第十四節 修学旅行、その3
――翌日、修学旅行2日目。本日の日程は、一応ゆったりとしたプランを組んでいるようで、朝は遅めだった。
「ふあ――、良く寝たぁ」
主人公は目をこすりながら起床する。――8時過ぎ、朝食。
(沖縄の料理って、少し独特なんだよな。昨日もそうだったけど、そんなにたくさんは食べられないや)
主人公は軽めに食事を済ます。
「おーい、集まってるかー今日も張り切っていくぞー」
旅館の駐車場で、点呼が取られる。一行は次の目的地に向かった。
――小一時間後、一行は首里城内を歩いていた。場内に見えるのは、漆塗りによる美しい朱色だった。それぞれに写真を撮影する生徒達。普段見慣れない光景に、只々圧倒されるのだった。
――数時間後、ひめゆりの塔にて。広場を歩く一行。ガイドの説明を聞き、戦争について学んでいる。慰霊碑の前で手を合わせる主人公達。何か思う事があったようだ。更に、平和祈念資料館で戦渦の沖縄について学ぶ一行。誰もが、真剣な表情になっている。
――更に数十分後、主人公達は防空壕を訪れた。中に進み、意外な広さに息を呑む一行。当時の暮らしを想像するのであった。
「さーて、今日はちょっと真面目に勉強したからな。ここから少―しリフレッシュタイムだ」
担任が言う。一行は、あーだこーだ村に到着していた。
「ここで、お前らは漆喰シーサーと言うモノを作ってもらう。魔除けになるらしいから、持って帰って家の玄関にでも飾っとくように」
(モノづくりか……楽しそうだな)
主人公は期待に胸を躍らせる。作り方の説明を受ける一同。作業に取り掛かる。
(タテガミをよりギザギザにしてみよう……牙も大きく……)
主人公は特徴を持ったものを作る様だ。
――約2時間後。
「できた!」
漆喰シーサーが出来上がった。主人公の作ったシーサーは、全体的に赤い色合いで、所々黒い模様があり、歯は真っ白、といった具合に完成した。
「おっ、ツトムもできたか」
友出が話し掛ける。
「コガレ君……」
主人公が友出に目線をやる。
「お前のは赤かー。俺のは因みにこんな感じだ」
友出が、作ったシーサーを見せる。全体的に青いシーサーだった。
「それにしても、お前、こーゆーのが得意だったんだな。知らなかったぜ。俺のより大分出来がいいように見えるぞ?」
友出が感心している。
「はは……そんな事無いよ。コガレ君のだってカッコイイよ?」
赤と青、二つのシーサーが並ぶ。
「でもなんか、こうして見ると……」
「うん」「……兄弟みたいだな」
――帰りのバス。辺りは暗くなろうとしていた。
(今日は普段できない事が、沢山できたなぁ……すごく楽しくて、いい経験になった。今晩はしっかり寝て、明日も楽しむぞ!)
バスの中で主人公は、明日への期待と希望に胸を膨らませるのであった。
――翌日、午前。担任教師が生徒の前で言う。
「うおーい。皆居るかー? 今日はまず、ここ、きらきらビーチにて、沖縄の海を目に焼き付けて置くぞー。まぁ、まだ早い時間帯だから泳ぐ奴は居ないだろうがな。さて置き、最終日だ。しっかりと眺めてから帰るように!」
(何でまた……海? しかも眺めるだけなんて……今回の旅行の日程、ホントに誰が考えたんだろう……?)
困惑する主人公。
「うオ――‼」
逃隠はクロールで力強く泳ぐ。そこへ、
「ゾ……」
いつしか聞いた、あのうめき声が。
「この声は……まさか!」
主人公が声に気付く。
「うわぁあああああ‼」
「!」
生徒の叫び声が聞こえた方向に、目を向ける主人公。波打ち際からやはり、ゾムビーが発生していた。
「うおーい! ゾムビーだ! ゾムビーが発生したぞ! 皆ー、浜辺から離れろぉ! クソッ! 何でウチの生徒ばかりこんな目に……」
担任教師が叫びながら避難の指示を出す。
「うオ――‼」
逃隠は急いで海から上がる。
(なんてこった! ひとまず、スマシさんに連絡を……)
「ピッ」
携帯を取り出し、電話を掛ける主人公。
「もしもし! スマシさん。ツトムです! 修学旅行先のビーチで、ゾムビーが発生しました」
「……分かった。近隣の、ゾムビーに対処できる機関に連絡を回しておく。まずは、生徒達の避難を優先させるように。安全になったらゾムビーを殲滅しろ!」
冷静に指示を出す爆破。
「分かりました!」
「ピッ」
携帯を切る主人公。
(敵は……7体! それぞれ、まばらな位置に離れて立っている! いっぺんに相手にするのも、無理だ。指示通り、避難を優先させる!)
主人公は、冷静に状況を分析していた。
「ツトムぅ!」
「!」
逃隠が話し掛ける。
「本部への連絡は済んだのカ?」
「うん、まずは生徒達の避難を優先させるんだって。そう指示があった!」
主人公が返す。
「そうカ……このスーツが、純粋に人名救助に役立つ時が来るなんてナ……刀は無理だったけド、スーツは持って来られたゼ!」
いつの間にか特殊スーツに着替えている逃隠。
(早着替え!)
主人公は驚愕した。
「こっちだ! 早くビーチから離れろ!」「前の人を押したりしないように!」
教員達は一丸となって生徒を誘導する。
「おらっ! 早く行けよ!」「どかっ」
「わっ!」
一部で、前の生徒を押す者が。男子生徒はこけてしまった。取り残されてしまう生徒。
「わぁ……どうしよう?」
そこへ、
「大丈夫カ?」
スーツを着た逃隠が現れた。
「よいしょット」
横抱きの形で生徒を抱きかかえる逃隠。人波を避けるため、大きく跳ぶ。
「スタッ」
「ここからなラ、一人で歩けるナ?」
人混みの無い、安全な所まで生徒を運んだ。
「キミ……そのスーツ……」
「ン?」
「何のコスプレ? 流行んないから止めた方がいいよ?」
「るっさいワ! 大きなお世話じゃイ!」
男子生徒の心無い一言に、憤慨する逃隠。それを見ていた主人公。
「よし、僕も逃げ遅れた生徒達を避難させないと……」
「おい」
「!」
振り向くと、そこには友出の姿が。
「俺も協力するぜ。指示を出してくれ」
ぱあっと明るくなり、喜ぶ主人公。
「うん! お願い!」