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お昼ご飯と合いカギの交換

 バイトにも慣れ始め総司と真白は二号室をバックルーム代わりに使いながら、休憩を取り過ごしていた。

 つまり、今までの過ごし方とほとんど変わらないということで、自由に暇をつぶしたり昼食を摂ったりしている。


「お昼出来たよ」


 キッチンから二人分の昼食を真白がエプロン姿で運んでくる。

 今日のメニューはざるうどんらしく、数種類の薬味と共に食卓に並べられた。


「おお! 美味そうだな」


 うどんとつゆ、ミョウガやネギ、すりおろしたしょうがだけのシンプルなざるうどんだが、若干夏バテ気味の身体にはちょうどいい。

 うどんが好きな総司がリクエストしたものである。


「いただきます」

「どうぞ」


 手を合わせると真白がにこやかに答えて、隣で彼女も手を合わせる。


「薬味が効いててさっぱりするな」

「うん。うどんにはネギが一番合うね」

「お前のやつ、ネギが山盛りだな。うどんとの比率がおかしいぞ」


 彼女はうどんつゆの中にネギをこんもりと放り込んで、ネギまみれのうどんを食していた。

 総司も薬味は好きだが、箸で一つまみほど添える程度なので、真白のネギの量には驚かされる。


「美味しいよ?」

「ま、人の好みだからな。美味いならそれで」

「総司くんもやってみる?」

「やめとく」

「そっか……美味しいのに」


 基本的に食の好みが似ているようで、大体は彼女と同じような食べ方をする総司だが、流石に薬味を大量にかけたりすることはない。

 彼がそう言うと真白は微妙にしょんぼりとしてうどんをすする。

 

 因みに彼女はネギ以外にも、七味を真っ赤になるまで振りかけたり、他の料理でも特に辛味のある調味料を好む辛党であったりする。

 

 初めは夕食だけ一緒に作る程度だったのが、いつの間にか一緒に食事をするようになっており、真白のそういった一面を発見していた。


「そう言えばここのキッチン使ってるけど、ガス代とか水道代が余分に掛かってるだろ? いくらか出そうと思うんだが」

「全然、大丈夫だよ」


 当初、この部屋を使うのは総司の部屋のエアコンが直るまでの予定だったのだが、バイトなどの関係でだいぶ入り浸っている状況になっていた。


 片付けや掃除などを彼が受け持って、それで相殺していたのだがこうなって来ると流石に割に合っていない。


「好意はありがたいけど、申し訳なくなるからな。バイト代も入って来るし」

「うん、じゃあ食費は折半でいいよ」

「いろいろやって貰って悪いし、七割は出すわ」

「分かった」


 最近は総司の部屋で作って一緒に食べるどころか、バイトをするようになってからは二号室で昼食と夕食も済ませるくらいだった。

 そうなって来ると折半では釣り合いが取れそうにもなく、彼が多く持つことにした。


「じゃあ、私は二号室の鍵を渡すね」

「良いのか?」


 彼が食費の7割を受け持つことを決めると、徐に真白がそう言いだした。


「いいよ。総司くんが来た時に私が部屋から出てきて開けるのを待つのも面倒でしょ? 手が空いてない時は待たせるし」

「それくらいなんともないけどな。ま、真白が良いって言うなら借りておくか」

「はい」


 真白はキーリングからカギを外して総司に手渡す。

 なんだか新鮮な気持ちだった。


「そうだ。俺の部屋の鍵も預けとくわ。これなら対等だしな。それに真白も遊びに来た時に自分で開けられた方が楽だろ?」

「良いの?」

「別に悪いことに使わんだろうし」


 真白の為人ひととなりはこの約一か月半で十分に理解している。

 そもそもそんなことをするなら、総司は隙を見せ続けているし、いくらでも悪さをするタイミングがあっただろう。


 もちろん、優しい性格で思いやりのある彼女がそんなことをするはずがない。合いカギを預けておいても何の問題もないだろう。


「まぁ、しないけど」

「だろ? ほら、これ」


 彼は自分のキーケースから合いカギを取り出して彼女に預ける。

 二号室との交換とはいえ、カギを預け合うというのは同棲するカップルみたいでなんだか緊張する。


 実際、彼女が一緒に食事を作ってくれたり、掃除などを手伝って貰っていたので、傍から見れば殆ど通い妻状態だった。

 もちろん二人にそんな意識など無いのだが。


 なんなら、遊びに来るついでにたまに総司へおすそ分けを持ってくることもあり、そう思えばカギを渡すのが遅かったくらいだろう。

 

「それにあの部屋何かされたところで被害もないしな」

「確かに。ボードゲームとかの棚と家電以外何もないし、ちょっと殺風景な気がする」


 あの部屋には寝室に数種のプラモデルとフィギュア、真白と一緒に作ったボトルシップが置いてあるくらいだ。

 総司はインテリアに興味が無く、物が増えると散らかしそうでリビングには時計ぐらいしか飾っていなかった。


「花とか飾ってもすぐに枯らすし、観葉植物の世話すら面倒くさいからな」

「だったら、ぬいぐるみかとか飾ってみる?」

「真白の部屋はぬいぐるみがあるのか?」

「あ、いやそんなにいっぱいあるわけじゃないけど!」


 総司は何か引っかけるつもりで言ったわけじゃないが、真白が急に慌てて否定し始めるのだからそう言う事なのだろう。

 勝手に自爆していた。


「なるほど、いっぱいあるのか」

「ち、ちがう! 別に沢山あるとかじゃなくて」

「本当か?」


 彼がそう言えば、真白は赤くなりわたわたと忙しくしている。

 なるほど。真白の部屋には本当にぬいぐるみが多いらしい。

 覚えておこうと彼は密かに脳内にメモをした。


「いじわる」

「俺は意外と性格が悪いからな」


 つい、真白とぬいぐるみの組み合わせが意外で微笑ましく思った総司はニヤニヤとからかえば、真白は不満そうに頬を膨らませる。


 彼女の趣味は渋いと思っていたが、割かし少女らしいところもあるらしい。

 ただ、真白は子供っぽく思われるのが恥ずかしかったのかあまり知られたくなかったようだ。


「まぁ、そうだな。一、二体くらいなら置いてみるか。ぬいぐるみの師匠に良い奴を選んでもらおう」

「だから、そんなに置いてないし……」


 総司がちらりと真白を見やって言えば、またしても彼女は顔を赤らめ、箸でネギをつついていじけていた。


 こうして真白がいじけている姿はとても和む。


 彼はしばらく微笑を浮かべつつ昼食を楽しんだ。

お久しぶりでございます。

2、3日に一回の頻度で投稿の予定が、気付けば前回から1週間以上経って大みそかになっていましたw


ネタ切れとか年末で忙しくてどうにも……というわけではなく単純に某FGOの周回に励み過ぎておりました。すみません(#^^#)

来年は頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
[一言] ここまで一気読みです。空気感、距離感の詰まり具合が絶妙で魅力的なお話です。 更新お待ちしております♪
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