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同級生が所望すること

2個目の『# # #』から下に2行付け足しました。話の内容に大きな変更はありません。※12/14 4:21 追記

タイトルを少しいじりました。※12/17 4:06 追記

 真白がキッチンに籠ってから一時間半ほどが経ったところで、総司は宿題を終わらせた。


 しばらくはキッチンに入って来るなと言われたが、彼女はおそらくご褒美なるものを作っているのだろう。

 勉強中、いくらか甘い香りがしていた。


「おーい、俺は宿題終わったぞ。そっち行ってもいいか?」

「大丈夫。もう、料理の準備も始めてるから」


 そろそろ、料理を習う時間でもある。

 立ち入り禁止状態だとそれができないので、総司は許可を取ってキッチンへ入っていく。


「何を作ってたんだ? 匂いからして、お菓子っぽかったけど?」


 見たところ、調理スペースには何も置いてないので、ご褒美とやらは冷蔵庫の中だろう。

 総司が尋ねても、彼女は唇に指を当てて「秘密。夕ご飯を作った後に教えてあげる」と何も教えてくれなかった。

 

「なら、早速作ってしまうか」


 と素直な振りをして、総司は冷蔵庫を開いて食材を取り出すついでに正体を暴いてやろうとした。


「あ!?」


 冷蔵庫の扉を開ければ、ちょうど中央に段ボール箱が置れていた。つまり、その中にご褒美があるらしい。

 ただ、箱には「お見通し」と書かれたシールが貼ってあった。


「ふっ」


 やられた。総司のしようとしていたことは全て見抜かれたいたらしい。


 真白の方を見れば、彼女はちょっと馬鹿にしたような笑みを浮かべていた。

 悔しいがここまでされてはしょうがない。総司は大人しく夕食の準備を始めた。


         # # #


「俺もだいぶ上手くなってきたな」


 作り終えた夕食の出来を眺めつつ、総司は額の汗を拭う。

 因みに今日の献立は、豚バラにもやしとニラを混ぜた中華風炒めと、ひじきの和え物、お麩と鰯のつみれのすまし汁だ。

 どれも輝いているようで、とても美味しそうに見えた。


「司さんは、やればできる子」

「そこはかとなく馬鹿にされてるような」

「気のせい」


 彼の背中をトントンと叩く真白。

 口調こそ先生味があるけれど、先のような嘲笑を見た後だと、思い過ごしだろうが馬鹿にされているような気もする。


「そうだ。夕食も作り終わったし、俺が勉強してた間に何を作ってたのか教えて貰っていいか?」

「良いよ。でも、あっち向いてて」

「オーケー」


 彼女の指示に従い、総司は真白へ背を向けた。

 数秒待っていると彼女から「もういいよ」と言われたので、彼は期待しながら振り向いた。


「おお? これは?」

「チョコレートムース」


 振り返った先には、主に焦げ茶色の固形物が入ったデザートボウルがあった。

 見た目自体は美味しそうなのだが、それが何か分からなかったので、真白が教えてくれる。


「凄いな、めちゃくちゃ美味そうだ」

「食後のデザートにどうぞ」

「ああ、今から楽しみだ」


 それは見ているだけで、涎が出そうなくらいに立派な物だった。

 チョコレートムースを単に作っただけでなく、ミントの葉やココアパウダーで飾っている。

 手間をかけたものだと分かってからは、さらに美味しそうに思えた。否、絶対に美味しいに決まっている。


「チョコレートムースとか、この家の中にある物で作れたんだな」

「ううん。流石にほとんどの材料は家に取りに行った」

「そういえば、一度外に出てたな」


 わざわざそこまでして、作ってくれたのだから感謝しかない。

 宿題を頑張って良かった。

 今後もまたご褒美を用意してみるのもいいかもしれない。


         # # #


「うん、そう。それがレシピだから」


 総司は自分でもご褒美を用意できるように、真白からチョコレートムースの作り方をざっくり聞いていた。


「これは極夜にも何かお返しをしないとな」


 レシピが書かれた紙を貰った後、そう思わず口を突いて出た。

 ボードゲームや野球観戦、ボトルシップ作りをしたりと遊ぶ()()()に料理などを教えて貰っていたが、流石にお礼をしなければ悪いと思ったのだ。


「別にいいよ。私が勝手にやってるだけだから」

「そう言うわけにはいかないだろ。お前は何か欲しい物とか俺にして欲しい事は無いのか?」


 今度は総司がそう聞く番だった。

 勉強の途中に彼女に聞かれたことをそのままセリフにした。


「うーん。とりあえず、過激きけんな事でもやってもらおうかな。アメリカのYouTuberみたいな」

「お前、俺に何をさせるつもりだ!?」

「冗談」

「ったく、ここのところ、随分と俺で遊びやがって」


 ぎょっとすることを言われたので驚いたが冗談らしい。


 彼女がそれほど表情を変えず、真顔で言われるから本気っぽく感じてしまう。

 冗談と分かるには、()()彼女がそう言ってくれないと分からないのだった。

 

「で、何か無いのか?」

「一つだけ思いついたけど……」

「お、なんだ?」

「えっと……あの……」

「躊躇わずに言ってみるだけ言ったらいいぞ。俺に出来ることには限りがあるけどな」


 真白は何かを思いつたらしいが、どこか遠慮がちだった。

 総司はそのように促してみる。


「ん。それなら今度、一緒に釣りに行ってほしい」


 真白が提案してきたことは、一緒に釣りに行くことだった。

 なぜ、それを言うのに躊躇ったのかは分からないが、これなら総司に叶えられる望みだろう。


「駄目?」


 総司が「良いよ」とも「行こう」とも言わずに、「釣りか」とそう呟くだけだったので真白は不安になり、微妙に目を伏せて言う。


「いやいや、いいぞ。釣りに行こう。そう言えば、釣りの話はあんまりしなかったしな。じゃあ、いつ行こうか?」

 

 真白がちょっとだけ泣きそうに見えたので、彼は焦って早口になった。


「来週の土曜日は空いてる?」

「問題ない。場所はどうする?」

「この前、司さんが言ってた釣り堀に行きたい。釣り堀はあんまり行ったことが無いし」


 スムーズに場所と日にちは決まった。

 あとは、どんな釣り堀へ行くかだ。


「了解。普通の釣り堀か、海上釣り堀、どっちがいい?」

「海に行きたい」

「よし、決まったな。海の方ならここから電車を使わないといけないし、九時前に駅に集合でいいか?」

「うん。楽しみ」


 彼女はわくわくしながら、スマホにメモをしている。

 なにやら、もうリマインダーにも予定を書いているようで、旅行前の子供みたいだった。


 これだけ楽しそうにするのだから、それほど釣りが好きなのだろう。

 

 ただ、一緒に釣りに行くだけがお礼で良いのだろうか。

 総司はすでに海上釣り堀の事を調べ始めている真白を横目に、他にも何か用意してこうと当日の計画を立てるのだった。

ここまでお読み頂きありがとうございます。

面白い、続きを読みたいと思って頂けたら、ブックマーク、☆☆☆☆☆に色を塗って評価などをして頂ければ、大変嬉しく思うと同時に励みになりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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