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つい手を伸ばしてしまうものです

ちょっとだけ、本作のタイトルをいじりました。

「この部屋に真白が来るのは何日ぶりだ?」

「たまに来てたけど、約一週間くらい?」


 ちょこちょこ総司の部屋には訪れていたが、やはり二号室の利便性と真白の事を考えれば、あの部屋の方が楽でいい。

 その所為で料理教室はしばらくお休みが続いていて、どこか寂寥感があった。

 

「俺は麻雀セット広げとくから、適当に飲み物用意してもらっていいか?」

「おっけー」


 彼は棚から麻雀セットを取りに行き、彼女は戸棚を開けコップを出して、冷蔵庫の中からお茶を運んでくる。

 その動きはもう慣れたもだ。

 実は調理器具の収納場所などはすでに真白の方が詳しいくらいだったりする。


「さて、何から教えようか」

「何でもこい」


 準備も終わり、ダイニングテーブルに総司は牌や点棒などを並べ思案する。

 真白はやる気満々で、総司からの指導を待っていた。


「ま、とりあえず麻雀牌の読み方からだな。中国語の数字の読みは出来るか?」

「ドラゴ〇ボールで七までは覚えてる」

「だよな。日本人はドラゴ〇ボールで七まで覚えるよな」


 ドラゴ〇ボールは偉大だ。

 あの漫画を読めば、基本的に七まで呼び方は覚えられる。


 麻雀は中国語が基本なので、プレイをする前から苦労するのだが、ドラゴ〇ボールの読者なら、数字だけは八と九を覚えるだけで良い。

 あとは、六だけが例外なのでプラスして三つだ。


 そういう麻雀プレイヤーは多いだろう。

 総司もそうだったし、真白も同じようだった。


「麻雀牌の数字は九まであるんだが、真白は三つ呼び方を覚えればいい。六だけが麻雀と呼び方が違うからローと覚え直して、八はパー、九はキューだ。因みに数字が書いてある牌の事を数牌シュウパイと言うんだ」

「ふむふむ」


 総司は真白に牌を見せながら教えていく。

 ドラゴ〇ボールのおかげで数字の読み方はすぐに覚えられたらしい。

 

 続いて、麻雀牌、各種の呼び名などを教えた。

 この辺りはやりながら覚えて行くものだし、最悪日本語でも問題ない。というか、麻雀は身内だけで遊ぶなら日本語だけで構わない。

 ただ、雀荘では別なので、将来彼女が雀荘に行くかもしれないと言う事を考えて教えておいた。


         # # #


 次は、役やその他の用語を教えるのも良いが座学ばかりでは飽きるし、牌に触っておくのも良いだろうと考えて牌の積み方を教えることにした。


「基本的に、上段十七枚、下段十七枚の計三十四枚を積み上げるだ。こんな風に」

「おおー」


 総司は一列に並んだ十七枚の牌を両手で上手く掴み、すでに並べられた牌の上に乗せる。

 意外にこの作業が難しいのだ。

 ぴしっと牌が綺麗に積み上げられる様子に真白は歓声を挙げていた。


「慣れだから、やってみるといい」

「うんやってみる」


 彼女も総司の真似をして、牌を掴んで並べようとする。

 牌を掴むことは出来ても上に乗せるのは、至難である。

 案の定、彼女はガシャンと牌をぐちゃぐちゃにしてしまっていた。


「難しい……」

「こればっかりは練習あるのみだからな」


 その後も何度か挑戦するが上手くいかず、時には牌を持つ手がぷるぷるしていたりして面白い。彼は小さく笑いつつ真白を見守った。


「……総司くん笑ってる」


 総司は微笑ましく思って見ていたのだが、彼女は馬鹿されているとでも感じたのだろうか。

 真白はむぅと不満顔でこちらを見てくる。


「いやいや、俺も初めてやった時はこんな感じだったなと、つい懐かしくて。馬鹿にしてるわけじゃないぞ」

「ほんとに?」

「本当だ」

「ん。じゃあ不問にする」


 どうやら、許されたらしい。彼女はまたすぐに練習に戻る。


 そうして何度か総司が手本を見せつつ真白にレクチャーすると、ついに彼女は牌を積み上げることに成功した。

 手が震えていたせいで少し不揃いだが、一応形にはなっていた。


「出来た!」


 ようやく積み上げられると、真白は彼の方を向き満面の笑みで喜ぶ。

 それはまたあの笑顔だった。

 彼女が本当に喜んでいる時にする笑みだ。


 その様子に彼は凄く嬉しくなった。


(あの時の真白もこんな感じだったのか?)

