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少年は煩悩を抱く

 エアコンが壊れ、真白が住む部屋の隣部屋に総司が通うようになって二日目、彼はある問題に直面していた。


「司さん、ジュース持ってきた」

「あ、ありがとう」


 真白がジュースの入ったグラスをお盆に乗せて、テーブルまで運んでくる。

 勉強している総司の隣にすっとグラスを置くのだが、その瞬間ふわりと彼女の髪からフローラルな香りがした。

 

 彼女は、どうも風呂上りらしいのだ。

 その証拠に、彼女の髪の先は少し湿っているようだし、顔や露出した肌は全体的に火照っていた。


 それに比例するように、真白はいつもより薄着だ。

 ノースリーブのシャツに短めのスカートだったりと、出来るだけ涼しい恰好で真白は過ごしている。


 今までは総司の家に来ていたので、その間に髪は乾くのだろうし外出するために服装もそれなりだ。

 いつもはこんな姿の真白を拝むことは無かった。


 だが、総司が一度家に戻ってから来るとはいえ、彼女のその髪が完全に乾く前、火照りが収まる前にここへ来てしまって、この状況が発生していた。


 つまり、何が言いたいのか?

 それは、とても目のやり場に困るということである。


「司さん、そこ間違ってるよ?」

「お、そうか。さんきゅ」


 来週に迫った期末テストに向けて、真白が本格的に学習を教えてくれており、今のように間違いなどに気付いたら指摘してくれたりする。

 

 その際に対面に座る真白が少し乗り出してくるのだが、風呂上がりの所為か一々甘い匂いがするし、なにより薄着のためにちらちらと鎖骨だったり、彼女のスタイルの良さを代表する胸だったりが強調されている。


 見るつもりはなくとも見えてしまったのだから、何とも本能は正直と言うか、理性はラインさえ越えなければ、ある程度はOKという男の悪い部分が出てしまっていた。


 真白の普段見せない姿や少々無防備な様子に、総司は平常を装うのにとても苦労した。


         # # #


 ただ、問題はこれだけではなかった。


「なぁ?」

「どうしたの?」

「昨日から思ってたけど、なんかこの部屋誘惑するものが多くないか?」


 総司は周囲を見やりながら、真白に言う。


 部屋には、先日発売された最新のゲーム機や話題の新作ゲームソフト、大人気漫画の最新刊に加え、どうしてかダーツの的や卓球台が畳んで置いてあったりする。

 無論、他のゲーム機や漫画も多く置いてある。


 まるで誘惑に耐えられるかどうか試すためだけに、この部屋は作られているのではないだろうかと疑いたくなるようなラインナップだった。


 前日もここで過ごし、その時にも言おうか迷ったが結局何も言いはしなかった。

 だが、こうも誘惑してくる者達が揃っていれば、やはり気になってしょうがない。

 最終的にはこうして、真白へ尋ねる結果となった。


「まぁ、お父さんとお母さんの趣味の物が置いてある部屋だし」

「だから、物置になってるって言ってたのか」

「うん。それで漫画とかゲームの新しいのは、ここで私が管理する代わりに先に楽しませてもらってる」

「とんでもない、娯楽部屋だな」


 真白曰く、ここにある物のほぼ全ては両親が揃えたものらしい。

 卓球台やダーツは彼女の実家では遊ばなくなって、ここに置かれているとのことだ。

 

 どうしても遊びたくなってくるのは、仕方がないだろう。

 総司は、ちょっと集中が切れ気味だった。


「一時間くらいたったし、休憩がてらに遊ぶ?」


 真白が誘惑の原因たちにちらっと視線を向け、このようにさらに誘惑してくれば抗えまい。

 二十分だけと決めて、総司はその誘惑に負けることにした。


「あ、やられた!? ドゲザー最悪」


 テレビの前に二人は並んでゲームをしており、総司が見事一位を取ると、隣では「折角、一位だったのに」と真白がショックな様子で悔しそうに漏らす。


 彼らがプレイしているゲームは、世界的人気を誇る仁天堂のレースゲームだ。

 新作ゲームで遊んでも良かったが、初期設定などで時間が取られるので、このゲームを選んでいた。


「最終ラップは二位を死守しつつ、最後に機会を窺うのがコツだぞ?」

「むぅ……勝者の余裕。悔しい……」


 彼が勝ち誇って得意気に話せば、真白は頬を膨らませて唸る。

 その表情が子供のようで可愛いくて、総司は思わず頭を撫でてやりたくなるが、相手は子供ではなく同級生なので踏み止まった。

 

(やっぱり、無防備なんだよな)


「もう一回やろ」

「時間的に次がラストだぞ」


 今のところ、ゲームを始めてから総司が五連勝しており、若干彼女とのプレイスキルには差があった。

 ただ、どうやら真白は負けず嫌いな所があるようで、次は勝つぞ! と負ける度に挑んでくる。

 

「分かってる。今度は勝つから」

「華麗な全勝フィニッシュを見せてやろう」


 ラストゲームに勝負をかける真白は、テレビの画面がより見やすい位置に座ろうとして、総司のすぐ隣に座り直す。


 それが彼の敗因となり、真白の勝因になろうとは二人は思いもしなかった。


(くそ! 集中できん。この煩悩め……!)


