第七節 ゾムビー過多
――5、6分後。
「ダダダダダダ! ザッ‼」
一同が道頓堀川を発見する。
「あ……あれ……」
「グ……グリ……」
「グリ〇……ダ……」
「……」
主人公、抜刀、逃隠が口々に言う。隊員達は無言。そこには、大阪名物・道頓堀グリ〇サインが存在していた!
「おっと、大阪に来たことは無いので、道に詳しくないものでな。何故だか観光名所の様な所へ一番に到着してしまった」
少し笑顔で言う爆破。
「パシャッ」
逃隠はおもむろに携帯で写真を撮る。
「こら! 止めんか‼ 観光に来たわけではないんだぞ!」
爆破は注意する。
「あ……つイ。すいませン」
逃隠は頭を掻きながら謝る。
「全く……」
腕を組み、呆れた様子の爆破。
「……それにしても」
主人公が辺りを見渡す。
「川を含めて、ここら辺って結構汚いんですね」
通路や橋、川には、空き缶やタバコの吸い殻、ナイロン袋等のゴミが捨てられていた。
「いかにもゾムビー達が好みそうな汚さだ……」
爆破が口を開く。と、
「あ! あれ‼」
主人公が何かを指差した。指差した先は道頓堀川の水面だった。一同その方向を見る。
「ゾ……ゾ……」
それはゾムビーが川から上がり、川の縁の壁を登っている正にその時の様子だった。
「ツトム!」
爆破が叫ぶ。
「ハイ! リジェクトォオオ‼」
リジェクトを放つ主人公。
「ドシャア!」
「ゾ……」
粉々になったゾムビーの残骸は、川へ落ちていく。
「ザッバーン! ザバッ! バシャ」
ゾムビーの残骸は大小様々あったようだった。水面を波紋が広がる。すると、
「ぶくぶくぶくぶく」
残骸が落ちた付近から泡が吹き出てきた。
「! 何だ⁉」
身構える爆破。
「ぶくぶくぶく」
「ぶくぶくぶくぶく」
「ぶくぶく」
次第に、泡は残骸が落ちた所以外からも出てきた。
「おいおいおい」
「ごくリ」
焦る抜刀と逃隠。静まり返る周囲。そして――
「バシャアアアアアア!」
大量のゾムビー達が川から姿を現した。
「何! 15! いや、20は居るぞ」
流石の爆破も動揺する。
「おいおい、どうするんだ?」
「水中じゃア、戦えなイ……かと言っテ、上がってくるを待つのカ……?」
抜刀、逃隠が口々に言う。そんな中、キッと目つきを鋭くする主人公。
「リジェクトォオオ‼」
「ドバシャアアア」
水面付近のゾムビー達に向かってリジェクトを放つ。
「ゾゾゾォ!」
「ゾォオ!」
5、6体のゾムビーが同時に弾け飛ぶ。続けて爆破に話し掛ける主人公。
「スマシさん! 10秒以内に、次のが打てます! 指示を!」
「あ……ああ! セツナ、サケルはなるべくゾムビーに近付いて待機! 銃を持った隊員達はヤツらに射撃だ! 私もツトムと一緒に遠隔から攻撃する!」
「隊長‼」
指示を終えた爆破に、隊員の一人が話し掛ける。
「何だ⁉」
「川の南方の通路を通り、3時の方角からゾムビーが列を成して近付いてきています!」
「何⁉」
爆破は言われた通路の方を見る。するとゾムビー達が一列になってぞろぞろとこちらへ歩み寄て来ていた。
「くっ……作戦変更だ! セツナ、サケルは南方の通路へ行き、3時の方角から来るゾムビーを迎え撃て! また! 隊の半分はそれに加勢。残り半分は、ここに残って川に居るゾムビーを攻撃だ!」
爆破は再び指示を飛ばす。
「ラジャー!」
「ダダダダダダダ」
移動を始める隊員達。
「(さて……私もそろそろ行くか……)バースト……」
「ボッ‼」
「バシャアアアアアア‼」
