつもの彼女からは想像できない言葉だったし、真白は心根の優しい少女だから冷静になってから自分を顧みていてもおかしくない。


 よく彼女の様子を窺うと落ち込んでいるというよりは、微妙に顔色を赤くさせているし、どうにもそうではないらしい。


 深刻な事ではなさそうなので、総司はとりあえず彼女の言う通り気にしないでおくことにした。

 そうしながら順番待ちをしていると頂上に着いた。


「総司くん先に滑る? 私が先に行ったらまた変な事になっても嫌だし」

「確かにそうだな」


 二度目は流石に無いとは思うが、また真白が一人になったら同じことが起こるかもしれない。

 折角の楽しいプールが邪魔されても煩わしい。


 先に総司が待っている方が彼女を一人にしなくて済むだろう。

 係員に「次に方どうぞ」と呼ばれたので、総司は先に滑り口まで進むのだが、隣で二人一緒に滑って行く男女を目にする。


 そこで彼は一回目の滑る前のやり取りを思い出した。


「真白、一緒に滑るか?」

「え?」

「一回目の時、どうするか迷ってたろ? お前さえ良ければだけどな。一緒に降りて行けば変なのに絡まれることも無いだろうし」


 総司はすべる直前、照れながら真白に提案してみる。

 かなり、恥ずかしいのだが彼女が不安に思っているのだし、それを解消できるなら大したことのない我慢の範疇だ。


 ただし、友人同士ですることではないから、下心と捉えられるかもしれない。

 微妙に撤回したくなる気持ちを押し殺して彼は真白の回答を待った。



「さっきは気付かなかったくせに……今はずるい」

「やっぱ嫌か?」


 真白は少しばかり拗ねたような面持ちの顔を逸らしながらぶつぶつと言う。

 

「ううん、そんなことない。総司くんがそう言うなら、い、一緒に滑ろっか」

「おう」


 かぶりを振った真白は、おずおずと総司の傍に寄って滑り口の近くに立つ。

 すると、係員が丁寧に滑り方を教えてくれる。


 基本は開いた足の間に座って、後ろから抱き着く形で滑り降りるらしい。

 先に総司が滑り口に腰掛け、真白がその両足の間に収まる。


 その時、彼は恥ずかしすぎてお腹に手を回すのを躊躇って、彼女の肩の方から鎖骨辺りに手を回そうとしたが、係員から「カノジョさんの首が締まっちゃいますよ」と笑われてもっと恥ずかしくなった。


「総司くん、私を殺す気だったの?」

「す、すまん」

「ふふっ。別に遠慮しなくていいから」


 総司が躊躇ったことは見抜かれていたらしい。

 目を細めながら真白がくすくすと笑う。

 

 彼は緊張しながら真白の腰から手を伸ばし、お腹のあたりでホールドする。

 分かっていたことだが、その身体の柔らかさと塩素臭に混じった仄かな甘い香りに鼻孔がくすぐられた。


 それに真白の膨らみの主張を微かに腕に感じる。

 意識をしたら色々と不味いことになると、彼は煩悩を振り払うように首をブンブンと振った。


「思ってたより恥ずかしい……ね」

「悪いな。俺なんかで」


 総司は彼女が自分と一緒に滑ることを受け入れたのは、先の事があったからだと思っている。

 だから、自分に抱き着かれるのは嫌だとは思わなくとも、嬉しい事ではないだろうと彼女に申し訳なく思ってそう言った。


「そ、そんなことないっ! だって――――――」


 けれど彼女は、ばっ! と振り返り強く否定する。

 続けて真白が何かを言うのだが、そのタイミングで後ろにいた係員に「行きますよ!」と背中を押され、途中からは周りの声や水飛沫などなどに邪魔されて聞こえなかった。




「一人の時より、スピードが速かったね」

「重くなると速くなるらしいな。それより、滑る前に何言ってたんだ?」

「き、聞こえてなかったなら内緒にする!」


 滑り降りてからスライダーから離れつつ、総司は聞き逃したことを真白に尋ねるが彼女は答えてくれなかった。


 流石に二連続のスライダーと真白と一緒に滑ったおかげで、体力と気力がゴリゴリと削られた感じがする。

 総司は気になりつつも、真白を伴ってプールを上がろうとすることにした。


「真白? 裾を掴まれると歩きにくいんだけど?」

「ご、ごめん……!」


 だが、ラッシュガードの裾を真白にちょんと摘ままれる。今日、二回目の真白のその行為に彼は戸惑うばかりだった。


 一方で彼女はそう謝るものの未だ離してはくれなかった。

 彼が真白の様子を伺ってみると、微妙に赤らんだ頬で俯いている。


「……あのね。今度は後ろがいい」

「あー、もう一回滑りたいのか?」


 やや目線を下げながら真白は少ない言葉数で総司に伝える。

 一瞬、何の事だろうと思ったが、総司はすぐに察して彼女がもう一度ウォータースライダーを滑りたいのだと理解する。


「だ、駄目?」

「いや、いいけど」


 承諾も断りもしなかった総司に、真白は懇願するように上目づかいで短く言うのだが、そんな風にされると断りづらい。

 反射的に総司は頷いた。


 ただ、よく考えるとさっきでさえ接触がそれなりだったのに、真白が後ろになって滑ると言う事はおそらくはそれ以上になる。

 総司は一体何の修行だ、と思いながら「ああ、俺の理性か」と勝手に自己完結しているあたり相当疲れていた。


「総司くん、大丈夫?」

「あ、ああ。問題ない」

「ん。行こう。私は首は絞めないから安心して」


 真白がニコリとしながら冗談を言えば、総司の手を引き三度ウォータースライダー列を目指す。


 並んでいる間に脳裏に色々な事が駆け巡ったが、総司はそこから先の事をあまり覚えていない。

 いくつか覚えているのは、背中越しに感じた真白の一番柔らかな部分の感触。

 それに真白から帰り際に「また来ようね」とはにかみながら言われたことだろうか。


 そうやって、真白に翻弄されながらプールでの一日が過ぎていった。

二月って二回しか投稿してないじゃんと気付き愕然としております。

色々言い訳をしたいのですが、その辺はまた活動報告にでも載せておきます。


それと、一つご報告がございます。

本作品とは関係ないのですが、実は本日短編作品を投稿しております。

下記に作品のURLを掲載しておりますので、良ければご一読いただければ幸いです。


https://ncode.syosetu.com/n8674gt/

お隣の美少女と弱みを握り合えば仲良くなれるらしい件


というわけで、プール編は終わりです。

次回からは少し閑話休題的な話を挟みつつ、夏休み編クラマックスへ……となる感じでございます。


出来るだけ、頑張って投稿いたしますので今後ともよろしくお願いいたします。

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