美少女にはままあること
総司はプールサイドに上がると、真白と約束した通りスライダーの上り口を目指す。
すると、その手前で真白は見知らぬ男二人に捕まっていた。
(しまった。うっかりしてた……!)
僅かに離れた隙にナンパに遭うのだからやっぱり美人とは大変なものである。
遠目からでも真白は不機嫌な表情をしている。
溜息を付いた総司はサングラスを掛けラッシュガードのチャックを下す。
そうすると、すぐにその足を速めて真白の方へと歩いて行った。
「真白、どうしたんだ。トラブルか?」
総司はわざとらしくトラブルの四文字の部分を強調して言った。
彼の助けに真白は強張らせていた表情を緩める。
一方の男たちは、ナンパに横やりを入れた総司を見るなりぎょっとしていた。
彼はサングラスを掛けていて、その体は引き締まっている。
しかも、美容室に行ったと言えど髪色は完全に黒に戻っているわけではなく、よく見ればうっすらと茶色掛かっていてどうみても大人しそうな人間には見えない。
かといって輩かと言えばそうでもないのだが。
「彼女、俺の連れなんだよ」
だから分かるよな? と圧を掛けながら彼は口にする。
しかし、それがあまり良くなかったようだ。
「んだよ! いかついな」
「ほんとそれ。彼女みたいな清楚な女の子とは似合ってないよな」
彼らをよく観察してみると、総司たちと同じように高校生っぽかった。
これが大学生以上の大人なら普通は引き下がる。
しかし、まだ精神的に幼い彼らは敵意を前にすると反抗せずにいられなかったらしい。
総司を貶し始めた。
「ね、君もこんなイキってる男より、俺らの方が良いと思わない?」
「俺たちはナンパ相手にいきなり怒ったりしないもんな」
「どうせ自分勝手な性格だったりするっぽいし?」
「こんな奴といたら趣味悪く思われちゃうよ?」
言ってくれる。
確かにサングラスを掛けて、語気を強めた話し方をするのだからイキってると思われるのは仕方がない。
けれども、どう考えても彼らと真白が釣り合うなどありえないだろう。
それに真白の好みがどうとか聞いていて腹が立つ。
どうにかして、穏便に退散させようと彼は考えていると、真白が総司の腕を取って抱き着いてきた。
すると、
「私が誰を好きになるかは勝手。悪いけどあなたたちは嫌。不快。もう話しかけてこないで」
真白ははっきりと態度を示し、厳しい言葉を並べ立てる。
人の悪口を言ったり、誰に対しても否定的にならない彼女にしては珍しい。
本気で嫌がっているらしかった。
「そ、そこまで言われる筋合いないって」
「だよな」
まだ、彼らは食い下がろうとする。
「総司くん早くスライダーに行こ」
「あ、ああ」
完璧なまでの無視だった。
真白はまるで何も聞こえていないかのように、彼らを無視して総司の手を引いて行く。
総司は彼らが気になってそちらを振り向くと、呆然とした様子で棒立ちしているだけだった。
(えげつねぇ。女子こわっ)
一連のあまりにも無慈悲な真白の反撃に総司は、戦々恐々としながらその後ろを付いて行くだけだった。
「ごめん。勝手に抱き着いて」
「ああ、いやそれは気にするな。俺の方こそ事を大きくしそうだったし申し訳ないと思ってる」
スライダーの列に並ぶと真白がぱっと腕を離し謝る。
かなり大胆な行動だったが、あの状況では有効な手段だ。
何一つ責められることなどないし、むしろ役得とまで思っているくらいである。
「あと、別にす、好きとかそういうのも……」
「分かってるって」
恋愛感情を誤解されていないか気にしたのだろうが、これくらいで総司も勘違いをしたりしない。
彼女がナンパを撃退するためについて出た言葉だったと分かり切っている。
「で、でも別に好みじゃないとかじゃないから」
誤解されるのは困るが、総司の事を拒否していると思われるのも嫌だったよう。
真白はきゅっと袖口を握りもじもじとしながらそう付け加えた。
(そういうことを言うから、勘違いしそうになるんだけどなぁ)
目の前で顔を赤くさせている少女を見ながら、総司はそんな感想を抱く。
水着姿の美少女と一緒にいるだけでもドキドキとするのに、そんな言動をされるとどうしても鼓動が早くなってしまう。
「大丈夫だ。俺は基本的に人から好かれることも無いが、嫌われていることも無いつもりだからな」
「ふふっ。なにそれ」
上手く返す言葉が見つからなくて、総司が実際に思っていることを率直に口にすれば真白が小さく笑った。
次回プール回ラストです。
ただ、実はまだ水着回があったりなかったり未定ではありますがもう少しの間、夏休み編をお楽しみください。
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