彼女の異変、そしてプールへ
プールに行く日の前日。
午前中に美容室へ行って来た総司はようやく髪を元に戻していた。
「誰なんや、お前は?」
「えっとぉ、どなたなのでしょう?」
「あははっ! ほんとに誰だろうね」
「お前ら……」
けれども美容室を紹介してくれた一花にお礼を言いに管理室を伺えば、そこに居合わせた飛角と雪菜を含めた三人に困惑される。
それは、目の前にいる人物を本当に総司なのかと疑ってしまうほど彼の髪は変貌を遂げていたからだ。
「ちょっと髪型が変わっただけだろ。別に整形したわけじゃあるまいし、そんな大げさな反応をするほどか?」
「いやだいぶ変わったけど。でもまぁ、綺麗にキマったね!」
「僕もここまでカッコようなってるとは思わんかったわ」
「はい、とても良くなられたと思います!」
そう、三人は美容室帰りの総司を手放しで褒め称える。
初めは馬鹿にされているのではと思ったがどうやらそうではないらしい。
「これは真白ちゃんも驚くよね」
「そうですね。司さんが金髪だったらなお良かったのかもしれませんけど」
「金髪はもう良いだろ……」
「っと、言うてる間に帰ってきたみたいやで? カメラに映っとるわ」
「おおう。ちょっくら呼んでくるねー」
ちょうど、時刻は十二時を回ったところ。用事を済ませた彼女がタイミングよく帰ってきたらしい。
一花は真白を呼びに行って総司の元まで連れて来る。
「ほら、真白ちゃん見て見て? 総司君てば結構カッコ良くなってない?」
「そうですね」
一花がはしゃぎながら、連れてきた真白に総司の髪の感想を求めてみるが、真白は何処か素っ気ないと言うか淡々とした受け答えをするのみだった。
「あれ? お気に召さない感じ? やっぱり金髪が良かったのかな?」
「そう言うわけでは……。似合ってない、わけじゃないです。私もカッコ良くなってると思います」
「にしては反応が薄いね?」
真白の返事はそれほど総司に興味が無い様子に思えるし、どこか覇気が無かった。
自分がイケメンだとか、カッコイイとか自惚れる訳ではないのだが、総司も一応それなりにお洒落にはなったと自負はしていた。
なので、彼女なら良い反応をしてくれると思っていたから少し拍子抜けだ。
「すみません。ちょっと、疲れてて……」
「あーそっかー。外は暑いもんね? 確か明日はプールに行ってくるんでしょ?」
「はい」
「最近、バイトも頑張ってたしね。しっかり休んで」
「そうします。お気遣いありがとうございます」
真白は気分が優れないらしい。
夏バテでもしたのだろうか。妙にぐったりしているように見受けられる。
「極夜、大丈夫か? 駄目そうだったら明日は無理するなよ?」
「うん、でも大丈夫。明日はプールの方で待ってるから」
「そうか。ゆっくり休めよ」
プールに行く機会などいつでもあるし、無理をすることではない。
明日になっても彼女の体調が悪いようであれば、中止にした方が良いだろう。
彼はそう思って真白に声を掛けると、彼女は微笑みを見せてはくれるが、やっぱり少し無理をしているような雰囲気がある。
そんな真白に飛角や雪菜も心配そうに気遣っていたりしていた。
「ん。ばいばい。心配かけてごめん。またね……」
彼女は四人に対して健気に笑って見せ部屋を後にする。
その姿は疲れているというよりは、何か別の理由で元気がないように思えて、総司は密かに違和感を抱きつつ真白を見送った。
# # #
翌日、真白の体調は万全になったらしく彼女の様子を伺った一花からもゴーサインが出たので、予定通り施設の中で待ち合わせすることにした。
総司が実家に浮き輪を取りに寄ってからプールに行くことにしていたので、現地集合という形を取っている。
先に到着したと連絡が来て、合流に時間がかかりそうでもなかったから一足先に着替えて貰っているのだが……
