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夏休み前のひと騒ぎ

ジャンル別日間7位になりました。ついに一桁台です!

何度も同じ言葉で申し訳ありませんが、本当にありがとうございます!

「もう夏休みですか。早いものですね」

「そんで、光の速さで終わって行くんや。せやから雪菜、目いっぱい楽しもうや!」

「あら、それではどこかに連れて行ってくれるのでしょうか?」

「君とならどこでも連れて行ったるわ」

「ふふふ、楽しみです」


 終業式や一学期最後のHRも終えて、教室内は生き生きとしている生徒で溢れていた。


 一刻でも早く会いたいと雪菜がやってきて、飛角と二人の世界に入り込んでいちゃついている。

 それはもう微笑ましいものだ。


「いちゃつくだけなら余所に行ってくれ」


 ただ、二人がベタベタするのを見せられたところで総司には何の得もないし、むしろ疲れるだけなのでしっしっと手で払う。


「見てみ、雪菜。アレが独り身の僻みやで」

「あらまぁ。お可哀想ですわ」

「というわけで、彼女を作ることをお勧めするでぇ」

「今流行りのレンタル彼女もおすすめしますやでぇ」

「お前ら、喧嘩売ってんのか」


 二人が演技染みた口調と可哀想な者を見る目で、総司を小馬鹿にするというかふざけ始める。

 雪菜に至っては彼女も関西人のくせに、わざと似非関西弁を使っており、かなり煽りスキルが高めだった。


 清楚は何処に行った清楚は。


 いつもこんな調子なので慣れたものだが、いい加減相手をするのも飽きて来た。

 では、なぜ二人といるかと言えば真白を待っているからだ。


 現在、彼女は夏休みに行うバイトの届けを提出をしに行っていた。

 バイトをするにあたって実は軽い面談も行われるのがこの学校の特徴だ。


 本来は終業式前までに終わらせてしまうのだが、前々日にバイトをすると決めため、面談が今日になっている。

 それは総司も同じで、その面談の順番を待っているというわけだ。


「それにしても、四人も雇ってくれるなんて大盤振る舞いだよな」

「しかもお賃金は結構ええもんな」

「叔父には感謝ですね」


 真白が住むアパートの管理人のアルバイトをすることになっているカップル二人だが、二人もずっとシフトに入れるわけではないので、その間のシフトに入ってみないかと雪菜から総司と真白は勧められていた。


 本当はもっと時間などの融通が利く人間を雇うのだが、二人の友人という事でわざわざ雪菜の叔父は雇ってくれることになった。


 総司と真白もアルバイト代が貰えるなら、夏休みの資金になるだろうと了承した形だった。


         # # #


「司さん、次の順番だよ」


 適当に駄弁っていれば、真白が教室に帰ってきた。

 彼女は総司を見つけるや否や、そう伝えてくれる。


「おう。それじゃ、行ってくるわ。五十嵐、飛角、後でな」

「ほいほい、行ってら~」

「はい、また後で」


 二人にそう残して、真白と入れ替わるように総司は教室を出て行こうとする。


「あ! 極夜さん戻ってきた! もし良かったら、夏休みにみんなで夏祭りとか行くんだけど、合流するまで俺と一緒に行こうぜ!」

「おい! ずりぃぞ! 俺だって」

「俺も!」


 ドアの入り口に差し掛かった付近で、真白に群がってきた男子たちに総司は押される。


 誰も悪気はないし、一応総司に謝ったりする者もいたので気分を悪くはしなかったが、彼女が困ってそうだなと思うと少し立ち止まった。


「あ、バイトがあって行けなさそうだから。ごめん」

「マジかぁ。じゃあさ、花火大会とか、盆踊りもあるしその辺はどう?」

「流石に全部、バイトが入ってるわけじゃないよね?」

「てかさ、この後食べに行くけど来る?」

「えっと、この後はバイト先に行くから。花火大会も盆踊りも予定はまだわからなくて」

「海とかもさー、俺、極夜さんの海の姿見てみたいかなぁって」

「うわ、それ絶対いいじゃん。これは水着イベント確定っしょ」


 真白は矢継ぎ早に尋ねられて、困りながらも丁寧に対応する。

 これほど、下心丸出しの男子たちに嫌がる素振りを見せないのは流石だろう。

 だからこそ問題ではあるのだが。


 コンビニの時のように、それをまんざらでもないという風に解釈されるから、真白に対してアタックを掛ける者たちが多いのだ。


(どうする? いや流石にこれは)


