Side BECK 4
夢を見た。
時系列は前の夢よりも前だ。
彼女と映画を見ている時の夢。
テレビ画面から目を離さないまま、彼女がこう言った。
「私ね、この人の事、ちょっとだけ尊敬してるな」
映画の登場人物の女性に対しての言葉だった。
「 」
俺は彼女の言葉に何と返したんだったか。
「そうだね。でも、医療の未来の為に尽くせる所、尊敬しちゃうな」
「 」
「私ね、この人みたいに、医療の未来の為の研究に関わりたいんだ」
映画のタイトルも、内容も思い出せ無かったが、そう言った彼女の横顔はとても鮮明に思い出せる。
「この映画のタイトルも神秘的で良いよね。昔妹と見に行ったなぁ」
三日目、朝食後にアリスに呼び出され、倉庫から耐圧潜水服を加圧室に運び、それを着て、アリスから渡された水中銃を肩から掛ける。
そして、遂に俺は深海に出る。
加圧室の中は、さすがに三人で入ると狭かった。
「ニア、リック。押すぞ?」
二人が頷いたのを確認し、俺は注水ボタンを押した。
すると水が足元から上がって来る。
暫くすると注水完了の表示と共に入って来た方とは逆の扉のロックが解除された。
「行くぞ」リックが力強くそう言った。
深海に降り立つと、砂が舞い上がり、視界が一瞬砂で覆われる。しかし直ぐに砂は海底に落ちて視界は良くなる。
もし暗視スキャナがなければ視界は閉ざされたままだっただろうなと思いながら、リックの方を見て頷く。
「こっちだ」
リックは腕に付いているデバイスを確認すると歩き出した。
俺とニアはリックに着いていき、調査ポイントに向かった。
「酷いな」
調査ポイントに到着してまず最初に出た感想は、それだった。
あちこちに残骸が落ちていて、ほとんど原型を止めていない。
「始めるぞ」
リックの言葉を聞いて、俺達は離れ過ぎないようにしながら残骸の調査を始める。
俺はあるものを誰よりも早く見つける為、行動を開始した。
直ぐにそれは見つかった。ブラックボックス、これを解析すれば事故の原因がわかるはずだ。
俺はブラックボックスを渡されたケースに仕舞う前に、左腕のデバイスに接続し、中のデータをコピーした。
「これで良し」
こうしておけば後でデータを確認できるという訳だ。
俺は通信回線をオンにして、ブラックボックスを回収した事を伝え、再び調査を再開した。
その後、破片や何らかの生物等、回収できる物を全て回収して、リックが「これ以上は回収できない」と言って俺達が調査船に帰投するまで三時間かかった。
そして、俺達は来た道を戻って調査船に帰投したのだった。