実は先に総司の方がプールの中に入場出来てしまっていた。
プール日和なお天気と施設の開場から時間が経っていないのでかなり混んでいる。その為、着替えに手間取っているのだろう。
さらに着替えは女子の方が時間が掛かるのが相場である。
先にプールに浸かっていたい欲求を抑えて、ラッシュガードを着込んだサングラス姿の少年は浮き輪を膨らませながら真白を待った。
そうしながら更衣室の近くで待っていると、目立つ銀髪の少女の姿が見える。
総司は、真白に向かって手を振り彼女の元へ向かっていく。
「おーいこっちだー」
「あ、総司くん……!」
近くに来た彼に気づくと真白は表情を明るくさせ早足で寄って来る。
「待たせてごめん」
「いや、これだけ人がいたら大変だろうし仕方ないだろ。あと、もし体調が悪くなったらちゃんと言えよ?」
「分かってる。ありがと。それにしても、カッコ良くなったね?」
「みんなそう言うけど、元が酷かっただけだと思うんだよなぁ。今となっては確かに、アレはちょっと地味すぎると言うか野暮ったい感じだったし」
合流して二、三言交わすと、前日の一花たちと同じように真白が褒めてくれる。
昨日は疲れていたからあまり反応が良くなかったがその分、今日しっかりと指摘してくれているのだろう。
それは総司としても嬉しいのだが、どうしても自分をカッコイイ人間だとは思えなかった。
イケメンなんて言葉は飛角の方が似合うだろうし、彼と比べれば自分は普通くらいだと評価している。
褒められ慣れていないのもあるが、なんだかしっくりこない感じだ。
「確かに。でも今はかなりイケてる。うん。良い感じ」
真白はグッジョブと言いながらサムズアップをしてみせる。
髪を整えてある程度お洒落にはなったとは思うが、やはりそこまで評価してくれるほどだろうかと疑問がある。
けれども、褒められるのは悪くない。総司は照れ臭くなって「褒めたって何も出ないけどな」と取り繕っていた。
「で、どう?」
「どうとは?」
唐突に袖口を軽くひっぱりながらそんなふうに真白が尋ねてきた。
ただ、一方の彼はなんの話だろうかとクエスチョンマークを頭上に浮かべるだけ。
本当に彼女が何を求めているのか理解出来なかった。
「む……私の水辺のバージョンのこと」
真白はちょっとだけ不満そうにしつつ、そう答えてようやく彼は理解が追いついた。
どうやら、水着姿を褒めろということらしい。
先ほど、総司の髪形を褒めてくれたのはそう言う理由もあったのかもしれない。
「ラッシュガードを着てたら分からんだろ」
「そ、それはそうだけど……」
彼女は総司と同じように日除け対策と衆人に水着を見られる恥ずかしさからラッシュガードを羽織っているので、肝心の水着姿を褒めようにも無理がある。
褒めて欲しいと思うと同時に、羞恥心の所為で矛盾した言動になっていた。
「とりあえずプールに入ろう」
「待って……」
「どうした?」
恥ずかしいのなら別に水着姿を晒す必要もないし、どこかで彼女が水着を見せたのならその時に褒めてやればいい。
と、考えた総司だったが、今度は服の裾をちょいと掴まれて真白に引き留められる。
すると、彼女は何を言うでもなく徐にジィーっとラッシュガードのファスナーを下げていき、それを羽織ったまま正面だけ露出させた。
ようやく夏らしいイベントにまで辿り着きました。
ただ、前回に水着回と言っておきながらまだ肝心の水着がお目見えする直前で、止まっているのは申し訳なく思っております(>_<)
ですが、連続で投稿しておりますのでご安心下さい。このまま水着回までどうぞお進みをば!
また、ブックマーク登録や評価を沢山して頂いたり、ちょこちょこ感想を頂いたりと本当にありがたく思っております。
今後ともよろしくお願いいたします!