 総司は少しの間悩んでから、止めてやろうと思って声を掛けようとしたが、


「おい、『皆さん、彼女が困っているでしょう!』」


 先に雪菜がその集団へ大きな声を出して割って入った。


「え? 五十嵐さん?」

「皆さん、クラスメイトを遊びに誘おうとするのは構いませんが、そんなに勢い良くしていては彼女も困るでしょう。それに少し下品な誘いもありましたし、同じ女性として見過ごせませんよ」


 雪菜ははっきりと思ったことを言ってのけた。

 その目は非難するように厳しめだ。

 一方で、真白は怒涛のお誘いラッシュが途絶えて安堵していた。


「そうだな、五十嵐さんの言う通りだ。俺たちも夏休みだし盛り上がり過ぎた」

「ああ、極夜さんごめんな」

「俺も悪かったです」


 雪菜に咎められた男子たちは彼女の眼光と口調に気圧されたのか、次々に真白に謝ったり反省していた。

 これで、騒ぎも収まるだろう。

 そう思ったのだが、


「じゃさ、五十嵐さんも一緒に遊びに来るとか」


 人の彼女に声を掛ける猛者がいた。

 その男子生徒は、総司が見たことも無かったのでおそらくは他クラスの生徒だろう。

 随分勇気があるものだなと総司は内心で感心する。


「なぁ、なんや、君? 僕の彼女になんか用か? そういう誘いは困るんやけどな」


 すぐに、飛角が睨みつけながら、雪菜を誘おうとした男子生徒を一喝した。


「あ、いやなんでも……」


 そりゃこうなるだろう。

 自分が近くにいるのにもかかわらず、それを無視して恋人が声を掛けられて黙っている男がいるわけが無い。

 

 彼に半ば怒鳴られるように言われた男子生徒は情けなく引き下がった。

 それがトドメだったのか、真白から人だかりが無くなる。


 総司はこれで安心だと思いつつも妙に腹が立った。


(俺は情けないな)


 そう自分を責めた。

 いくら真白と関りを探られないようにするためとはいえ、先ほどは悩む必要もなかっただろう。


 雪菜が言うように、下品で度が過ぎていた者もいた。

 彼が割って入っても、おかしくはないはずだ。

 真白を友人と思うのならば、一瞬でも迷ってしまった自分を情けなく思った。


「極夜さん、ちょっとお喋りしましょうか」

「うん」


 彼女の方を見れば、雪菜が真白を誘っていた。

 総司は今度こそ大丈夫だろうと止めていた足を動かした。


「チッ」


 すれば、どこからともなく舌打ちが聞こえて来たが彼は聞き逃さず、少しもやもやとしながら教室の外に出た。

前回は甘さ成分多めだったのに、今回はちょっと総司が暗めでしたかね?


ですがご安心下さい。次回からは青春といえばの、夏休み編に突入します!

あああ~季節感どこ行ったんだぁ~! 世間はもう冬休み前だぞ!?


ともあれ本作品を面白い、続きを読みたいと思われましたら、ブックマーク登録、目次の下にあります☆☆☆☆☆に色を塗って評価などをして頂ければ、

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― 新着の感想 ―
[良い点] いろんな趣味の話、楽しいです。 タイトルの渋い趣味、多趣味の内容をもっと掘り下げて書いてくれたら嬉しい [一言] たまに出てくる「すれば、」ってどこかの方言ですかね?「~すれば(したら)」…
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