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第九節 戦い、終わって

「いやー、ほんまに助かりましたわぁ!」


爆破に礼を言う狩人・関西支部の男。


「いやな、超能力者や武装部隊も、こちらの支部にも居りますねんけど、先刻のドンパチで負傷してもうてやなぁ、戦える状態では無かったんですわぁ」


「そうなんですね。お役に立てて光栄です。……一つ、質問しても宜しいですか?」


爆破は問う。


「はぁ、なんでありますか?」


「市は、そして貴方の部隊はこの川の状況をどうなさっているのでしょうか?」


真剣な表情の爆破。


「はぁ……そりゃあ、ゾムビーが出てきよったら戦うて倒してますわ。市の方は、えーと、緊急速報や避難警報を放送してるんとちゃいますの?」






「そういう事ではありません!」






答えた男に、強い口調で言う爆破。


「なな、な?」


動揺する男。


「川周辺の環境、酷過ぎると思いませんか? 川にも道端にも、ゴミ、ゴミ、ゴミ。異臭もしています。これではゾムビーが発生しやすいのも、無理はありません。いえ! もはやゾムビー以前の問題です。立って歩ける土地がある事に感謝し、綺麗に保とうとは思わないんですか?」


「ぐぐぅ……仰る通りですわ……」


爆破の言葉に、言い返す言葉が無い男。


「これではいくらこちらが駆けつけようとも、再びゾムビーが発生する事の繰り返しで、キリがありませんよ? 川だけでなく、この土地全体の環境保護活動にも、力を入れて下さい」


「分かりました」


頭を下げる男。




――数週間後、川周辺にはゴミ箱の設置、ごみのポイ捨て禁止を呼びかけるポスターの貼り付けや、声掛け等が行われるようになり、少しずつではあるが、環境改善の兆しが見えつつある。時間は掛かるが、いつの日か、川やこの土地の環境が綺麗な状態に保たれる日が来るだろう。




――大阪での戦いが終わった夜、かに〇楽にて。






「かんぱーい!」






「かにダァ――」


「こいつぁ旨いかにだぜぇえ!」




逃隠、抜刀がおいしそうにかにを食べている。


「今日は私の奢りだ。じゃんじゃん食べてくれ。東店は少し破壊してしまったが、ここは無事だ。ここの店舗にお金を使い、少々詫びを入れなければな。それと、ホテルはもう用意してある。ゴク……ゴク……ゴク……プハァ――――、生き返る」


爆破は明るく言い、ビールを飲む。一方で主人公。


(ああ、結局、泊まりか……明日の午前の授業も……出られない。勉強、追いつけるかなぁ?)


「どうした? ツトム。顔色が優れないぞ?」


爆破が主人公を心配する。


「あ、いいえ。ゴク……ゴク……プハァ――、おいしいです。烏龍茶」


烏龍茶を飲み、気丈に振る舞う主人公。


「そうか、はは。ならいい」


爆破はお酒が入っているせいか、いつもより明るい。


「ははは、……ところで、今日もすごかったですね。スマシさん。一人で石のゾムビーを倒しちゃうなんて……」


主人公が話を切り出す。


「いや、ギリギリのところだった。無理をしたせいで、もうクタクタだ。ふわぁ――あ」


大きな欠伸をする爆破。顔を机に伏せる。


「……もっと……強くならないと、な…………すー……すー……」


寝始めてしまう爆破。


(……超能力を使うのって体力がいるからなぁ。スマシさんですら、疲れちゃうコトだってあるんだよな)


優しく見守る主人公。




「爆破隊長ー!」


「吞みましょオ――!」




抜刀と逃隠が元気に言う。


「しー」


主人公は、二人に向かって人差し指を立てる。


「ん?」「ア……!」


二人は爆破の様子に気付く。


「寝てらぁ」


「隊長っテ、こうして見ると結構可愛いんだナ」


「店を出る時までは、寝かしておいてあげよう」


三人は暫く爆破の寝顔を見てから、かにを満喫した。








――翌朝、主人公達が泊まったホテルにて。


「よーし! 皆居るか? ホテルを出るぞ」


1階ロビー。狩人隊員たち全員が帰る支度をしていた。


「!」


主人公が何かに気付く。


「スマシさーん! ちょっと、時間下さい!」


遠目から爆破に頼み込む。


「ん? 何だツトム。5分以内にしろよ」


「はーい!」


爆破に返す主人公。そのまま、お土産コーナーに立ち寄った。


(……これにしよう!)


主人公はタコ焼きさんと言うタコ焼きをモチーフにしたキャラクターのキーホルダーを購入した。


「すみませんでしたー」


走って玄関まで来る主人公。


「何かと思えば、お土産か、ツトム。誰にあげるんだ?」


爆破が問う。


「えへへ。内緒です」


主人公は答えなかった。




「ファアアン!」


新幹線は行く。大阪からK県へ向け、ひた走る。




――数日後、狩人ラボにて。主人公がいつものように認証キーを入り口で使い、ラボに入った。手には大阪でのお土産を握りしめている。


「ウィ――ン」


とある部屋へ辿り着いた。研究室である。


「お疲れ様です」


主人公は研究員に挨拶する。


「ああ、お疲れ」


研究員は挨拶を返す。主人公は部屋の奥、ガラス張りの場所へと歩いていく。




「あ! ツトム君!」




尾坦子が気付く。


「尾坦子さん! こんにちは!」


「こんにちは」


二人は挨拶を交わす。


「今日は、渡したい物があって……」


手にしていたお土産の袋を開ける主人公。


「何かしら?」


尾坦子は興味津々の様だ。


「じゃじゃーん! キーホルダー! この前、大阪に行ってきて、そこで買ったんだ」


タコ焼きさんを見せる主人公。


「ふふ! カワイイ! ……でも、この中に入れられないよ? あと、私が手にしたら、溶けちゃうかも知れないし……」


少し表情を濁らせる尾坦子。


「ふっふっふ。そこでね」


ガサガサとカバンから何か取り出す主人公。


「これ! メタルフック」


百均の小さなフックを取り出す主人公。


「あら!」


驚く尾坦子。


「これをガラスに付けて、と……こうすれば、飾ることができるでしょ!」


主人公はフックをガラスに張り付けて、尾坦子に見えるようにタコ焼きさんをフックに吊るした。


「わぁ……ナイスアイデア!」


尾坦子は上機嫌の様だ。


「研究員の方、ここにコレを飾ってても大丈夫ですか?」


主人公は研究員に問う。


「ああ、内部に影響が無い様だからいいよ」


「ありがとうございます!」


主人公は研究員に返す。


「ありがと、ツトム君」


主人公に礼を言う尾坦子。


「喜んでくれて、嬉しいよ」


「またどこか行ったら、何か買って来てね!」


「ははは……(結構欲しがりなんだ、尾坦子さん……)」


少しばかりたじろぐ、主人公であった。



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