初バイトと夏の思い出(写真)
夏休みが始まって五日、今日がバイトの初日だ。
夏真っ盛りのじりじりと焼き付くような日差しと日本特有のじめじめした暑さの中、初めてのバイトに多少は緊張したが、総司と真白は花壇の清掃と向日葵の手入れを行っていた。
仕事自体は学校の美化委員会がやるような内容だが、給料が発生しているので、二人は気合を入れて業務をこなしていた。
「総司くんそっちのシャベル取って」
「あいよ。代わりにはさみ取ってくれ」
「はい」
「さんくす」
シャベルを投げて渡す総司とはさみを花壇の囲いの上を滑らせて届ける真白。
そんな風に二人は良い連携で作業を進める。
「しっかし、暑すぎるだろ」
「昼過ぎには猛暑日になるらしい」
「こりゃ終わってなくても十二時前には切り上げだな」
「だね」
汗を拭いながら憎らし気に太陽を睨む総司。
真白も首に掛けたタオルでしきりに汗を拭き、半分凍らせたミネラルウォーターで水分補給をする。
熱中症にならないように気を付けてはいるけれど、このまま作業を続けると倒れかねない。
昼も引き続き花壇やその周りの清掃と手入れを行う予定だったが、これは中止した方が良いだろう。
引き上げたり継続するかの判断は一花から、実際に作業する総司たちに任せられている。
現場判断で二人は中止を決めた。
「長袖にするんじゃなかった」
「ま、日焼けするし虫もいるし、半袖も良いとは言えないけどな。俺は気にならないから半袖だけど。なんだったら着替えてくるか?」
白の長袖のシャツに下はジャージのズボン姿で作業をしている、真白はとても暑そうだった。
長袖の方が日に当たる面積も減って、意外と半袖よりも良かったりするため、彼女は肌を保護する目的でその服装を選んでいた。
だが、じめじめとしている所為で服の中に湿気が溜まって辛そうだ。
首元や手、顔付近は玉のような汗を真白は流し続けている。
「んー帽子は涼しいんだけど」
「というか向日葵と麦わら帽子っていいよな。絵が映えるっつーか、かなり芸術的な感じがする」
「そう?」
麦わら帽子の美少女と満開に咲き誇る向日葵の組み合わせが、どうしてこうもマッチするのだろうか。
加えて、真白のそよ風で揺れる銀色の長い髪は日に照らされて輝いている。
もし、彼女が白のワンピースを着ていたら完璧だっただろう。
それほどに彼女を綺麗だと思えた。
真白も褒められて嬉しくなったのかくるりと一回転してみせる。
総司はついその様子を写真に収めたくなってスマホを取り出し、パシャリと一枚被写体を画面に収めた。
「急に撮って……盗撮魔」
「悪い悪い。けど見てみろよ。めちゃくちゃ良い感じだぞ?」
「ほんとだ。これが私? 加工した?」
しれっと撮影した総司に真白はジト目を向けつつそう言うが、見せられた写真には目を丸くして驚いていた。
写真には向日葵と青い空、画面の切れ端に映る入道雲を背景にひらりと回りながら笑みを浮かべる真白が映っている。
被写体と背景のコントラストは見事で、写真に詳しくない二人でもそれは良い写真だと評価できるほどだった。
「そんな一瞬で加工できるわけないだろ」
「それもそうだね」
「ほら、送ってやるよ。良い夏の思い出になるだろ? 我ながら上出来だと思うし」
「うん。遺影にする」
「それはどうかと思うが」
送って貰った写真を真白は大事そうに眺める。
流石に遺影にするにしては華やか過ぎるだろう。
ただそれほど気に入ってくれたのなら、彼も怒られる事を前提でシャッターを切った甲斐があるというものだ。
「やっほー! お二人さんお疲れだねー。花壇は終わりにしよっか。このままだと暑くて死んじゃうし」
軽い休憩がてらそんなやり取りをしていると、一花が管理人室の方から顔を出して手を振っていた。
「一花さんもお疲れ様です」
「とりあえず片付けて戻っておいで」
「分かりました」
まだ十一時だったが、一花は責任者としてもっと早く打ち切るべきだと判断したのだろう。
彼女はそう言って窓の奥に顔を引っ込めた。
「よし終わるか。俺が洗い場まで道具を持って行くから準備しといてくれるか?」
「うん」
総司が指示を出せば真白が先に小走りで洗い場に向かい、彼は道具をまとめて抱え上げて片付けを始める。
「あ、そうだ! 言い忘れてたけど、洗い場に良いモノがあるから貰っちゃってねー。頑張る君たちにお姉さんからのプレゼントだよん!」
洗い場までの道すがら管理人室の前を通りかかると、またひょっこり一花が顔を出し、それだけ伝えて再び引っ込んだ。
お待たせしました。3日ぶりのわりに短くなってしまい申し訳ないです。
3,500字を超えたため半分に切り分けましたので、明日の早い時間に次話を投稿いたします。
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