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同級生の趣味は渋いんです

タイトルを少しいじりました。※12/17 4:06 追記

 それは一言で表現するなら、素晴らしい出来だった。


 彼女が作ってくれたうどんは、いつも総司が作るものとはまるで違った。

 出汁は追いがつおのつゆだけではなく、醤油、みりんや塩など複数の調味料を使い、一から作られていた。


「美味い! マジで美味い!」


 箸が止まらないとはこのことだろう。

 先から美味いぐらいしか口にしていない。


 出汁は湯気にしっかり乗るほど良い匂いがするし、かつおの風味が効いていて、まろやかで上品。

 ほんのりとした甘さの中にコクもあって、店のものではないかと疑うほどだった。


 まさか、自分の部屋にあるものだけで、これほど凄いものが出来上がるとは思いもよらなかった。総司はすぐに完食してしまった。


「高校生なのにこんなの作れるんだな」

「前からお母さんに教えられてるから。司さんは料理しないの?」

「しないことは無いな。引っ越してから一週間、適当な食生活をして、調子を崩してからはそこそこするようになった程度だけど」

「一体どんなことをしたらそうなるの?」

「ああ、簡単だ。まず、一日一食か二食で、その全部をゼリー飲料とか、カップ麺で過ごす。するとあら不思議、突然体調が悪くなって寝込むことになります」

「………」


 総司は得意気に誇れもしないことを語る。その内容に、真白は言葉にも出せないほど引いていた。

 同じ人間とは思えないとまで言いだしそうで、ヤバい人間を見る目で総司を見つめていた。


「ちゃんとした方がいいと思う」

「だから、うどんとかにしようとしてただろ? 最近はしっかり作ってるんだ。極夜ほどの出来じゃないけどな」


 総司は春休みの過ちを繰り返さないために、まだ下手の領域は抜け出せていないが、十数種類料理は覚えた。


 因みに真白に料理のレパートリーの数を聞けば、百は越えているらしかった。


         # # #


「話は変わるけど、さっきの続きを話していい?」

「さっきの? ボードゲームの事か」

「うん」


 総司がうどんを食べ終わると、真白はおずおずといった様子で切り出してくる。

 どうしてか不安気だが、総司は何も聞かず質問にだけ答えることにした。


「司さんは、ボドゲをする友達があまりいないって言ってたけど、少しならいるの?」

「同じクラスに馬竜うまだつっているだろ? アイツとか、アイツの友達数人でたまにボドゲで遊ぶ。ま、みんなが俺に付き合ってくれてるだけで、基本的に麻雀したりスマホとかテレビゲームの方が多いな」

「いいな。私は友達が少ないから」


 真白は羨望と言うか、単純に羨ましそうな目をしながら呟く。


「え? でも、教室じゃ色んな奴らに囲まれてるだろ?」


 総司は羨ましくはないが、真白のように友達が沢山いると色々困らないだろうなぁと思っていた。


 だから、彼女が言った言葉を理解しかねる。


「私は、女子高生っぽくない趣味だから、趣味とか流行りの話題になったら、付いていけないし楽しめなくて会話も減る。教室では私と話が合わなくても関係無く近づいてくる人がいるだけだし」

「女子高生っぽくない趣味?」

「そう。趣味が渋いの。だから、昨日みたいなところだとすぐにみんなは話しかけてこなくなるだけ」

「例えば?」

「将棋」

「なるほどな。昨日のさ、あの雑誌、将棋の奴だろ? 確かにちょっと女子高生っぽくないかもな」


 昨日、総司が見た雑誌のジャンルは将棋だ。

 彼もアナログゲームが好きで将棋もある程度は指せる。ただ、将棋が出来る友人がいないので部屋には置いてないが。


「だよね。司さんは将棋は好き?」

「割とな。定跡とか囲いはまだよくわからないけど」

「なるほど」

「他にも何か趣味はあるのか?」


 彼は割と、色々なモノに手を出す多趣味なタイプだ。もし、別にも彼女と共通の趣味は無いかと考える。


「えっと、野球とかサッカーの観戦」

「あ、俺も結構行くぞ。中学までサッカーやってたから、今でも見に行くし、野球も父さんと爺さんの影響で好きになったんだよな」

「へぇ。サッカーは神戸のサポだけど総司は?」

「俺もだよ」

「プロ野球は何処のファン?」

「俺は虎党」

「私もタイガースファン」


 サッカー、野球共に同じチームを応援しているらしい。

 同じチームを応援している仲間に会えて、総司は嬉しくなって他にもないだろうかと聞いてみる。


「まだ何かあったりするか?」

「釣りは割と行く。お父さんが好きだからハマって」

「お、それもいいな。実は俺も釣りは好きなんだよ。釣り堀は楽しいから、一時期毎日行ってたな」


 釣りは一人の時間を作れるから好きだった。この趣味も父や祖父がきっかけである。


「そうなんだ。あと、温泉巡りとかも好きで。あなたは?」

「まじで? 温泉巡りするのか? 俺も温泉好きなんだよなぁ。二時間は浸かってられるし。それと城崎とかは家族と毎年行くな。有馬なんて、車だったら一時間足らずで行けるからいいよな」

「うん」


 釣りも好きと言った総司の反応をみて、真白は楽しくなったのか彼女から、自分の趣味を話してくれる。


 温泉まで好きだとは驚きである。

 そして、ここから話が弾むのは早かった。


 因みに彼女はボトルシップを作ったりするのも趣味らしく、総司も模型やプラモデルを組み立てるのが好きで、そういう話もした。


 そうして、総司はちょっと渋めの趣味の、それでいて自分と気の合う少女と少しだけ仲良くなった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

面白い、続きを読みたいと思って頂けたら、ブックマーク、☆☆☆☆☆に色を塗って評価などをして頂ければ、大変嬉しく思うと同時に励みになります。


本日、三話目ですが、あと、一話ほど投稿いたしますのでよろしくお願いいたします!

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