Side BECK 2
俺はジョニーとチャップマンの二人と共に、アルゴ号が停泊している港を歩いていた。
「ここが集合場所か?」
「そうだ」
ジョニーの問いに俺は答える。
そう言えばジョニーに集合場所を伝えて無かったな。
「なんだ、知らなかったのか!」
チャップマンがその巨体を揺らしながら大笑いする。
「すまない、忘れていたんだ」
俺はジョニーに謝る。
「まあ、良いけどよ」
ジョニーはそんなに気にしていないようだ。
暫く歩くと、潜水艦が停泊しているのが見えた。
俺は潜水艦に近付き、なにやら端末を持って扉の前に立っている女性に話しかける。
「こんにちは、オルフィス製薬の調査船はこちらであってますか?」
「はい、そうですが。あなた方は?」
「護衛のイーサン・ベックです」
俺が自己紹介をすると、チャップマンとジョニーも続いて自己するのした。
それを聞いた彼女は手元の端末と俺達の顔を交互に見て、「はい、確認しました。ようこそアルゴ号へ」と言って、俺達を艦内に迎え入れた。
艦内は意外と広く、奥から出て来たオルフィス製薬の社員の女性に促され、ソファーに座って、乗組員が全員揃うまで待った。
暫くして、乗組員が全員揃い、自己紹介をする事になった。
先ほどの女性はアリスと言うらしい、この艦の船長を勤めるんだとか。しかし副船長のリックの方が頼りになりそうな見た目をしていた。
もう一人の副船長は扉の前に立っていた女性だった。名前はナギサと言うらしい。こちらもあんまり頼りになりそうな感じだ。
研究員の二人組は、何を考えて居るかわからないと言った印象だ。
船医のアルバートは信用できそうだ。
機関士のエライアスはなんとも頼りになりそうだ。
コックのミカエラは美人さんと言ったような印象だ。
最後に俺達も各自自己紹介をし、その後アリスから説明を受けて、解散した。
解散後、ジョニーの呼び掛けで俺達護衛三人はジョニーの部屋に集まっていた。
一応護衛として艦内の見回りをしておこうと言う事らしい。
正直言ってこれは助かった、色々と見ておきたかったので、艦内をうろうろしていても、護衛としての見回りと言えば怪しまれずに済むからだ。
俺達はジョニーの「三時間ごとに交代」と言うアイデアを採用し、じゃんけんで順番を決める事になった。
俺はやれやれといったような雰囲気を作りつつ、わざと負ける事で最初の担当になる。
「俺の負けか、じゃあ行って来る」
俺はそう言って配給された装備に身を包む。
防弾ベストを着用し、威力の高い空気銃(まともに弾が当たれば骨が折れる威力)をスリングで肩から掛ける。
そして、俺は二人に見送られて部屋を出る。俺はまず最初に、アリスの部屋に向かう事にした。
船内マップを頼りに、アリスの部屋に向かう。
この潜水艦は、三層構造になっていて、最下層が機関部、中層は食堂や倉庫、最上層は乗務員室と操舵室となっている。
今いるのが最上層で、アリスの部屋は操舵室の近くに有るため、操舵室に向かって行けばアリスの部屋に着くという訳だ。
アリスの部屋に着くと、俺は扉をノックする。すると「はい、どうぞ」という声が聞こえて来たので、扉を開いた。
部屋に入ると、アリスはソファーに座って紅茶を飲んでいた。
「休んでいる時にすまない」
「いえ、大丈夫です。何か?」
「見回りで来たんだ」
「仕事熱心ですね」
「まあな」
「異常ありませんよ」
「そうか。ところで、いつ調査ポイントに到着するんだ?」
「明後日です」
「そうか、わかった」
「はい、他の部屋を見に行ってください。ここは大丈夫ですので」
アリスのその言葉を聞いて、俺は部屋を出た。
その後、全員の部屋を訪ねて、怪しい物が無いか確認しようとしたが、どうやらそれぞれ持ち場に居るようで、部屋を確かめる事は出来なかった。
操舵室には入れない以上、ナギサとリックから話しを聞く事は出来ない、よって最上層は一通り見て回った事になる。
「まあ良い、機会はまだあるさ」
俺は中層に降りる為の階段に向かった。
中層に降りてから、食堂でエライアスとミカエラに、救護室でアルバートに会ったが、これと言って情報を得る事は出来なかった。
倉庫も一応確認したが、耐圧潜水服や、非常食が有るだけで、怪しい物は何もなかった。
最後に研究室の前を通りかかる。
研究室は鍵がかかっていた為、中に入る事は出来なかったが、ニアとウィリアムの会話を聞く事は出来た。
会話の内容をまとめると、二人は超再生細胞なる物を回収する為に来たらしい。
そしてそれは、俺が知りたい事に繋がっていると、直感的に感じた。
その後、特に何事も無く見回りは終わり、交代する。
そして夜の見回りの為に仮眠を取った。
そして交代の時間、夕食が出来たと艦内放送が入る。
そして夕食を食べ、二人と相談して二時間余分に見回りに出るが特に何事も無く終わり、チャップマンと交代した。
こうして潜水艦での一日目は終了した。