 

 ボトルシップの作り方を教えてくれた時、真白も一緒に喜んでくれたが今度は自分がそうなるとは思わなかった。


 あの時、慈愛に満ちた表情をしていた彼女だが、今は総司も相当にこやかな笑みを浮かべていた。


 教えることの楽しさ、教えている相手が上手くいって喜んでいる時、自分も同じように思うのだと彼は実感する。


 それも相まっていつも以上に彼女を可愛らしく感じて、総司は気付けば真白の頭に手を伸ばしていた。


「え、あ、総司くん?」

「良く出来ました的なやつだ」


 真白は突然、総司から撫でられてびっくりしていた。

 勝手に触れたことに対して、怒ったりするようでもなく目を丸くしているだけだ。


 一方の彼はやってしまったぞと後悔して、謝ろうと思ったが謝るくらいならするなよと言われそうだったので、総司はぶっきらぼうに返した。


「急に撫でられたから驚いた」

「嫌だったらもうしないけど」

「ん。別にそうでもない。で、でも不意打ちみたいなのは良くない」

「じゃあ、今度からは申告制にするわ」

「そういうことじゃない」


 彼女は抗議するように、じっとこちらを見てきた。

 

 これ以上は怒らせてしまうかもと総司は手を引っ込めるが、彼女は何処か残念そうにして、彼の手に視線を送る。

 ただ、もう一度、真白を撫でる勇気は無かったので総司はポケットに手を突っ込んだ。


「なんで、いきなり撫でてきたの?」

「先生の気持ちになったからな」

「なにそれ」

「お前も教える側の時に、一緒に喜んでくれたりするだろ。俺もそうなっただけで」

「納得。じゃあ、今度は私が教える側の時に総司くんを撫でてあげたらいい?」

「やめてくれ。俺が大きな子供みたいだろ」


 真白がからかうようにして言ってきた。

 自分がするのは良くて、されるのは嫌とは中々に我がままだと思うが、男が撫でられるなぞどうしても情けない絵面になりそうで彼は断った。


「私の方が年上だし」

「俺の誕生日知ってたのか?」

「あてずっぽう。というわけで、私の方がお姉さんです」

「そうは見えんが」


 腰に手を当て、胸を張る真白だがどうしてか子供っぽく見える。


 普段から落ち着いていて誰に対しても優しく、人を責めるような事をしない彼女をよく周囲は大人に見えるという評価を下す。


 だが、総司が実際に見た真白はとても年相応で、特に笑った時なんかは純粋に屈託のない笑みをする。

 こうして自分の方が姉だと張り合ったり、ゲームでは負けず嫌いだったりとやはり子供らしい。

 それが彼女の良い所で総司が可愛らしく思う部分だった。


「じゃあ、撫でてあげるから頭を出して。お姉さん力を見せつけてあげる」

「断る」

「むぅ」


 彼女は総司の頭を撫でようとするが拒否をされる。

 背伸びすれば届くと思って真白は手を伸ばすが、彼は彼女の頭に手を置き食い止めれば、わしわしと撫でてやった。


「ず、ずるい」

「身長差では俺の方が上だったらしいな」

「総司くん、手慣れてる。他の人にもやってそう」


 むすっとした表情ながらも真白はもう総司を撫でることを諦めて、彼に頭を蹂躙されることを受け入れる。


 敗北を認めて真白はそう言うが、総司は他の女子にしたことなどない。

 真白以外に出来るはずがないし、しようとさえ思わない。


 それなりに親しい間だからこそだ。

 そもそも、嫌がらない彼女相手だから出来ることであって、他の人は総司が手を伸ばした時点で逃げるはずだ。


「そうだったら、飛角みたいに彼女が出来てるはずなんだがな」

「総司くん、彼女が欲しいの?」

「どうだろうか。そういう願望を持ったことはないな」

「そう。でも、彼女が出来たら、今みたいに撫でてあげるといい。きっと喜ぶと思う」

「なるほど。お前も撫でられて喜んでるし説得力はあるな」

「わ、私はただ撫で合いに負けただけだし……」


 真白は自分が喜んでいることに恥ずかしくなったのか、否定してその場から離れる。


 ニヤリと総司が笑えば、彼女は「べ、別に喜んでなんかいないんだからねっ!」と恥ずかしさを誤魔化す為にツンデレキャラを演じるが、それも可愛らしくてまた彼が笑みを溢すと、


「あほ」


 と短く返しながら真白が赤らめた頬をぷくっと膨らませ、麻雀牌を軽く投げつけてきた。

 

 そんなことをされては、総司の胸はどくんと高鳴ってしょうがない。

 ちょうど麻雀牌が胸の付近に当たったので、総司はそのせいにしておいた。

なんで、麻雀回なのにいちゃつけるんでしょうね。


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