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第十五節 修学旅行、その4

生徒の肩を担ぐ友出。生徒の手を引く主人公。生徒を抱きかかえ、跳ぶ逃隠。生徒に避難の指示を出す教員。平々凡々中の生徒の避難は順調に思えた。その矢先。






「わぁあああああああ‼」






「!」


「!」




一人の男子生徒の悲鳴が上がる。振り向く主人公や逃隠達。男子生徒はゾムビーのすぐ近くに腰を落としていた。


「腰が抜けて、動けないんだー! 助けてぇー!」


(くっ、あの生徒、背が低過ぎて気が付かなかった! リジェクトの射程距離より遠い! サケル君も、間に合わない!)


主人公が思いを巡らせる。


「ゾ……ゾ……」


ゾムビーが迫り来る。


「うわぁあああああああ‼」


瞬間、








「タタタタタタタタ」








銃声が鳴り響く。


「ゾゾ、ゾ⁉」


ハチの巣になっていくゾムビー。遂には、崩れ落ちた。銃声がした方向を向く主人公。そこには、軍服を着た外国人が数名、立っていた。


「hey kids!」


外国人の内、一人が言った。


「あ……アメリカ人……?」


主人公は呆気に取られる。


「はッ」


逃隠は、襲われていた男子生徒の元にようやく駆けつけ、彼を担いだ。


「安全な所に連れてくからナ」


「あ、ありがとう……」




「let’s go」




「タタタタタタタタ」


軍人たちは次々に銃弾を撃ち始めた。




「ゾ!」「ゾゾォ!」




倒れていくゾムビー達。呆然とする主人公。そこへ、




「ブー、ブー、ブー」




電話が掛かってきた。


「もしもし。主人公ツトムですが……」


「ツトムか? 私だ、爆破だ。もう救援部隊は到着したか?」


爆破からだった。


「スマシさん……ええ、外国人の様な軍人達が数名……あの方々は?」


主人公は軍人を見ながら問う。


「ああ、彼らは在日米軍基地の者達だ。普段は、日米安全保障条約の下、日本が戦争の被害に遭わないよう、警護してくれている。本当に稀だが、今回の様に沖縄周辺でゾムビーが出没した時にも、出動してもらっているんだ」


「そう……なんですか」


主人公は辺りの光景を見つめながら返事した。




「タタタタタタタタ」




銃撃を続ける米軍。


(すごい……狩人と同様……いや、それ以上の実力があるかも……)


息を呑んでその光景を見つめる主人公。




「そろそろ、終わった頃か?」




爆破が電話越しに言う。辺りに響いていた銃声は鳴り止み、そこには発砲によって生まれた少量の煙と、ゾムビーの肉片だけが存在していた。


「……戦闘は、終わったようです」


爆破に言う主人公。


「そうか。この後、軍への連絡等をしなくてならないのでな、もう切るぞ」


「はい」


「ピッ」


通話は切れた。




「Are you okay?」




軍人が主人公の元へ来た。手を差し伸べている。


「い……イエス……センキュー」


片言の英語で返し、主人公も手を差し出す。


「ガシッ」


二人は握手した。


(ち……力強い。これが、アメリカの軍人の筋力……!)


軍人の握力に圧倒される主人公。


「Anytime! Goodbye!」


手を放し、去っていく軍人。


「…………」


「…………」


何か軍人同士で話し合っている。周辺の肉片の処理について話し合っている様だ。この後、清掃係が現れ、ゾムビーの死骸が処理、清掃された。






「ふー、危ないところだったな。皆居るか? 点呼を取るぞー。青木! 石原! ……」


主人公のクラスの担任教師が点呼を取り始めた。それぞれのクラスで点呼は行われ、全学年生徒、教員全員の無事が確認された。








――1時間後、国際通りにて。


「うおーい。今回の旅行は、最後にここ、国際通りで何かしらお土産等を買ってから帰ることになるぞー。あんな事があったが、予定通りに日程を消化していくぞー。どうせ飛行機の予約がずらせないからなー。文句は言わないよーに!」


担任が話す。




「おいおい、大丈夫か?」


「どうかしてるぜ!」


「また出てこないか、こわーい」




クラスメイトは口々に文句を言った。主人公も不満の様だ。


(ホントだよ。飛行機の予約がずらせないからってゾムビーが出た後に、こんな呑気に……。ここでは……出てこない事を祈ろう……)


「いやったゼ――! 身体副隊長ニ、お土産を買って帰っテ、評価アップだ――‼」


逃隠はノリノリだった。


(はは……もう、仕方ないや。僕も尾坦子さんに何か買って帰ろう。尾坦子さん、欲しがりだから……)




 国際通りでの買い物が始まった。ちらほらと、通りにはシーサーが置いてあった。辺りはそれなりに賑わっていて、人波が途切れることは無い。沖縄限定のお菓子を買う生徒が多い中、それを少し、残念そうな目で見る主人公。主人公はキーホルダーに目をやった。色々なキャラクターや、沖縄にちなんだモノがある。逃隠は独特な雰囲気の魔除けの置物を見て考え事をしている様だった。遂に主人公はレジに何か持って行く。




「ありがとうございました!」




手にしていたのは、シーサーのキーホルダーだった。生徒達があれこれと買い物をしていくうちに、最後の日程は終了した。






――夕方、帰りの飛行機内。主人公は窓際の席に座って考え事をしている様だ。


(ゾムビーが出てきて大変だったけど、たくさんの経験ができたな。楽しかったコトが多かったけど、戦争についても学ぶ機会もあったなぁ。戦争なんて、想像もできないし、中学の僕には難しいことばっかりだけど、敵の手から人々を守る為に戦うっていうのは、狩人の活動と似ているのかもな。……敵との命の奪い合い。……いつか僕らの戦いも、世界で起きている戦争も、全部終わればいいのになぁ……)


飛行機は羽田空港に向かって飛ぶ。








――数時間後、夜。主人公宅にて。




「ただいまー!」




主人公が玄関を開ける。


「ドタドタドタドタ」


母が走って出て来た。


「ツトム! 大丈夫だった⁉ ケガはない?」


「どうしたの? そんなに慌てて」


主人公が問う。


「学校から連絡があったの。旅行先でゾムビーが発生したって……旅行先でくらい戦いの事は忘れさせなさいよね! ゾムビーったら。……大丈夫だったの?」


母は少し怒った後に聞き直した。主人公は返す。


「ああ……うん。普段だったら普通に戦うだけだけど、今回は生徒を守るのが大変だったかな。……でも、米軍の人達が助けてくれて、何とかなったよ」


「そう、なら良かったわ」


ふー、とため息をついて安心する母。


「そうだ、今回の旅行でシーサー作ったんだよ。魔除けとして、玄関に飾ろう。ゾムビーが来ないように……なんちゃって」


主人公は玄関にシーサーを置く。


「わぁ、上手くできたわね! それはそうと、晩御飯できてるわよ。早く食べなさい」


「はーい、お腹減ったー」






こうして、主人公の中学校生活最大のイベント、修学旅行は無事、幕を閉じた。






 第三章 完





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