第二節 ショッピングモール
「しあわせー、広がるー、楽しいお買い物―、みんなのーみんなのーショッピンモー……」
――K県某所のショッピングモール。がやがやと人が賑わいを見せている。
フードコートで食事をする者、
服を買う者、
布団など、寝具を見ている者、
ゲームを試しにプレイする子供、
ペット用の犬や猫を眺めている者など、様々である。
このショッピングモールは、それなりに大型で、3階建て且つ多数のフロアが存在する。――2階、男子トイレ。トイレ内に軽く列ができる程、中は混雑していた。その個室にて――
「ふい――、間に合った間に合った」
一人の男性が用を足していた。
「ザザ――」
水を流す。
「ガチャガチャ」
ジーパンを履き戻し、ベルトを留めている男性。と、
「ゾ……」
「あん?」
便器からの不気味なうめき声に気付く男性。何気なく便器を覗き込む。
「…………ゾゾ――――‼」
「バシャアア‼」
「シュイ―ン、シュイーン。映画泥棒は、犯罪です。○○年以下の懲役、または○○万円以下の罰金、もしくはその両方が科せられます」
――3階、シアター。映画の放映前のコマーシャル等が流れている。
「パッ」
すると、突然スクリーンが真っ暗になり。シアター内の照明が点いた。シアターを含む、ショッピングモール内にアナウンスが響く。
「ご来店中のお客様方、落ち着いて聞いて下さい。只今、2階、中央の男子トイレにて、ゾムビーが発生しました。お買い物中申し訳ございませんが、直ちに2階中央のトイレを避けて、西側か東側のエレベータを利用するなどして、避難して下さい。繰り返します……」
ざわつくショッピングモール内。
「ゾムビー? あの沼とか、きったねぇ所に出る奴?」
「何かの間違いでしょ? こんな街中に出没する訳ないわ」
「ハンバーガーとポテト食べたーい。その後、隣のアイスも!」
ショッピングに来ていた客は、危機感を全く感じず、そのまま買い物を続ける。ショッピングモール内の店員も、連絡が遅れている事と、客の様子に流されたせいか、そのまま業務を行ってしまっていた。
――そんな中、2階中央男子トイレ付近にて。ショッピングカートを押す客がちらほらいる。
「ひた……」
男子トイレの入り口から水気を帯びた足音が。
「ん?」
その音に気が付く客。それはゾムビーがトイレから歩いて出てきた時の、正にその音だった。
「きゃああああああああ‼ ホントに居たぁぁああああああ‼」
叫ぶ客。ショッピングカートを置き、その場から逃げ去る。
「何だ何だ?」
周辺に居た客達も、逃げて行った客の様子に異変を感じ、トイレの方を見る。
「!」
ゾムビーが2体、トイレから姿を現していた。
「ぎゃああああああ! マジだったぁぁああああああああ‼」
周囲は混乱した。トイレ内には10体ほどのゾムビーがうごめいていた。
「いやああああああああああ‼」
「うわああああああああああ‼」
トイレ周辺の様子を見た客のほとんどは、その場から走り去る。
「まっ、待ってくれ!」
腰を抜かした男性が一人、周りに助けを求めていた。しかし、助ける者はいない。
「ゾ……」
「ひっ」
男性が振り返るとゾムビーが体液を口一杯に含んで吐き出そうとしていた。
「あ……うわ……」
「ゾムバァアア‼」
「バシャアア‼」
「はい! かしこまりました! すぐ、そちらへ向かわせます」
――狩人ラボ、オペレータールーム。3人いる女性オペレーターの内の一人がヘッドホン付きのマイクで対応を取っている。
「O市M町のショッピングモールにて、ゾムビー発生。戦闘員は至急現場に急行せよ。繰り返す……」
「!」
「!」
ラボ内のアナウンスに気付く、オフィスルームでお茶を飲んでいた爆破と、トレーニングルームで筋トレをしていた身体。
「ザッ」
ショッピングモール駐車場に駆け付けた、爆破、身体、逃隠、抜刀、主人公、そして隊員数名。爆破が口を開く。
「一般市民の避難は円滑には行われなかったらしい。どうやら、ここ近辺ではゾムビーの発生事例も少なく、それによる避難などの経験も少なかった為であろうな。……全く、人は実際に自分の身が危険に晒されるまでは、それが危険と気付かないモノなのか?」
「……仕方ありません。皆が皆、我々の様な危機管理能力を持っているなら、交通事故などももっと減ると思われます」
身体がそっと言う。
「……そうだな。さて、小言はこれまでとしよう。この建物の3階は副隊長とサケル、1階にセツナとツトムが向かうように! ゾムビー発生現場の2階は私が行く。隊員達は3つに均等に分かれて、それぞれの階に向かうように!」
「ラジャー‼」
爆破の号令により、今回の戦いが始まった。
――3階、トイレ前。
「やヤ⁉」
逃隠が何かに気付く。トイレの入り口から、ゾムビーが歩いて行った痕が続いていた。
「副隊長! ゾムビーの体液が落ちておりまス!」
逃隠は言う。
「……2階トイレで発生したと言われていたが……水道管を通って3階のトイレにも出没したか……。行くぞ、サケル」
「あいあいサ!」
身体と逃隠は体液のしたたる先を追う。
――2階、トイレ前。
「ふん。この場所がそんなにお気に入りか?」
未だに、発生現場である2階トイレの前に居る、ゾムビー数体を前に爆破は言う。
「ゾゾ……」
不気味に呻くゾムビー。
「探す手間が省けて、好都合だがな……バースト!」
「バコォ‼」
バーストを使い、トイレ入り口ごとゾムビーを破壊する爆破。
(修繕費、あとで出さないとな……)「少し気は引けるが、中も探索する! 行くぞ‼」
「ラジャー‼」
――1階、トイレ前。
「見て!」
主人公が何かに気付く。3階と同様、ゾムビーが歩いて行った痕が、トイレから続いていた。
「コイツを辿って行きゃあ、奴さんとご対面できるってこったな」
抜刀が言う。
「そうだね。行こう!」
主人公が走り出そうとしたその時、
「ひた……」
トイレから足音が。
「!」
ゾムビーが入り口から現れた。主人公が応戦する。
「任せて! リジェクト‼」
「ドッ……バシャアア‼」
壁にぶつかり、破裂するゾムビー。
「ヒュー。一丁上がり、だな」
抜刀が言う。
「主人公隊員! 抜刀隊員!」
狩人隊員の一人が口を開く。
「念のため、このトイレの中も我々で探索します。お二人は体液の痕を追って下さい」
「分かりました」
「おう!」
主人公、抜刀はそう返事した。




