Side BECK 9
また、夢を見た。
彼女が出発する前日の夢だ。
「遂に明日か」
「ええ!明日から半年間、先進医療の研究に携わる事が出来る。やっと、私の夢が叶う」
「おめでとう」
「ありがと、イーサン。私が居ない間の事、宜しくね」
「もちろん、そっちこそ忘れ物しないようにしろよ」
「わかってる。ねえイーサン」
「ベック、三時間経ったぞ」
ジョニーにそう言われて、目が覚める。
彼女は俺に何か言おうとしていたようだったが聞く事が出来なかった。
「ありがとうジョニー、休んでて良いぞ」
「じゃあお言葉に甘えて」
ジョニーはそう言うと、床に敷いてある毛布に寝転がる。
俺は、俺以外の全員が眠っている事を確認して、コピーしたブラックボックスのデータを開く。
大半は、どんな研究をしていたかや、乗組員の船内での様子等が記録されていた。
その長いにはアリシアの記録もあったが、ひとまず見ない事にする。
「何処だ?」
ホログラムを下に何度もスライドして行くと、あった。
「これか」
『10月10日』
9時42分 エンジン停止
10時12分 実験体脱走
11時42分 熱暴走により機関室爆発
・・・ここから先の記録はありません・・・
「実験体?」
俺がそう呟くと。
「どうかしましたか?」
と誰かに声をかけられた。
「誰だ!」
アリスだった。
「それ、ブラックボックスの記録ですか?」
俺は慌ててホログラムを閉じるが、アリスにしっかりと見られてしまった。
「そうだ」
誤魔化すより正直に言った方が良いだろうと思い、そう答える。
「私にも見せてください」
予想外の言葉だ。
「私も、気になる事が有るんです。あなたにも有るから見ているんでしょう?」
「あ、ああ」
「なら話は早いですね」
そう言うと、アリスは俺の横に座った。
俺は再びホログラムを開く。
暫く二人で情報を確認するが、何故か知りたい情報は手に入らなかった。
「この実験体ってやつ」
「ええ、気にはなりますが恐らく爆発で死亡したかと」
「ところで、あんたの気になる事って」
俺はアリスにそう言う。
「事故の原因と、姉さんの記録です」
「姉さん?」
「はい、名前はアリシア、アリシア・ジョーンズ。私の腹違いの姉です」