水面が、ゾムビーごと激しい飛沫を上げて爆発する。爆破が言う。
「橋や川の整備を壊しては、戦いにくくなるのでな、川の真ん中を狙ってやった……全員、川の端に居るゾムビー達を狙撃しろ! ヤツらを川から上がらさせるな!」
「ラジャー‼」
「タタタタタタタタ‼」
銃声が鳴り響く。
――一方で、川南方の通路。
「ズバァアア!」
「ダッ……バシャアア!」
歩いて来るゾムビーの群れを抜刀が斬り、逃隠はタックルを喰らわせて倒す。
「ゾム……ゾム……」
それでも尚、3時の方角からぞろぞろと湧き出てくるゾムビー達。
「くそ、キリがねぇ……」
抜刀が言葉を漏らす。
「なんダ? その弱気発言ハ。俺はまだまだ余裕だゾ?」
逃隠が軽く挑発する。
「んだとぉ⁉ こんなやつら、5分で全員叩き切ってやらぁ‼」
挑発に乗る抜刀。
「……ふン」
逃隠はそっぽを向いた。
「抜刀隊員! 逃隠隊員! 少し下がっていて下さい‼」
狩人隊員の一人が叫ぶ。
「!」
「!」
「ザッ」
二人は道の両端に飛んだ。
「タタタタタタタタ‼」
隊員達が銃器を発砲する。
「ゾォオオ!」
「ゾ!」
狙撃され、崩れ落ちていくゾムビー達。6人による狙撃で、一遍に6、7体のゾムビーが葬られた。
「道を開けました。今の内に進んで下さい!」
「おウ!」
「サンキュー!」
隊員の言葉に、返す逃隠と抜刀。
――再び、道頓堀川。
「リジェクト!」
「バシャアアア‼」
水面が飛沫を上げる。飛び散るゾムビーの肉片。
「バシャ! ……ザバッ! ……ザブン……」
次々と肉片は川へ落下していった。みなもに波紋が幾つか出来る。波紋が全て収まった頃、爆破が口を開く。
「……終わったか……。念のため、隊員の内、3名はここに残って警備するように! 私とツトム、残りの隊員は南方の通路へ急ぐ!」
「ラジャー!」
「タッタッタッタッタッ」
南方通路を走る一同。辺りにはゾムビー達の残骸が無数に散らばっていた。それを見て、言う主人公。
「こっちにも、結構な数が居たんですね」
返す爆破。
「……そうだな、だがこちらへ向かった隊も、うまく戦ってくれている様だな」
「ええ……」
そのまま走る一同。暫く走ると、その先に抜刀、逃隠を含む数名の狩人隊員達が佇んでいた。
「どうした⁉ 皆‼」
近くへ寄り、爆破が言う。
「ア……あレ……」
「あ……ああ」
逃隠が何か建物の方を指差し、抜刀がゴクリと息を吞む。
「ん?」
爆破も逃隠が指差した方向を確認する。
「ゾム……ゾム……」
「ゾ……ゾ……」
そこには、かに〇楽の看板のかに(模型)に群がる、3体のゾムビーの姿があった。
「アレは……かに……?」
「かにだ……」
「あア……かにダ……」
爆破、抜刀、逃隠が口々に言う。
(本店のかには、ちょっと前に通り過ぎたが、ここにも……そうか! ここは東店‼)
爆破は思いを巡らせる。すると、
「パシャッ」
またしても逃隠がおもむろに写真を撮る。
「こら! だから止めんか‼」
爆破は再び注意する。
「ははハ……つイ……」
頭を掻きながら言う逃隠。
「リジェクトォオオ!」
主人公はゾムビーの内の1体にリジェクトを放つ。
「バシャアア!」
弾け飛ぶゾムビー。
「ギシ……ギシ……」
揺れるかに。
(かにがァ――――!)
怯える抜刀と逃隠。
「スマシさん! 見ている場合じゃありません! ヤツらを倒さないと‼」
主人公は言う。
「あ、ああ……そうだな。……バースト!」
「ボンッ‼」
爆破は残り2体のゾムビーごと、かにを爆破させた。
「かにがァ――――‼」