友人彼女は仙人?
真白が帰った後、人に物を贈るという行為をまともにしたことが無い、総司はうんうんと唸っていた。
友人、それも同級生の女子にプレゼントをするハードルの高さは異常だ。
しかも誕生日プレゼントも兼ねているから、難易度はさらに上がっている。
同じ友人関係でも飛角であれば同性だし、好みや欲しがりそうなものも分からなくはない。
悩んだら適当にジョークグッズでも贈っておけばそれでいい。
彼の恋人である雪菜にしても、飛角と相談すれば解決する。
だが、真白に関しては別だ。
彼女の欲しがりそうなものは全く不明で、真白の趣味から考えるのもアリだが、そうなればすでに持っている物を贈ってしまう可能性もある。
なにより、女子に贈る物は慎重に選ばなければならない。
また恋愛感情を想起させるようであったり、親しい間柄で贈るようなものでは当然駄目だ。
友人としてプレゼントをしてもおかしくない品物の見極めは難しかった。
ならば、恋人がいる飛角に女性の好みを聞くのがベストだが、詮索されるに決まっているのでそれはしたくない。
そして、彼は最終手段一歩手前の方法を取ることにした。
因みに最終手段は飛角に聞くことである。
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「もしもし?」
『はい、雪菜です。こんばんは、司さん』
総司は雪菜に聞いてみることにしたのだった。
彼女は友人の恋人なので、無闇矢鱈に電話をしたりメッセージを送るのは憚られたが、今回は必要な事だと割り切って連絡することにした。
雪菜に相談があるとメッセージを送れば、二つ返事で引き受けてもらった上に、電話で相談に乗ってくれることになった。
「急に申し訳ない」
『いえいえ。司さんからこうして相談を受けるのは、初めてですから驚いてはいます。けれど、飛角君にではなく、わたくしに相談するということは彼には秘密にしておいて欲しいのですよね?』
「理解が早くて助かる」
彼の事情を聴かずとも、把握してるかのように話す雪菜。
飛角に似て頭の回転が速く、やはりカップルだなと総司は面白く感じた。
『それで、ご用件はなんでしょう?』
「ああ、普段世話になってる人に誕生日プレゼントも兼ねて、何か贈り物をしたいんだ」
『つまりその方は女性なのですね。そして、司さんは女性にプレゼントする物をどうしたらいいか分からず、同じ女性であるわたくしに助言を求めて連絡したのですね。得心いたしました』
「理解が早過ぎるだろ」
一を聞いて十を知るとはまさにこの事だ。仙人かよと総司はツッコミたくなった。
ただ、これはものすごく会話がしやすい。
雪菜の人気は真白並み(飛角と付き合っているので今はそれほど)だが、彼女のモテる理由が容姿だけではないことが分かる一幕だった。
「それで不躾な質問になりますが、その方とお付き合いはされているのですか?」
「いや、友人だ」
『では普段はどういった、交友をされているのでしょうか?』
「そうだな……料理を教えて貰ったり、勉強の面倒を見て貰ったりしてる。後は互いの趣味で色々遊んだりしてる。今度、一緒に釣りにも行く予定だったりもするな」
総司が贈り物をしようとしている相手の好みや傾向を把握するために、雪菜は分かりやすい質問形式で尋ねてくる。
『……一応、お聞きしますが週にどれくらいお会いになられているのでしょう?』
「だいたい、最近は週に四~六日くらいか?」
『え、えっと本当にお付き合いをされていないのですよね?』
「そうだけど?」
先ほどはなんでも見通しているような雰囲気だったが、今の雪菜はちょっと戸惑っている様子だった。
何かおかしかっただろうか?
確かに友人にしては遊び過ぎな気もするが、それは仕方がないだろう。
お互いに友人が少ないし、遊ぶ相手も限られているのだから。
その後も、いくつか質問され総司は素直に答えて行った。
『……分かりました。その方であれば調理関係の贈り物かインテリア系の可愛らしい置物、またはいやらしくない程度のアクセサリーなら贈っても問題ないですよ』
「なるほど。もっと具体的に聞いても良いだろうか?」
『はい。良いですよ』
色々とアドバイスをしてくれる雪菜。
総司はまだ不安だったので事細かに聞いてみるが、長電話に嫌がる様子もなく対応してくれるのは本当に頭が下がる思いだった。
そうして、約三十分に及ぶ相談の末、ようやく真白に贈るプレゼントの方向性が決まった。
後は買いに行くだけだ。
一緒に釣りに行くのは明日の予定だったが、先ほどの勉強会の際に大雨の予報が出ていることを知ったため、話し合って日曜日に延期させている。
つまり都合よく一日空くことになる。
「雨具ちゃんとあったっけな?」
大変な買い物になりそうだったが、お世話になっていることを思えばなんてことはない。
総司は大雨になる明日を案じて、雨具を探し始めた。
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