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夏の風物詩

 一花の言う良いモノとは何だろうか。

 気になりつつ総司と真白は洗い場まで向かう。


「ああ、これか」

「瓶のラムネだね」


 洗い場に着くと氷と水が入ったバケツが置いてあり、そこで二人分の瓶ラムネが冷やされていた。

 水滴がきらきらと輝くラムネ瓶は透き通っている。総司は自分の喉が鳴ったのが分かるくらいそれを欲した。


 炎天下の中、労働した後に飲むラムネはさぞ美味かろうと、二人はもうひと頑張りしようかという気になる。

 そうして彼らは道具を洗って片付け、自分たちの泥を落とした。


「キンキンに冷えてるね」

「きっとカ〇ジもこんな気持ちだったんだろうな」


 二人は某ギャンブル漫画の主人公に思いを馳せながらラムネ瓶を手に取る。

 

 お待ちかねのご褒美タイムだ。

 総司と真白は一花に感謝しながら、蓋のラベルを剥がし、凸型の玉押しでビー玉に押し込むように力を加える。


「わぁっ」


 そうすれば先に真白が開封して、プシュッという音をラムネ瓶が奏で、小気味良くシュワシュワと聞こえてきた。


「駄目だ。全然開かねぇ」

「たまにあるよね。全然開かない時」

「爆発したら怖いな」


 一方の総司は開封に手間取っていて、ビー玉をなんとか押し込もうとするが一向にラムネ瓶はうんともすんとも言わない。

 無理にやっても炭酸が噴き出す恐れがあるので、彼は逆にビビってしまい加える力が弱くなっていた。


「ん。貸してみて」


 見かねた真白がそう言った瞬間だった。


「おわっと」

「わっ⁉」


 ついに彼はビー玉を押し込む事は出来たが、プシャアァァとラムネが噴き出して、総司と真白はラムネを盛大に被ることになった。


 特に酷かったのは真白で、総司が持っていたラムネに正面から近づいたため直撃を食らった。

 ラムネの暴発が収まると数秒の沈黙が訪れ、二人は顔を見合わせる。


「「あはははっ!」」


 そう、数秒見つめ合ったあった後、総司と真白は揃って笑い声をあげた。


「あーあやっちまった!」

「うんうん。これも風流と言えば風流」

「久しぶりにやらかしたわ」


 ラムネでべとべとになったのにも関わらず、彼らは楽し気に笑う。

 これも思い出というやつだからだろう。


 真夏の青空の下、友人とラムネをあおるのも良いがこうして、盛大に失敗するのも青春ではないか。

 そう思えば、明るく笑える。


 二人はひとしきり笑えば、ラムネに口を付けた。

 すると、失敗など気にならないくらいの炭酸の爽快感が口の中を駆け抜けていき、独特の甘みが労働の疲れをすっきり忘れさせてくれる。


「すっくね~」

「半分以下だったしね」


 たった一口、二口だったのに総司は飲み切って、微かに苦笑いをしながら瓶を見やる。

 隣では真白も苦笑気味だ。


「ちょっとだけ総司くんにあげる」

「いや、いいよ。俺が悪いんだし。あ……!」


 可哀想に思ったのか真白はラムネ瓶を総司に渡そうとする。

 彼が断っても、彼女が寄ってきて身長差から真白を見下ろすことになり、ある部分に目が行ってしまった。

 

 真白の服越しでも分かるボディラインは噴き出したラムネの所為で服が張り付き、特に胸のあたりが透けていた。

 彼は見るまいと顔を背ける。


「どうしたの?」

「なんでもない。貰っとく。さんきゅな」

「ん」


 ちょっとでも離れようと彼は、迫ってきた真白から一転してラムネを受け取った。

 これで視線の先に困ることも無いだろうと思い、口を付けないように飲むためにラムネ瓶を掲げる。


「別に口くらい付けて良いよ」

「回し飲みするのは嫌だろ?」

「総司くんは嫌?」

「そう言うわけじゃないけど」

「別に小学生じゃないし、気にしないから」


 間接キスを気にするような年齢ではないが、一口貰ったら彼女に返すので自分が口を付けたら嫌がるかもしれないと総司は思っていた。


 ただ、高校生にもなってそれくらいで騒いだりはしないのは真白も同じだったらしい。

 平気な顔で彼女は言った。


「真白がそう言うなら、まぁ」


 正直なところ口を付けずに飲むのは煩わしかったので、彼はありがたく思い一口だけ貰った。


「ありがとな。美味かった」

「どういたしまして」


 ケーキを食べさせ合ったこともあるし、あの恥ずかしさに比べたらなんてことないのだろう。

 飲み終わった総司はラムネ瓶を返し、真白がニコリとしながら受け取った。


「それ、飲み終わったら戻るか。俺はバケツを片付けてくる。あと、ラムネでベタベタだろ? タオルを持ってくるわ」

「うん」


 ラムネのお礼にと総司は先にバケツを片付け、タオルを管理人室まで取りに行く。


「ど、どうしよ……勢いで言っちゃった」


 残された真白はラムネ瓶の口をじっと見つめつつぼそりと呟く。

 先ほどは、回し飲みくらい気にしないと言ったが、時間を置くとやはり気になるものらしい。

 

「まぁ、いいや……」


 たかが間接キス程度であたふたするのも子供っぽいし、何を気にしているんだろうと彼女はぐいっとラムネ瓶をあおって飲み干した。

ここ最近、数日おきに投稿しておりましたがしばらくはそのような感じでの投稿頻度になると思います。


実はそろそろ電撃文庫大賞に作品を応募する予定で、新しく作品を作るため時間を作ろうと考えておりまして、2、3日に1話程度投稿できればと思っております。


本作品を面白い、続きを読みたいと思われましたら、ブックマーク登録、目次の下にあります☆☆☆☆☆に色を塗って評価などをして頂ければ、

大変嬉しく思うと同時に励みになりますので、よろしくお願いいたします。

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