 ゲームが始まってからすぐに、総司は心の中で思わず自分に悪態をついていた。

 それは、真白の身体が直に触れるほど密着しており、集中力を欠いているからである。


 原因はレースゲームで良く起こる現象の所為だ。

 その現象とは、コーナーに差し掛かった時に、プレイヤーも一緒に体を左右に振ってしまう謎の動きのことだ。

 そのため、左側に曲がる際、左隣りにいた総司に真白が倒れ込んでくるようになっていた。


 すべすべで柔らかい肌に、先ほどから悩まされている甘い香り、全てが総司に襲い掛かって来ている。


 彼は何とか上位を保っているが、何度かミスを繰り返していた。


(もう少し、もう少しだ……)


 レースも終盤、総司が真白を追い抜いて一位を奪取するだけだ。

 たったそれだけだったのだが……


「いけっ!」

「うわッ!?」


 最後のコーナーで真白が勝つために、コースギリギリを狙って左へ曲がろうとして、ゲームと連動するように勢いよく急に体を寄せて来た。


 びっくりした総司は思わず真白の方をチラ見してしまった。

 すれば両手でコントローラー持ちながら斜めに倒れ込んできたが故に、真白の服のネック部分が緩んでおり、そこから胸元が見えそうになっていた。

 Vネックタイプの服だったことも災いした。

 

 ぎょっとした総司は操作をミスして、車をクラッシュさせてしまう。


「……勝った!?」


 見事に逃げ切った真白は、一瞬勝てたことが信じられないと、目をぱちくりさせリザルト画面を何度も見直したりしている。


「くそう」


 総司は単純に負けたことと、自分が情けないことでミスをしてしまったのを悔しがった。


「司さん油断大敵。最後、勝てると思った?」

「ま、まぁな。見事にやられたな」

「ふふん。これでやっと勝てた」

「はぁ……」


(負けたけど、なんでミスったかバレなくて良かったな……)


 真白は総司がどうしてミスをしてしまったのか、知らないようでコントローラーを手に両手を挙げて喜んでいる。

 そんな彼女を尻目に総司は、色んな意味でため息を付くしかなかった。


         # # #


「じゃあ、また明日な」

「うん」


 今日の試験勉強は一通り区切りがついたのでお開きとなった。


 わざわざ外にまで出て、一階にまで降りて来た真白が見送ってくれる。

 その彼女との別れ際に総司が手を挙げれば、真白も小さく手を振り微笑を浮かべていた。


 今日、一日彼女に何度可愛いと思わされたり、ドキドキさせられたのか分からないが、今もまた思わず撫でたくなるような衝動に駆られるほど彼女を愛らしく思った。


(駄目だな。完全に犬や猫を可愛がるような感覚になってる)


 しかし、それはほぼセクハラだし下手をすれば犯罪になるかもしれない。

 総司は何とか我慢して踵を返した、その時だった。


「あれ? 司さん? それと極夜さんも?」

 

 真白に背を向けた瞬間、一メートル手前に少し驚いたような表情で立っている少女がいた。


「え? 五十嵐……?」


 総司は訳も分からず、ただ目の前にいる少女の名字を呟く。

 そして盛大に頭を抱えた。

な、なんと驚いたことにジャンル別の日間ランキング92位になっていました。なろうのシステムには詳しくないので、間違っていたら申し訳ありません。

でも、92位と書いてあった事だけは本当ですw


そんなことかよとか、せめて一桁に入ってから報告しろよと思われるかもしれませんが、作者としてはものすごく嬉しかったです。

これも、皆様が評価して下さったり、ブックマーク登録をして頂いたおかげです。

本当に感謝しかありません。ありがとうございます!


これからも頑張ってまいりますので、本作品を面白い、続きを読みたいと思われましたら、ブックマーク登録、☆☆☆☆☆に色を塗って評価などをして頂ければ、大変嬉しく思うと同時に励みになりますので、よろしくお願いいたします。


※12/11 6:27 追記 

なんか投稿してすぐにもうランキングから消えてるだろうなと、見てたら70位に上昇してましたw 

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