第八節 光の中に
「ズズン……パラパラパラ」
かに〇楽の看板であるかに(模型)がバラバラに壊れ、落下していく。
「あア……かニ……」
逃隠がショックを受けている。抜刀が口を開く。
「気に病むな……アレは……食べられない……!」
「ケ、けド……!」
思わず口を開く爆破。
「何をやっとるんだ! キサマらの寸劇に付き合っとる暇は無い! 進むぞ‼」
「ハ、はイ!」
「お、おう!」
焦る二人。すると、
「ゾ……」「ゾゾ……」
通りの3時の方角から、ゾムビー達がぞろぞろと姿を現してきた。
「来たな……全員、銃を構えろ!」
爆破の指示で、狩人隊員達が銃器を構える。
「……撃てぇえ‼‼‼」
「タタタタタタタタ!」
爆破の号令で、銃を発砲する隊員達。
「ゾ?」
「ゾゾゾ?」
銃弾を喰らうゾムビー達。暫く発砲は続く。
「シュ――――」
発砲が終わり、辺りに煙が立ち込める。暫くして煙が消え去ると、ゾムビー達が居た方向がしっかりと目視できるようになった。
「!」
爆破が目を見開く。そこには幾つかのゾムビーの残骸と、それをよそに平然と立ち尽くすゾムビー2体の姿があった。
「……やはりここにも居たか……石の……ゾムビー!」
爆破がつぶやく。
「!」
即座に、爆破は通路の奥の方に目をやった。更にゾムビー達が、奥から現れてきたからである。
「まだ来るか……では、ここで試しておく必要があるみたいだな。保管小隊、例の物を」
爆破が保管小隊に指示を出す。
保管小隊とは、隊の物品の受領、検査、保管、払い出し等の業務を行っている小隊の事である。
「ハッ」
保管小隊の隊員が返事し、とあるケースから小さなモノを取り出す。
「パッ」
それを握りしめる爆破。
「(上手く行くかどうか……)石よ……指し示せ!」
爆破は手にした例の紫色の宝石をゾムビーの方へかざした。
「キラッ」
すると、前に立っていたゾムビー2体と、奥から向かって来ようとしていたゾムビーの内、1体の体の一部が、光り輝いていた。
「スマシさん! あの光は……?」
主人公が爆破に問う。爆破は声を大きくして言った。
「ああ。皆! よく聞いてくれ! 今、体の一部が光り輝いているゾムビーは、石のゾムビーだ! 更に言うと、光り輝いている部分に、ゾムビーを強化している宝石がある!」
「……なるほド!」
「へっ、そいうことか!」
そっと言う逃隠と抜刀。二人は走り出す。
「タあああああああ‼」
「オラアアアアアアアア‼」
ゾムビーの、光り輝いている部分の付近を斬りつける二人。
「ゾォオ!」
「ゾ!」
横に真っ二つになり、崩れ落ちるゾムビー2体。その切り口からは、光り輝く石が。
「ピッ!」
「スチャ!」
二人はそれぞれ、剣先に石をのせた。
「やったぜ!」
「後は任せタ!」
後ろを振り返り、言う抜刀と逃隠。
「スタッ」
二人は横に除ける。
「リジェクト!」
「バースト!」
主人公と爆破は超能力を用い、石が無くなったゾムビーを攻撃する。
「ドシャアアア‼」
「ボボンッ‼」
大破するゾムビー達。
「よし! 隊員達は、次に奥から来るゾムビー達を狙え!」
「タタタタタタタタ」
爆破の指示を皮切りに狙撃が始まる。
「シュ――」
ゾムビーは石を取り込んでいる1体のみとなった。
「よシ!」
「へへっ。お次も」
ゾムビーに斬りかかろうとする逃隠と抜刀。しかし、
「待て」
「⁉」
「⁉」
爆破は言う。
「私事で本当に悪いのだが、見た所、相手は1体。暫く、新手は現れそうにない。そこで、自分の実力を確かめておこうと思ってな」
「それっテ……」
逃隠が疑問に思う。
「サケル、セツナ。下がっていてくれないか? 私一人でどれだけ通用するか、試してみる。だが、万が一危なくなったら、頼むぞ」
爆破は言いながらツカツカと歩いていく。道を開ける逃隠と抜刀。
(初めて……スマシさんが石のゾムビーと、一人で対峙する。やれるのか……? でも、スマシさんなら……!)
不安と期待を寄せる主人公。
「ザッ」
爆破とゾムビーとの距離は、バーストの射程圏内に入った。手にしていた宝石をしまう爆破。
「さて……これはもう、今は必要無い。一人になってしまったな、化け物。今からその体内にある宝石と……お前の命を、貰う‼」
手をゾムビーにかざす爆破。
「……バースト」
「ボンッ‼」
爆発するゾムビー。
「やったか⁉」
爆風から身を守りつつ、ゾムビーの方向を凝視する主人公。立ち込めていた煙が消える。すると、
「ゾ……」
そこにはほぼ無傷のゾムビーが立ち尽くしていた。
「やはり、一筋縄ではいかないか、石のゾムビー……ならば!」
「ボッ!」
再びバーストを放つ爆破。更に続けてバーストを放つ。
「ボンッ! ボッ! ボボッ! ボボンッ!」
(凄い! ……あんなに連続して……)
息を呑む主人公。
「! ! ! ‼」
攻撃の手を休めない爆破。
「ゾ……ゾ……ゾォ……ォ……」
初めの内は再生できていたものの、連続した攻撃を受け、次第に体が欠けていくゾムビー。みるみる内に体が小さくなっていく。
「ボッ! ボッ!」
爆風が立ち込める中、そこにいた全員に戦慄が走る。
「……ごくリ」「す……すげぇ」「隊長……」
ただ立ち尽くす事しかできない逃隠、抜刀、狩人隊員。
(そろそろ、仕上げか? ……全力を超える一撃を、喰らわせてやる……‼)
目をキッとさせる爆破。
「バーストォオオオ‼」
「ボボォオオオン‼‼‼」
ゾムビーが大爆発した。
「ゴォオオオオ‼」
さっきまでとは比べ物にならないほどの強い爆風が、辺りに吹き荒れた。
「ぐあっ」
主人公達は思わず手で顔を覆う。
(凄い爆風だ……気を抜くと、吹き飛ばされそうになる)
腰を低くして、なんとか持ちこたえる主人公。
「ビュォオオ……」
暫く吹き荒れた風が、ようやく止んだ。
「!」
前方を確認する一同。そこには、直径10mほどの穴が地面に開いており、ゾムビーの姿は跡形も無く消え去っていた。
「キラッ」
穴の上空に光り輝くモノが。
「カランッ」
上空から落下してきたもの、それは紫色の宝石だった。それを拾い上げる爆破。
「恐ろしく硬い宝石だな。これだけは破壊できなかった……まぁ、1体なら、なんとかなるな! よし、皆。次は周囲の状況確認だ」
あっけらかんとしている爆破に、たじろむ一同。
(1体なら……ねぇ)
(はわわわワ)
(凄い……本当に一人だけで倒すなんて……)
抜刀、逃隠、主人公がそれぞれ思いを巡らせる。
「? どうした? 皆。行くぞ」
爆破はキョトンとする。
「ハ、ハイ‼」
一同は答える。――その後、3時間にわたる川周辺の探索が行われたが、ゾムビーは1体たりとも姿を現さなかった。ただ、ゴミ等による周囲の環境の悪さが目についた。